シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記

2013年1月6日のシリア情勢

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アル=アサド大統領の演説

 バッシャール・アル=アサド大統領がダマスカス県アル=ウマウィーイーン広場に面するオペラ・ハウスで、政府首脳や支持者を前に約50分にわたり演説を行い、現下のシリアの紛争状況についての方針を確認した。

 演説の概要は以下の通り:

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 「苦しみがシリアの国土に拡がり、祖国のいかなる場所にも喜びの場はない。安全と安寧は街から失われた…。子供たちを失った母たちがおり…、主、子供、兄弟を失い、殉教者、避難民、そして失踪者として引き裂かれた家族たちがいるなか我々は今日集っている」。

 「こうした痛み、悲しみ、憤り、執着心といった感情は大いなるエネルギーである。こうしたエネルギーを…祖国を救済するための愛国的で包括的なダイナミズムへと転化することなければ、シリアはこうした試練を克服することはないだろう」。

 「愛国的なダイナミズムこそ…シリアを地理的に存続させ、政治的により強力にし、社会的、文化的、道徳的な力を回復することを可能にする唯一のものである。すべての市民は、何かを提示する責任があり、しかもその能力がある。たとえそれが微々たるものだと思えても、である。祖国はみなのものであり、我々みながそれを防衛する」。

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 「(現下の)紛争は、祖国とその敵、国民とそのなかの殺人犯、国民のパン、水、暖とそれらすべてを奪おうとする者、我々に不可欠な安寧と、恐怖やパニックを心のなかに広めようとすることとの紛争である」。

 「(現下の紛争は)権力闘争なのか? シリアとその社会を分断しようとするためのキーワードを殺人テロリストに与えない国民への復讐なのか? 彼らは国民の敵であり、国民の敵とはアッラーの敵であり、アッラーの敵は審判の日に火獄に集う者たちだ」。

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 「彼ら(国民の敵)は(自らの行為を)革命と名付けているが、それは革命とは何の関係もない。革命は思想家が必要で、何らかの思想に依拠している。しかしどこに思想家がいるのか? 革命には指導者が必要だが、この革命の指導者として誰が知られているのか…? 革命は国を前進させ、数世紀も退行させるものではない…。革命は人民の革命であるのが常で、外国から輸入され、国民を抑圧する者の革命ではない。国民の利益のためにあるのが革命で、それに反するものではない…。これは革命なのか? 彼らは革命家なのか? 彼らは単なる犯罪者集団に過ぎない」。

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 「こうしたことの背後に、タクフィール主義者がおり…、爆破作戦や集団殺戮を行っている…。タクフィール思想は、我々の国にとって異質な思想であり、活動家も発想も外国から輸入されねばならなかったものだ…。タクフィール主義者、テロリスト、アル=カーイダ、自称「ジハード主義者」が四方八方からやって来て、国内でテロ作戦を指導している。一方、(シリア人の)武装集団は挫折ののち、誘拐、略奪、破壊…といった行為を通じて後方支援を行う存在となり…、タクフィール主義者のために…奉仕し、密偵となった」。

 「同胞よ、我々はこうした者たちと戦っている。彼らの多くはシリア人ではない。逸脱した理解やねつ造された概念のためにやって来て、それをジハードと名付けている。しかしそれはジハード、イスラームとは無縁なのだ。確かなことは、我々が戦っている者のほとんどがアル=カーイダの思想を身につけたテロリストだということだ」。

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 「(現下の)危機には、内政以外のさまざまな次元がある…。地域的には、シリアを分割し、弱体化させようと意図している者がおり、その一部は犯罪者に資金、武器を提供し、そして時には支援、教練を行っている」。

 「一方、国際的には、シリアが過去も未来も、自由で主権を堅持し、従属に甘んじないことは明白であるが、このことが西欧を苛立たせてきたし、今も苛立たせている。彼らは国内の出来事を利用し、シリアを地域の政治的バランスから排除することで、この苛立ちを解消し、レジスタンス思想に打撃を与え、我々を近隣諸国と同様の従属者にしようとしている」。

 「しかし、国際社会は西欧に限られない。世界の多くの国、ロシア、中国、BRICs諸国などは内政干渉や地域の不安定化を拒否し…、シリアの主権、独立、自決権を尊重しようとしている。我々はこうした国々、とりわけロシア、中国、イランに感謝と尊敬の意を表したい」。

 「こうした状況ゆえに、我々は、これらの要素、すなわち国内的要素、地域的要素、国際的要素を考慮せずには解決策について話すことはできず、これらの要素を変更しないいかなる措置も真の解決策とはならない」。

