2004年01月16日発行822号

インタビュー

アフガン国際戦犯民衆法廷実行委共同代表 イラク国際戦犯民衆法廷呼びかけ人 前田朗東京造形大学教授

【市民参加の法廷は新たな力 / 日本の平和運動立て直す】

判決後のあいさつに立つ前田共同代表
写真:公判会場の舞台の上で挨拶する前田教授

 ブッシュのアフガニスタン攻撃を侵略の罪などで断罪したアフガニスタン国際戦犯民衆法廷。この取り組みを提唱した実行委員会共同代表の前田朗さんは日本の平和運動にとっての意義を強調する。(編集部の責任でまとめました)


事実調査の重み

◆判決に感じることは

 私が2002年2月の集会で呼びかけて2年になります。第3回公判でのブッシュを有罪とする主文ばかりではなく、そこへ至るプロセスも含めて一応の目標は達成できたのではないかと思います。

 私は、民衆法廷を、後がない日本の平和運動を立て直す起爆剤になれば、という思いで取り組んできました。日本の平和運動は「憲法9条を守れ」を柱に、広島や長崎などの体験をもとにしてきた、いわば被害者意識としての運動でした。それに対し、ブッシュの戦争責任を追及する。あるいはそれに協力した日本政府、戦争協力を止められなかった日本の社会を追及する。それはわれわれ自身の責任のあり方を考えていくことになります。それを私は、一歩前に踏み出す、と表現してきました。

 具体的に言うと、まず8回に及ぶ現地調査です。現場で何が起こっているかを徹底的に解明することからしか被害者との連帯はできません。初めてパキスタンのアフガン難民キャンプを訪れた時のことを思い出します。写真を撮っていると200人もの人たちが集まってきて私たちを何も言わずにじっと見ているのです。彼らの視線にさらされることで私は加害者という意味を身にしみて感じました。

 アフガニスタンについては国連や赤十字も、もちろんアメリカやカルザイ政権も、責任ある機関が一切被害調査をしていません。こんなありえないことがまかり通っている。われわれがほんの一部であるにせよ、事実を調査して記録に残す、そして公聴会や報告会という形で日本の反戦平和運動の中へ返していった。

 16回の公聴会では60人にも及ぶ研究者やジャーナリストといった方々の証言をいただき、アフガニスタンに対する空爆とは何であり、そこで何が起こったのかについて多角的に明らかにし、みんなで考え、議論するという運動になったと思っています。

法廷が演劇的空間に

◆各地で若い人たちの協力が広がったようです

 民衆法廷だけではなく、反戦運動に若い人たちが増えていることの影響もあると思います。それと、民衆法廷や公聴会という聞きなれない言葉に興味を持って運営に参加した人たちが、独特の緊張感を感じたこともあるでしょう。

 日本の裁判は、法廷では書類のやりとりだけで、裁判官は誰もいないところで書類を読んで判決を書くという権威主義的な空間です。そうではなくて、法廷に証拠を持ってきて直接口にし、聞き、論争して評価する。法廷は言わば演劇的な空間でもあるべきではないか。第3回公判などは市民参加型の緊張感のある空間にかなり近づくことができたという気がします。

 新たな可能性を感じたのは大阪大学公聴会です。外国からの留学生も含めて若者たちの意見交流の場を作り、一人が5分ずつ意見を出しあいました。非常に好評で、日本社会を切るといった場になりました。これは次のイラク国際戦犯民衆法廷でも考えていきたいと思っています。

小泉首相も被告に

◆そのイラク国際戦犯民衆法廷がまもなく始まります

 イラク法廷ではブッシュに加え小泉を被告にするかという問題がでてきます。自衛隊をイラクへ送るなという日本の反戦平和運動と密接に結びついていく必要があります。

 イラク攻撃が始まった3月20日、私のところにアフガン法廷運動に参加した人たちから「イラクでも民衆法廷運動をするのか」というメールがたくさん入り、大きな期待を感じました。さらに広げるために、民衆法廷とは何か、何を目指すのかということを何回でも繰り返して伝えていかなくてはいけないと思います。

 慰安婦問題を取り上げた女性国際戦犯法廷では若い人たちが様々な運営に加わり、国際的な場に出て行くことで成長してその後の運動を担う力をつけました。私たちの民衆法廷運動もそうなれば、と願っています。

◆ありがとうございました。

       (1月11日)

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