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2012年12月23日(日)付

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安倍外交―中韓との修復の転機に

自民党の安倍総裁が、韓国との関係修復に動き出した。額賀福志郎元財務相を特使として派遣し、次期大統領に決まった朴槿恵(パククネ)氏への親書を託す意向を表明した。[記事全文]

米乱射事件―銃の危険を直視せよ

米国でようやく、銃規制をめぐる議論が動き出した。米コネティカット州の小学校で起きた乱射事件がきっかけだ。6〜7歳の子ども20人をふくむ26人が命を失った。銃社会の米国に[記事全文]

安倍外交―中韓との修復の転機に

 自民党の安倍総裁が、韓国との関係修復に動き出した。

 額賀福志郎元財務相を特使として派遣し、次期大統領に決まった朴槿恵(パククネ)氏への親書を託す意向を表明した。

 さらに、自民党の衆院選政策集では、2月22日を「竹島の日」として祝う政府主催の式典を催すと記していたが、来年は見送る方針だ。

 北朝鮮のミサイル発射や、尖閣諸島をめぐる中国との対立を抱えるなか、竹島問題で悪化した日韓関係の改善は日本外交にとって急務である。

 首相就任を前に、安倍氏が打開に向けて行動を起こしたことは評価したい。

 とりわけ竹島の日の3日後には、韓国の大統領就任式を控えている。政府式典を強行すれば、緊張がさらに高まるところだった。見送りは妥当な判断といえよう。

 早期に首脳会談を実現できるよう環境整備を図るべきだ。

 安倍氏はさらに、中国との関係についても「戦略的互恵関係の原点に戻れるように努力していきたい」と語り、改善に意欲を示している。

 総裁選、衆院選を通じ、安倍氏は靖国神社への参拝や、尖閣への公務員常駐に言及するなど、近隣外交に絡んで強硬な発言が目立った。

 それが、最近は靖国参拝について明言を避け、尖閣への公務員常駐も「中国と交渉していくうえでの選択肢」とするなど姿勢を軟化させている。この点に注目したい。

 6年前の首相就任の直後、安倍氏は中韓両国を訪問し、小泉政権下で冷え切っていた両国との関係改善に努めた。意欲を示していた靖国参拝も在任中は見送った。

 今回も、そうした現実的な対応を望む。

 もちろん、竹島も尖閣も日本の領土である。

 だが、いたずらに対立を深めるような選択は事態をこじらせるだけだ。粘り強い外交努力を積み重ねてこそ国際社会に理解が広がり、日本の立場を強めることにつながる。

 安倍氏はかねて、河野談話や村山談話の見直しを主張している。しかし、そんなことをすれば中韓のみならず、欧米からの視線も厳しくなるだろう。改めて再考を求めたい。

 前回の安倍政権当時と比べ、東アジア情勢は複雑さを増した。日中韓が友好を保つことの意味も重くなった。

 3国の指導者が交代するいまこそ、もつれた糸を解きほぐす転機とすべきである。

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米乱射事件―銃の危険を直視せよ

 米国でようやく、銃規制をめぐる議論が動き出した。米コネティカット州の小学校で起きた乱射事件がきっかけだ。

 6〜7歳の子ども20人をふくむ26人が命を失った。銃社会の米国に大きな衝撃を広げた。

 7月にもコロラド州で、70人が死傷する乱射事件があった。米国はいつまでこんな悲劇を繰り返すのか。

 オバマ大統領は、バイデン副大統領に銃規制を含めた再発防止策の取りまとめを指示した。国民を守る指導者として当然だ。むしろ手をつけるのが遅すぎた。

 3億丁の銃が出回っているという米国では、銃規制は権利や思想にからむ複雑な問題だ。

 規制に反対する全米ライフル協会(NRA)は約400万人の会員を抱え、強い政治力を持つ。多くの議員は選挙への影響を恐れ、銃規制に触れることに消極的だ。

 開拓時代からの伝統で、米国では個人が銃を持つ権利を憲法で認めている。銃に反対する人を弱腰とみる雰囲気すらある。いきなり全廃は難しい。

 一方、今回の事件のような乱射事件では、殺傷力の高い半自動小銃が使われることが多い。軍隊で使われるような銃だ。一般の市民が必要とする理由は見いだせない。手始めにこうした銃を規制すべきだ。

 かつては半自動小銃の一部や大型の弾倉の所有、売買を禁じる法律があった。クリントン政権時代の94年に成立したが、反対も強く、04年に失効した。

 今回の事件を受けて、民主党の上院議員が同様の法案を提出する考えを示している。議会は真剣に検討する必要がある。

 ライフル協会を支持してきた議員からも規制強化を求める声が出始めた。子や隣人の命を重視する方向に転ずるときだ。

 「意味のある貢献」を予告したライフル協会は21日に記者会見した。だがその主張は、すべての学校に武装警官の配備を求めるもので、規制強化に真っ向から反対するものだった。「銃を持った悪者を止められるのは、銃を持った善人しかいない」との理屈だ。

 自衛のために銃が必要という意見が米国では根強い。

 本当に、それでいいのか。

 だれも銃を持っていなければ身を守るのに銃は必要ない。

 日本がいい手本だ。米国では銃で殺された人は人口10万人当たり3.2人だが、日本では0.006人だ。

 銃なしで安心できる社会を米国はつくるべきだ。問題の本質はそこにある。

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