独自ロケットがない悲哀、衛星打ち上げに遅れ

 韓国航空宇宙研究院は2010年、多目的実用衛星「アリラン5号」の開発を終えた。アリラン5号は映像レーダーを搭載しており、韓国の衛星としては初めて、雲が懸かった日や夜間でも地上を観測することができる。開発費として2381億ウォン(約198億円)が投じられた。しかし、アリラン5号は今も大田市の同研究院のクリーンルームに収められたままだ。衛星の打ち上げを代行するロシアが費用の上積みを要求し、打ち上げが1年半も先送りされているためだ。

 航空宇宙研究院は07年、ロシアとウズベキスタン、カザフスタンによる合弁企業「コスモトラス」にアリラン5号の打ち上げを依頼する契約を190億ウォン(約16億円)で結んだ。使用される宇宙ロケットは大陸間弾道ミサイル(ICBM)を改良した「ドニエプル」だ。双方は11年8月にロシアとカザフスタンの国境地帯にあるヤスニー宇宙基地からアリラン5号を打ち上げる予定だった。問題はロシア軍だった。韓国政府関係者は「当初はウォン建てで契約したが、ウォン安が進んだため、ロシア軍は補償を要求したとみられる」と話した。

 打ち上げが滞ったのはアリラン5号だけではなかった。同様にロシアに打ち上げを委託することになっていた科学技術衛星3号も同様だ。昨年末にロシアのロケットでの打ち上げが予定されていた慶熙大の「シネマ衛星」もアリラン5号の打ち上げ延期で連鎖的に打ち上げが遅れた。韓国の衛星打ち上げ計画3件がロシアのために同時に延期を余儀なくされたことになる。

 アリラン5号の開発責任者を務める航空宇宙研究院の李相律(イ・サンリュル)航空宇宙システム研究所長は「幸い政府間の協議が進展し、4月下旬に打ち上げる方向で話し合いが進んでいる。独自の宇宙ロケットを開発しなければならないのは、まさにこういう事態を防ぐためだ」と述べた。

李永完(イ・ヨンワン)記者
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