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[28303] (一発ネタ)IS 眼鏡の怠け者(IS×ドラえもん)
Name: 伊達眼鏡◆24d75697 ID:7543031d
Date: 2011/06/11 14:10
 織斑一夏が通い慣れたとようやく言えるようになったIS学園の教室にはいると、普段とは異なる風景が視界に映った。

 彼のクラスの担任であり、自身の姉でもある織斑千冬が教壇の右側、副担任である山田真耶が左側に立っている。二人の顔には苦笑が浮かび、共に同じ者を見ているようだった。

 そう、二人の間にある教壇に腕を枕代わりにし、気持ち良さそうに眠り続ける一人の男性を。

「お、おはよう。千冬姉……」

「学園内では織斑先生と呼べ」

「す、すいません。で、それ、誰なんですか?」

 一夏が言いつつ指をさすのは、騒ぎ出したクラスメイトの騒音に負けず、昏々と眠り続ける男性。しかし、そこで一夏は気付く。自分以外のクラスメイトが漏らす言葉に「何故」や「どうして」というものがあっても、「誰?」という誰何が存在しない事に。

「織斑。お前の無知さは今に始まった事ではないが、男ならコイツのことは知っておけ。お前が登場するまで、男でありながら世界でただ一人、ISを墜としたコイツの事はな」

「なっ!? ど、どうやって!?」

 姉の言葉に、信じられないという表情の一夏。しかし、実際にISという兵器に乗り込んだ彼の感覚では、ISはISでしか墜とせない事が当然と認識されたし、自分以外ではISに乗れる男は居なかった。彼の疑問は至極真っ当な物であったろう。

「後でそれも説明してやる。だが、その前に……起きろっ、のび太!」

 大喝と共に振り下ろされた拳骨が、教壇で眠る男の頭上に落ちる。ズゴンッと凄まじい音を響かせた男に、心配する視線が幾つも突き刺さった。

「……あたた。あと五分だけ、頼むよドラ……あぁ、うん。起きました、千冬さん」

「全く。貴様ときたら……その何処でも三秒で眠れる体質はどうにかしろと言ったろう」

「あははは。無理ですよソレ。というか、ソレが出来るならこんな所に居ませんよ、ボク」

 千冬の忠告に、一考すら要さず即答する。

 そうして千冬に向けていた顔を、初めて生徒側へと向ける男。大きな丸眼鏡を掛けている事以外、取り立てて特徴の無い顔。だが、彼の眠たげな視線が自分の視線と合った瞬間、一夏は全身に走った謎の感覚に身震いした。

(な、なんだ今の? IS実習で銃口でも覗き込んだみたいな)

 疑問に思い、周囲を見渡してみれば自分と同じように視線を巡らすクラスメイトが居る。

「さ、流石は教官。ドイツ軍でさえ一度も呼び出す事の出来なかったあの男を、こうもあっさりと手懐けるとは」

 感動したように何度も頷くのはラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女の右手は懐に回され、何時でもその中に在る『ナニ』かを取り出せる位置にある。

「す、凄いなぁ……此処に居るって事は、今日は何か教えてくれるのかな?」

 そう言いながら、一夏と男の間に分け入ろうとするのは、シャルロット・デュノア。彼女の行動が男から自分を守れる位置を取る事に気付けない一夏ではない。

「ふ、ふふふ……とうとう、私の前に現れましたわね。いいでしょう、決着を着ける時ですわ!」

 一人、鼻息荒く男を睨み付けるのはセシリア・オルコット。だが、口から出る大言とは逆に、視線は挑戦者のソレで。

「……」

 ただ一人、篠ノ之 箒だけが男性の視線から逃れるように俯き、口を閉ざしていた。普段とは違う雰囲気に声を掛けようとした一夏を止めたのは、説明を始めた山田真耶の言葉だった。

「では、一夏クン以外は知っていると思うけど、ご紹介しますね。第一回IS世界大会で射撃部門特別賞を受賞され、以降の大会でも特別招待選手として参加しつづけている、野比のび太さんです」

 その説明に、事情を知らない一夏以外の大多数のクラスメイトが歓声を上げる。

「静かにしろ貴様ら! 織斑が置いていかれているぞ。……さて、織斑。私が第一回IS世界大会で優勝した事は知っているな」

「そりゃ、当然だろ?」

「ISが兵器として認知され、その脅威が広まるにつれ、一つの疑問が生まれた。―――男はISに乗れない、それは事実だが、ISの武装は? 結論は使えるよ。エネルギーの補給は無きに等しく、シールドも無い、機動力は人と戦闘機ほどに違うし、ハイパーセンサーという目さえ使えない。そうだな、戦闘機に竹槍で挑もうとしている人間に、使い捨ての地対空ミサイルランチャーを渡すようなものか。普通、撃つ前に死ぬ。撃ったとしても当たらない」

 クラスメイトの多くが熱心に頷いている中、一夏も同感だった。ISという兵器に乗りソレを知れば知るほど、今までの兵器との格の、否。次元の違いに気付く。それを、武器だけを同じにして戦えというのは、無理が過ぎる。

