(cache) 景気動向指数の利用の手引
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 景気動向指数の利用の手引
  1.統計の目的

 景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標である。

 景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)がある。 CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、 改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的とする。

従来、景気動向指数はDIを中心とした公表形態であったが、近年、 景気変動の大きさや量感を把握することがより重要になっていることから、 2008年4月値以降、CIを中心の公表形態に移行した。 しかし、DIも景気の波及度を把握するための重要な指標であることから、 参考指標として引き続き、作成・公表している。 なお、景気転換点の判定にはヒストリカルDIを用いている。

 CIとDIには、それぞれ、景気に対し先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数、遅れて動く遅行指数の3本の指数がある。 景気の現状把握に一致指数を利用し、先行指数は、一般的に、一致指数に数ヶ月先行することから、景気の動きを予測する目的で利用する。 遅行指数は、一般的に、一致指数に数ヶ月から半年程度遅行することから、事後的な確認に用いる。

 CIとDIは共通の指標を採用しており、現在は、先行指数11、一致指数11、遅行指数6の28系列である。 採用系列は概ね景気が一循環(谷→山→谷)するごとに見直しを行っており、現行28系列は、第14循環の景気基準日付確定時(平成23年10月)に選定されている。

なお、景気動向指数は、各経済部門から選ばれた指標の動きを統合して、 単一の指標によって景気を把握しようとするものであり、すべての経済指標を総合的に勘案して景気を捉えようとするものではないことに留意する必要がある。


  2.利用の仕方

   a.CI

 CIは、主として景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的としている。

 一般的に、一致CIが上昇している時は景気の拡張局面、低下している時は後退局面であり、 一致CIの動きと景気の転換点は概ね一致する。 一致CIの変化の大きさから、景気の拡張又は後退のテンポを読み取る。 ただし、例えば景気の拡張局面においても、一致CIが単月で低下するなど、不規則な動きも含まれていることから、 移動平均値をとることにより、ある程度の期間の月々の動きをならしてみることが望ましい。 毎月の統計表には、足下の基調の変化をつかみやすい3ヶ月後方移動平均と、 足下の基調の変化が定着しつつあることを確認する7ヶ月後方移動平均をあわせて掲載している。

 景気の基調をみる上では、経済活動の拡張(又は後退)がある程度の期間、持続しているか、 またある程度の大きさで変化しているかが重要である。したがって、一致CIが続けて上昇(又は下降)していても、 その期間が極めて短い場合は、拡張(又は後退)と見なすことは適当でない。 また、一致CIがこれまでの基調と逆方向に十分に振れてから、その基調が変化したと見なすことが望ましい。

   b.DI

 DIは、景気拡張の動きの各経済部門への波及度合いを測定することを主な目的とする

 DIは採用系列のうち改善している指標の割合のことで、景気の各経済部門への波及の度合いを表す。 月々の振れがあるものの、一致DIは、景気拡張局面では50%を上回り、後退局面では下回る傾向がある。

DIは、景気の拡張が経済活動のより多くの分野に浸透していったことを示す指標であり、 景気拡張が加速していることを示すものではないことに注意が必要である。 また、毎月公表されるDIは、景気転換点を判定するヒストリカルDIとは異なる指標である。

   c.CIとDIとの違い

 DIは景気の各経済部門への波及の度合いを表す指標であり、各採用系列が大幅に拡張しようと、 小幅に拡張しようと、拡張系列の割合が同じならば同じDIが計測される。 CIは景気の強弱を定量的に計測する指標であり、DIが同じ数値で計測されたとしても、 各採用系列が大幅に拡張していればCIも大幅に上昇し、各採用系列が小幅に拡張しているならばCIも小幅に上昇する。 このように、CIは、DIでは計測できない景気の山の高さや谷の深さ、拡張や後退の勢いといった景気の「量感」を計測することができる。

 一方、DIが異なる数値で計測されたとしても、多くの系列で小幅に拡張した時と、一部の系列が大幅に上昇した時とで、 同じCIの上昇幅が得られる場合がある。 このように、CIの変化幅そのものからは経済部門の相違を把握することが難しいため、 CIの変化幅に対する各採用系列の寄与度やDIをあわせて利用するのが望ましい。