 「国内的要素から始めよう。(国内の)意見の相違は、当初は一部の人々には、反体制勢力と親体制勢力の間の対立に見えたとしても…、その一部が外国と連携、結託することで、国内と外国の紛争、祖国独立と祖国への覇権伸長の戦い、自由と主権の維持と外国による政治的占領の対立となっていた。ここに至り、問題は祖国全土の防衛、外国の敵に対する一致団結へと転化していた」。

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 「反体制勢力対新体制勢力、軍対悪党・殺人者といった対立ではなく、我々はあらゆる意味において戦争状態にある。我々は今、外国の強敵によく対抗した。この種の戦争は、伝統的な戦争に比べ、決死の戦いとなり、もっとも危険である。なぜなら敵は自らのツールを利用するだけでなく…、シリア人や異邦人を利用してシリアを攻撃するからである…。それゆえ、祖国防衛の戦争とは、我々みなにとって不可欠な改革と並行した動きである。改革それ自体は、戦況を変えるものではないが、それは我々、そして我々の統合を強化し、外国の敵に対する我々の免疫力を強めるものである。これこそが解決策で、改革こそが問題を解決すると言う者もいる。しかし、それは有力な要素の一つに過ぎず、解決策そのものではない」。

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 「安寧を欠いた改革、そして改革を欠いた安全、いずれかが欠いていても成功しない…。我々は何度も繰り返し言ってきた。改革と政治が一方にあり、テロ根絶がもう一方にある、と…。攻撃に曝され、自衛する人に対して、我々は、自衛せよと言ったり、治安措置による問題解決を選べなどとは言えない。国家が国民を防衛し、国民が祖国を防衛するときに、彼らに、治安措置による問題解決を選べ、などとなぜ言えるのか?」

 「祖国防衛は義務であって、議論の余地などない。それは法的義務であって、憲政上の合法的な義務である。それは唯一の選択肢で、治安措置による問題解決はそのオルターナティブなどではない。自衛こそが唯一の選択肢である」。

 「政治的解決を選択し、それを当初から目指しているとしても、それは自衛しないことを意味しない…。政治的解決を選択し、それを当初から目指す場合、それは我々が、政治プロセスを進め、全国レベルでの対話プロセスに入る能力を持った相手を必要とていることを意味する…。相手がいないとしても、それは我々が相手を欲していないことを意味しない。つまり、我々はこれまで相手を見出せなかったということだ」。

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 「我々は政治的解決を一日でも拒否したことはない…。我々はシリアを前進させようとする政治的、愛国的なプログラムを持つ人々に手を伸ばしてきた。しかし、我々は誰と対話するのか? 血と殺戮とテロ以外の言葉を信じない過激思想の持ち主とか? 外国の傀儡となり、西欧とその命令に従属する悪党とか? 外国は彼らに対話を拒否するよう命令している。なぜなら、対話はシリアを弱体化させ、根絶しようとするその計画を失敗させることを知っているからだ。とりわけ地域の一部の国の首脳は、シリアが危機から脱却すると、今度は自分たちに危機がふりかかることを…を知っている…。これらの国の首脳は国民を嘘で埋没させ…、自らの国をテロ支援のために機能させ…、もはや流血や無実の人々の殺戮に関与していることを正当化できなくなっている」。

 「我々は西欧が作り、その配役を書いた操り人形と対話するのか? 何よりもまず、我々は、代役ではなく本物と対話する。我々は、国際社会という舞台のうえで演じるべき役割を書かれた者とは対話しない。我々は、奴隷ではなく主と対話をする。植民地主義の末裔で、分割政策と宗派対立の張本人である西洋こそが、対話の戸を閉ざしているのであって、我々が閉ざしているのではない」。

 「解決策は包括的でなければならず、そのなかに対話、政策、テロ撲滅がある。そしてそのほかに第3の軸として、社会的解決策というのがある…。愛国的な個々人が…国家と、武装集団やテロリストなどを含む危険分子の間でイニシアチブを発揮し、現場で重要な成果(事態の改善)を達成している」。

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 「主権、独立といった我々の原則的基礎、そして国連憲章や国際法の諸原則…、シリア人どうしの対話の必要への信念…を踏まえると、シリアの政治的解決は以下のようなかたちをとるだろう」。