「そう、無駄と知りつつ諦め切れずに多くの男が最後の希望に縋り、残酷な現実に叩き落されていった。―――この、変態以外は、な」

 横から見ていてさえ、物理的な圧力を伴っていそうな織斑千冬の眼力を、飄々とした表情のまま受け流し、困った様に頭を掻いている男からは、話に聞く無茶を通せる力を持った人間とは思えない。

「変態って、千冬さん。酷すぎませんか? それ絶対褒めてませんよね?」

「ふん、変態で十分だろう。世界中の天才が無力だった中、平然と目標を撃墜する男など。聞け、織斑。この男はな、世界大会に参加した各国のエースのおよそ半分に勝利した。この男と戦って、ただの一発も銃弾を当てられなかった人間は一人しかいない」

「あのー、それって絶対ボクじゃなくて自分を褒めてますよね?」

「当然だろう、2000発のミサイルなど比べ物にならないくらいの緊張と興奮の中、貴様の首に刃を突きつけた瞬間の感動は……一夏が私の為に初めて食事を作ってくれたのと同じくらいだ」

「やすっ! ボクの首が晩御飯に負けた!?」

「貴様……一夏の食事を愚弄する気か? いい度胸だな、のび太のくせに」

「ちょ、ちょっと待って千冬さん。その固めた拳で何する気ですか!? ボクはお客さんですよ。貴女に言われて嫌々ながら出てきた引き篭もり予備軍ですよ? 酷い事されたらプロ入り確定しちゃうかも!?」

「安心しろ。引き摺り出してやる」

「安心できない!? 助けて~」

 情けない悲鳴と共に、涙まで流して逃げ出す野比 のび太。

 拳骨を振り上げ、彼を追いかける織斑 千冬。

 まだ、一夏は知らない。

 目の前の二人が、自分達生徒に比べて、どれほどの高みに居るのか。

 そして、二人に授業をしてもらえる己の幸運に。

 野比 のび太。『グングニル』とも呼ばれる世界一の射撃王。彼との出会いが、一夏に齎すのが何なのかは、誰にも分からない。




 久しぶりにSSを書いて見ました。仕事中にふと思いついた短編で、難しい事は全部置き去りにしています。
色々伏線っぽい描写もありますが、絶対続かないので、無いとは思いますが過度の期待はご遠慮下さい。

 では、お目汚し、失礼いたしました。




[28303] おまけ(中身は蛇足です)
Name: 伊達眼鏡◆24d75697 ID:7543031d
Date: 2011/06/25 16:51
 おまけ―――――(という名の蛇足)

 結局は千冬から逃げ切れず、幾つかの拳骨を貰った後、耳を引っ張られながら教壇へと無理やり戻されたのび太。

 評判や肩書きとのあまりな違いに、興奮していた生徒達も幾らか引き気味だった。雰囲気の変わった教室を涙目で見渡すのび太は、横で腕組みしながら自分を睨む千冬へと文句を呟く。

「ほら~。千冬さんが乱暴だから皆怖がってるじゃない。どうすんのさ、この空気」

「阿呆。これはお前があんまり情けないからだ。他人の所為にするな」

 のび太の文句を、バッサリと斬り捨てた千冬の言葉に、何人かの生徒が同意の頷きをするのが見える。

「うぅ……」

「大丈夫ですよ、のび太さん。のび太さんの射撃が凄いのを、私は知ってますし、とっても頼りになる事だって、分かってます」

 呻きを漏らしながら、自分の味方はいないのかと周りを見渡すのび太。そんな彼の肩に、優しく手を乗せたのは、副担任である山田 真耶であった。

「真耶さ~ん……ぎゃふんっ!」

 その優しさに縋ろうとするかのように、真耶の豊満な胸へと飛び付こうとするのび太の頭を、当然の様に千冬の拳骨が撃墜する。

「全く、懲りん奴だな。山田先生も、のび太をあまり甘やかせないで下さい。調子に乗ります」

「織斑先生は、逆に厳しすぎるんじゃないでしょうか? のび太さんは、まだ学生なんですよ?」

「若くして、高すぎる技術を持っているからこそ、成熟した精神が必要だと思うのだが……今は止めましょう。貴様ら、少々問題があったが今日の授業は変更する、これよりISスーツに着替えてアリーナへ集合しろ!」