  3.統計の作成方法

    a. CIの作成方法

           CIの計算方法1 CIの計算方法2

              ※新たな「外れ値」処理手法を反映した詳細な算出方法 (PDF形式 111KB) ※寄与度分解 (PDF形式 23KB)

    b.DIの作成方法

 採用系列の各月の値を3ヶ月前の値と比較して、増加した時には+を、保合いの時には0を、減少した時には-をつける(変化方向表)。

 その上で、先行、一致、遅行の系列群ごとに、採用系列数に占める拡張系列数(+の数)の割合(%)をDIとする。

          DI=拡張系列数/採用系列数×100(%)
          (保合い(0)の場合は0.5としてカウントする)

 なお、各月の値を3ヶ月前の値と比較することは、不規則変動の影響を緩和させる効果がある。 3月前と比較して増加、減少、同一水準であることは、 3ヶ月移動平均の値が前月と比較して増加、減少、同一水準であることと同じである。


  4.第10次改定の主な内容

 景気動向指数の採用系列及び算出方法については、第14循環の景気基準日付確定時に併せ、第10次改定として、以下の通り、見直された。

   a.採用系列の入れ替え

先行、一致及び遅行の3系列の採用系列を、下表の通り、改定する。なお、採用する系列の数は、先行11(1減)、一致11(不変)、遅行6(不変)。

              採用系列の入れ替え表

   b.算出手法の見直し(「外れ値」処理手法の改善)

 これまでの手法では、世界金融危機や東日本大震災のようなマクロショックが発生し、多くの系列にその影響が同時に発現する場合でも、 このような体系全体に発現する「共通循環変動」を「外れ値」と認識し、結果、景気変動を過小評価してしまう問題が発生した。  この点を改善するべく、「外れ値」処理の対象を、当該系列のみに発現する「系列固有変動」に限定することとした。 これによって、景気変動の量感を適切に表現することが可能となる。

  5.利用上の注意

    独自に季節調整を行っている系列に適用する季節調整方法の変更については次のとおり。
景気動向指数を作成する際に独自に季節調整を行っている大口電力使用量、法人税収入及び法人企業統計季報から採用している4系列(営業利益(製造業)、総資本額(製造業)、営業利益(全産業)、法人企業設備投資(全産業))の計6系列の季節調整方法は、季節調整値の安定性確保の観点から年1回見直しを行っている(注1)(注2)。具体的には、総資本額(製造業)、営業利益(製造業)、大口電力使用量、営業利益(全産業)、法人企業設備投資(全産業)及び法人税収入の6系列にセンサス局法Ⅱ. X-12-ARIMAを適用している。

  (注1)安定性の確認は、元の原系列データに新規にデータが追加された場合に一定期間の季節調整値が平均的に改訂される度合いを示すMAPR(Mean Absolute Percent Revision)により行った。
  (注2)季調替えの頻度は、法人企業統計季報からの4系列は毎四半期、その他は年に一回である。

    i. X-12-ARIMAのスペックファイルの設定方法

    1) レベルシフト・異常値などの存在
  OUTLIERコマンドを用いて検証し、対象期間にレベルシフト、異常値が検出された場合は、それを調整する。

    2) RegARIMAモデルの選定方法等
  原系列に事前調整を施すためのRegARIMAモデルの選定、曜日調整及び閏年調整に係る各種設定に際しては、「季節調整法の比較研究」(経済企画庁経済研究所 経済分析 政策分析の視点シリーズ)等で実証分析に採用されている手法により、主にAIC(赤池情報量基準)を用いる。また、各系列のRegARIMAモデルの予測期間は安定性(MAPR)を高める観点からそれぞれに適当な設定期間を設けている。
 なお、曜日調整には、X-12-ARIMAに用意されている標準的な曜日調整コマンドの他、日本の祝祭日、土曜日休みの普及及び慣行として休日扱いとなっている日(年末年始休み、ゴールデンウィーク中の中2日以内のウィークデイ、お盆休み)を含めたホリデーファイル(各月の休日日数から、利用する期間の平均休日日数(平成4年4月までとそれ以降の期間とに分ける)を差し引いた系列)を作成し用いる。

     ii. 各系列に適用したスペックファイル
  SPECFILE-LIST-FOR-HPver2