 「第1段階は、まず第1に、地域および国際社会の関係諸国が、武装集団への資金、武器、潜伏先の提供の停止を遵守し、それと並行して武装集団がテロ活動を停止すること…。そのうえで我々の軍武装部隊が…報復権を保持しつつ、軍事作戦を停止する。第2に、このこと、とりわけ国境管理をすべての当事者が遵守するための仕組みの案出。そして第3に現政権が、政党などシリア社会のすべての当事者と集中的に連絡をとり、国民対話大会開催に向けた公開対話を運営する」。

 「第2段階は、まず第1に、シリアの主権、統一、国土保全、内政干渉拒否、テロと暴力の拒否という姿勢を強化する国民憲章の採択に至るために、現政府が包括的国民対話大会の開催を呼びかける。すなわち、政府は各党および社会集団にこの大会の規格を確定することを呼びかける…。国民憲章は、シリアの政治の将来を描くもので、憲政、司法、政治・経済体制を提示し、政党法、選挙法、地方行政法などの新法に関する合意をめざす。第2に、国民憲章を国民投票にかける。第3に、シリア社会の各構成要素を代表する拡大政府を発足し、国民憲章実施を付託する。そして第4に、(新)憲法を国民投票にかけ、憲法承認後に拡大政府が、国民対話会合で合意された法律と新憲法…に準じ、新議会選挙を実施する。憲法などの法律にかかる事柄はすべて「もし…なら」、すなわちこの大会で合意がなされればということになる」。

 「第3段階は、まず第1に、新憲法に沿って新たな政府を発足することである。第2に、国民和解総会を開催し、市民権を保持する…逮捕者の恩赦を行うことである。そして第3に、インフラ、復興、被災者補償のための準備を行うことである」。

 「これが我々の考える政治的解決の主な様相であるが、それは単なる主題に過ぎず、詳細を必要とする。ゆえに、政府はこの問題に対処することを付託され、詳細を確定するだろう」。

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 「こうしたヴィジョンに関して、一部の人々は、恐怖と懸念を抱き、治安面での後退を招くと考えるかもしれない。しかし、皆には安心して欲しい。シリアにテロリストが1人でもいる限り、我々はテロとの戦いを止めることはない」。

 「このヴィジョンは…対話を望すべての人、そして近い将来に政治的解決を見たいと考えるすべての人に向けられているのであって、対話を望まない者に向けられているのではない。我々は今日から、周知の勢力による拒否を耳にするだろう。しかし彼らにあらかじめ言っておきたい。お前たちにそもそも向けられていない事をなぜ拒否するのか?」。

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 「いかなる勢力、個人、国家が行うイニシアチブもシリアの視点に依拠していなければならない…。いかなるイニシアチブも、シリア人自身が行うことを支援するものでなければならず、それにとって代わるものではない…。あらゆる外国のイニシアチブはこうした考え方に依拠していなければならず、この文脈から逸脱したイニシアチブに我々や他人の時間を割く必要はない」。

 「外国のイニシアチブがどのように我々を支援し得るのかを自問すると、そこには二つの基軸がある。政治的活動という基軸とテロ撲滅という基軸だ。第1の基軸に関して、我々は支援を必要としていない。我々シリア人は自己完結的に政治プロセスを実行できるからだ。実質的且つ誠実にシリアを支援し、成功を得たいという者は、シリアへの武装集団、武器、資金の流入を停止させるという問題に力点を置くことができる者のことだ」。

 「我々が外国の支援的イニシアチブを支持するということは、その詳細が我々のヴィジョンと合致していたとしても、そのすべてを受け入れることを意味しない。我々はシリアの国益に資する方法以外のかたちではこうしたイニシアチブのいかなる解釈をも受容しない」。

 「この点に関して、シリアが支持したジュネーブ・イニシアチブについて話したい。そこには曖昧な項目、すなわち移行期間に関する項目がある。もちろんこの項目が曖昧なのは単純な理由による。我々が移行期間について話す場合、まず問うべきは、どこからどこに移行するのか、ということだ…。例えば、自由で独立した国から占領下の国に移行するということか…? あるいは、独立した国民的決定から、こうした決定を外国に委ねることに移行するのか?…。
現下の我々にとって移行期間とは不安定から安定への移行である」。

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 「シリアを往来するすべての人々は、シリアが忠告を受け入れるが指図は受けないこと、支援は受けるが、圧政は受け入れないことを知っている。この点を踏まえると、これまであなた方(シリア国民)がメディアや(外国の)首脳の発言のなかで耳にしてきた概念、思想、見解、イニシアチブ、声明は、それがアラブの春を起源に置く概念だとしたら、我々にとって重要ではない。それはシャボン玉のようなもので、アラブの春もシャボン玉のようにやがて消えゆくようなものだ」。

