韓国:元受刑者の引き渡し認めず…靖国放火は「政治犯罪」

毎日新聞 2013年01月03日 22時12分(最終更新 01月04日 00時47分)

 【ソウル澤田克己】韓国のソウル高裁は3日、靖国神社への放火事件で日本が身柄引き渡しを求めていた中国人の劉強(りゅう・きょう)元受刑者(38)について、引き渡しを認めないとの決定を出した。劉元受刑者は同日夜、釈放された。聯合ニュースによると、高裁は戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社には「政治的象徴性がある」として、放火事件は日韓犯罪人引き渡し条約が引き渡しの対象外とする「政治犯罪」に当たるとの判断を示した。

 日韓間では4日、安倍晋三首相の特使として自民党の額賀福志郎氏が訪韓し、朴槿恵(パク・クネ)次期大統領と会談する予定。今回の決定は両国間の新たな火種になりそうだ。

 劉元受刑者の身柄は日中両国が引き渡しを求めていた。決定を受け、中国外務省は歓迎の意を表し、劉元受刑者が近く中国に帰国するとした。日中間に引き渡し条約がないため、神社放火事件の全容解明は難しくなりそうだ。

 高裁は決定理由を「劉元受刑者を日本に引き渡すことは韓国の政治秩序と憲法理念だけでなく大多数の文明国家の普遍的価値を否認するものだ」とした。

 要求が拒絶されたことで日本側が強く反発することは必至だ。在韓日本大使館の倉井高志総括公使は3日、韓国外交通商省に抗議。日本政府関係者は「韓国の司法に対する信頼が完全になくなるような決定だ」と述べた。

 劉元受刑者は昨年1月、ソウルの日本大使館に火炎瓶を投げつけた罪で有罪判決が確定し、韓国の刑務所で11月まで服役した。

 この事件の直前の一昨年12月に靖国神社の門に放火した疑いで逮捕状が出ており、身柄引き渡しを求めていた。

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