 目の前の三人の会話に置いて行かれ気味の生徒達だったが、日頃の教育の成果か、千冬の指令と共に、更衣室へと駆け出した。

 即座に行動する生徒を満足気に眺めながら、千冬は床に倒れたまま這うようにして逃げ出そうとしていたのび太の背中を踏んづける。

「何処へ行くつもりだ、のび太?」

「お、重い~……ぐぇえ。嘘ですっ、全然軽いですっ。だからもうちょっと優しくして~」

「さぁ、お前もさっさと準備をしろ。さもないと、私がひん剥くぞ」

「う、嘘つきっ! 女子が一杯のIS学園で歓迎してくれるって言ったのに!?」

「歓迎してやってるじゃないか、何処が不満なんだ?」

「全部ですよっ! もうボクは帰る! 絶対帰りますっ!」

「はっはっは、相変わらず馬鹿だなぁ、のび太は。せっかく釣れた魚を逃がすわけないだろう」

「ぐええぇ~、く、首が……真耶さん、助けてぇ~」

 泣き叫ぶのび太の後ろ襟を掴み、引き摺りながら歩き出す千冬。彼女から逃げられないと理解したのび太は、矛先を困ったように自分を見ていた真耶へと変えた。

「ごめんなさい、のび太さん。私も久しぶりに貴方の射撃が見たいんです」

「そ、そんなぁ~」

 真耶の言葉に、涙目で叫ぶのび太。彼の瞳は、信頼していた飼い主に捨てられた小動物の目にそっくりだった。

 アリーナに出た生徒達は、困惑していた。その原因は、ISスーツとよく似た服を着ながら、涙を垂れ流すのび太、ではなく、彼の背中にある巨大な鉄塊である。高さ2メートルの十字架型のソレは、圧倒的な存在感と、不吉さを感じる迫力に満ちていた。

「あ、あの~……ソレは、一体?」

 勇敢な生徒の疑問に、諦めたように涙を拭ったのび太が答える。

「ある人から送られた試作品。名前は『パニッシャー』っていうらしい……物騒な武器だよねぇ……」

 彼の答えの通り、ソレは武器だった。神への祈りに用いられる形を、人を殺す道具に用いる。恐ろしい発想であり、製作者の神への嘲りを明確に感じずにはいられない。のび太はソレを重たげに担ぎ上げると、試すように一振りした。ブゥオンと響いた風を叩く音は、まるで武器その物が、これから始まる戦いを前にして、歓喜を隠し切れずに漏れた唸り声のよう。

「では、早速だが模擬戦だ。のび太と戦いたい奴は手を上げろ」

 千冬の唐突な発言に、生徒達が目を見開く。この状況になった事で予想はしていたが、ここまで急な事とは思っていなかったのだ。

「い、いきなりですか? せめてもう少し説明とか、せっかく野比さんが来ているんだから、彼から射撃のコツを聞いたりしたいんですが……」

「ぶふっ、わはははははは、ははははぁっ。はっ……はぁ~っ」

 シャルロット・デュノアがおずおずと手を上げ、発言した瞬間。千冬の爆笑が響き渡る。普段の厳しい雰囲気を壊しかねないほどの笑い声に、原因の分からない生徒達が戸惑い顔を浮かべた。

「ふぅ、苦しかった。貴様ら、私を笑い死にさせる気だったのか? もしそうなら、今のは中々の攻撃だったぞ。のび太が貴様らに授業など出来るわけなかろう」

「いや、その発言はどうなんですか、千冬さん。本当の事だからって、言われたら傷つきますよ」

 抗議の声を上げつつ、のび太の表情は普通のまま、彼自身が己の学力にそれほどの自信を持っていない事を示していた。しかし、彼の投げやりな抗議に、千冬は首を横に振る。

「違うよのび太。お前の学力が足りないのは当然として、射撃にしたってお前のはヒトに教えられるモノじゃない。だって、お前のソレは―――よそう、実際に目にしなければ解らんだろうしな。とにかく、先に一戦してみろ。専用機持ちの貴様ら、誰か相手したい奴はいないのか?」

 説明を途中で切り上げ、問いかける千冬に名指しされたも同然の一夏達。専用のISを持つ彼らがお互いの顔を見合わせる中、一歩前に踏み出したのは、豪奢な金髪を靡かせたセシリア・オルコット。自慢の美貌に浮かぶのは、勝利を欲する挑戦者のような、答えを欲する求道者のような、複雑な色。

「セシリア?」

 見慣れぬ表情をその横顔に見つけた一夏が問うも、集中した彼女の耳には入らなかったのだろう。そのまま二歩、三歩と歩き生徒達の先頭へ抜けると、のび太へとその手を伸ばす。

「では、先ずはわたくしの相手をして頂けますか?」

 舞踏会でダンスに誘うかのような優雅な招待に、のび太は苦笑を貼り付けたまま頭を掻く。

「あ~、やっぱりこうなった。千冬さんに誘われた時から、イヤな予感してたんだよねぇ。……でもさ、こんな真っ直ぐな目で見られたら、断れないよね……」

 男はそう呟いた後、自分を真剣に見つめる少女の誘いに答えた。

 対戦相手が決まり、野比のび太とセシリア・オルコットだけを残して観客席に移動した皆が見つめる中、セシリアが自分専用のIS『ブルー・ティアーズ』を纏うと、空へと飛翔する。

「綺麗だね~。青いから、空によく似合う」

「煽てても、手は抜きませんわよ」

 十分な距離を開けると、戦闘開始までのカウントダウンが始まった。




 素材が良すぎた所為か、想像を遥かに超えた感想数に、最初は自分の目を疑いました。

 感想の内容も、多くの方に好意的に受け取って貰えたようで、本当にありがたかったです。

 あまりの嬉しさに舞い上がって、続きを妄想したり、勢いだけのおまけ(蛇足)まで書いたりしてしまいました。拙い出来ではありますが、続きを望んでくれた方の暇潰しになれば幸いです。



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