 「シリアの主権から逸脱するあらゆる主題に関わるあらゆる解説は、我々にとって支離滅裂な夢ごとに過ぎない。彼らが夢を見て、想像上の世界で暮らしてもよいが、彼らにとって現実だと思える世界のなかで我々を暮らさせることはできない」。
 
「西欧が…(アラブの)春と名付けたものによって彼ら(シリア国民)の血が失われた。それは憎しみの炎であり、それに触れたすべてのものを、邪悪な宗派主義、盲目的憎悪…によって焼き尽くそうとした。それを描き、計画し、実行しようとしたが、挫折した者にとってのみの春だった。殉教者たちの血は祖国と地域を護ったのであり、今後も護り続けるだろう。また我々の国土の統一や我々の統合を護ると同時に、我々の社会を裏切りと反逆から浄化し、道徳的、人道的、文明的な堕落を抑止するだろう…。これこそがもっとも強力で重要な勝利だ」。

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 「シリア・アラブ軍の男たちに…最高の敬意を表する。シリアのために血と汗を惜しまない我々の士官…、勇敢な兵士に敬意を表する…。我々の武装部隊を支持することで愛国的義務を果たしたすべての市民に最高の敬意を表する…。これらの人々はシリアの誇りである…」。

 「同胞よ、私はみなと同様、祖国が悲惨で困難な状況にあることを知っており、愛しい人や家族・親戚を失ったことの痛みに苛まれているシリア国民の大多数と同じように感じている。憎しみの炎はすべての人に及んでいる…。私は彼ら(遺族)のなかにいる。なぜなら私も国民の一人であり、今後もそうであり続けるからである。地位というものはいずれ消滅する。しかし、祖国は消えることなく残るだろう」。

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 「シリアはこれまでと同じく存在し続け、アッラーの許しのもと、これまでよりも強力になるだろう…。我々はこれまでと同様、唯一の敵に対するレジスタンスを支持し続けるだろう。レジスタンスは個々人にとっての方法であり、思考であり、行動であり、いかなる妥協もない…」。

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 アラビア語(http://www.sana-syria.com/ara/2/2013/01/06/460535.htm
 英語抜粋(http://www.sana-syria.com/eng/21/2013/01/06/460536.htm
 映像(http://www.youtube.com/watch?v=pdjMTAnAx2M

国内の暴力

 ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルトゥーズ市の軍検問所周辺で軍と反体制武装勢力が交戦、また軍が浄化を完了したダーライヤー市、アッ=タッル市で砲撃があった。

 一方、SANA(1月6日付)によると、カフルバトナー市、アル=ムライハ市、シャブアー市、アクラバー市、フジャイラ市、アッ=ズィヤービーヤ市、ヤルダー市、ダーライヤー市、アン=ナバク市、ドゥーマー市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

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 ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍がバスル・アル=ハリール市に突入し、反体制武装勢力と交戦した。

 一方、SANA(1月6日付)によると、バスル・アル=ハリール市、ブスラー・アッ=シャーム市で軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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 アル=ハサカ県では、SANA(1月6日付)によると、アル=ハサカ市の東40キロに位置するティシュリーン油田を反体制武装勢力が襲撃、略奪行為を行った。

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 ヒムス県では、SANA(1月6日付)によると、アッ=ラスタン市郊外で軍が反体制武装勢力を追撃し、複数の戦闘員を殺傷した。

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 ハマー県では、SANA(1月6日付)によると、ティーバ・アル=イマーム市で軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊・押収した。

反体制武装勢力の動き

 シリア革命反体制勢力国民連立のワリード・アル=ブンニー報道官は、AFP(1月6日付)に対して、「我々は…政治的解決をめざしていると述べ…、一つの目的のため、これまでに60,000人以上が殺害された…。彼らはこの専制体制のもとで安定を回復するために犠牲を払っているのではない」と述べ、アル=アサド大統領の演説を拒否した。

 またアル=アサド政権による問題解決への姿勢に関して、「体制を再び安定させず、また彼(アル=アサド大統領)に現状を掌握させないいかなるイニシアチブを…受け入れないだろう」と批判、「革命家との対話の可能性を遠ざけ…、自分が選んだ者たちとの対話を望んでいる…。こうした対話は、国民の意思に応えようとするいかなるイニシアチムも受け入れない」と断じた。

 さらに「シリアの政権指導者は外国のイニシアチブを完全に拒否し…、現実とかけ離れた演説で、自らの軍が被る敗北に対応しようとした…。シリア国民は自由シリア軍、革命運動体、民間勢力をもって対応し、今後さらなる統合を進め、国土解放を続け、体制打倒を貫徹するだろう」と述べた。

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 『アル=ハヤート』(1月7日付)は、シリア国民評議会が9項目からなる体制転換・移行期間開始計画の作成を進めている、と報じた。

 同報道によると、この計画の骨子は以下の通り:

 1. シリア革命反体制勢力国民連立が暫定政権に指名し、同政権を国際社会が承認。
 2. アル=アサド大統領および政権幹部の追放。
 3. シリア革命反体制勢力国民連立による憲法停止。
 4. 暫定政権による自由シリア軍、旧シリア軍士官の停戦、撤退、治安にかかる合意形成の監視。
 5. シリア革命反体制勢力国民連立による国民(和解)大会の召集。
 6. 国民大会開催および暫定内閣開催後のシリア革命反体制勢力国民連立の解体。
 7. 真実公正和解委員会の設置を通じた、前体制下での犯罪の処罰。

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 ダマスカス県では、シリア人権ネットワークなどが、ジャウバル地区、アル=カーブーン地区などで、「戦場処刑」されたと思われる遺体数体が発見されたと発表した。

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 地元調整諸委員会などは、イドリブ県、ヒムス県で、軍が「虐殺」を行っていると発表、またスカッド・ミサイルが発射される映像がウェブ上にアップされ、軍がアレッポ市郊外を砲撃していると複数の活動家が主張した。

諸外国の動き

 ヴィクトリア・ヌーランド米ホワイトハウス報道官は、アル=アサド大統領の演説に関して「演説は、権力にしがみつこうとするもので、現実とかけ離れている。シリアの人々への抑圧をさらに続けようというものだ」と非難した。

 また演説で示された移行プロセスについては、「現実離れしており、アル=アフダル・アル=ブラーヒーミー特別代表の努力を台無しにする」と全面的に否定、「対話に言及しているが、政権は宗派対立をあおり、自国民の殺害を続けている」とし、アル=アサド政権による対話路線に懐疑的な見方を示した。

 そのうえで「アル=アサド大統領は正統性を完全に失っており、政治的な解決と民主的な政権移行を実現するために退陣しなければならない」と改めて、アル=アサド政権の退陣を要求した。

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 イギリスのデヴィッド・キャメロン首相はBBC(1月6日付)に対して、「アル=アサドへの私からのメッセージは去れ、というものだ」と述べた。

 またウィリアム・ヘイグ外務大臣は、アル=アサド大統領の演説に関して「偽善…、空約束には誰も従わないだろう」と非難した。

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 ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣は声明を出し、アル=アサド大統領の演説に関して「新たな認識を欠いている」と非難、退任と暫定政権樹立を改めて主唱した。

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 トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、アル=アサド大統領の演説に関して「空約束…、いつも言っていることの繰り返し以外の何ものでもない…。アル=アサドはもはやシリア国民を代表していない」と非難した。

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 エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領はCNN(1月6日付)とのインタビューのなかで、アル=アサド大統領を「戦争犯罪者」と断じ、「国際戦犯法廷での処罰を支持する」と述べた。

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 ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣は、ヨルダン訪問中のロバート・フォード在シリア米大使と会談し、シリア情勢について協議した。

 ヨルダンの複数の消息筋によると、この会談で両者は、政治的解決の重要性、暴力停止の必要を再確認した。

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 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は閣議で、「対シナイ半島国境で行っているように、攻撃やテロからこの国境を護らねばならない」と述べ、占領下のゴラン国境に「安全フェンス」を新たに建設する意思があることを明言した。

 ネタニヤフ首相は「対シリア国境の向こう側で、シリア軍が後退し、世界的ジハード主義者がそれにとって代わったことを知っている」と述べ、サラフィー主義者によるテロへの警戒心を露わにした。

 AFP(1月6日付)は、イスラエル治安筋の話として、新たな「安全フェンス」は全長10キロ、すでに建設されているフェンスと合わせると60キロにおよび、2013年中に完成がめざされていると報じた。

 AFP, January 6, 2013、Akhbār al-Sharq, January 6, 2013、CNN, January 6, 2013、al-Ḥayāt, January 7, 2013、Kull-nā Shurakā’, January 6, 2013、al-Kurdīya News, January 6, 2013、Naharnet, January 6, 2013、Reuters, January 6, 2013、SANA, January 6, 2013などをもとに作成。

 写真はSANA, January 6, 2013。

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