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[27302] 【ネタ・多重クロス・マブラヴ・三次創作】作者がちーと始めました【アイタタタ】【きもいよ!】
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/20 00:34
前書きという名の言い訳

初めましての方、さようなら。
常連のお客様、いらっしゃいませ。
いえ、冗談です。知らない人でも雰囲気だけでも感じ取れるようにはしたいです。

クロス内容
現実 マブラヴ 【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました【チラ裏より移転】 リリカル戦術機 ケロロ軍曹 ダークエッジ 烈火の炎 アーマードコアラストレイヴン 短気な薬師 ニートになりました リリカル戦術機 リリカルなのは ドラクエ4 レイアース ツインシグナル ダイの大冒険 三国無双 腐(BLではない)他色々



今作の流れ

題名でスル―していたけど実は面白かった作品、発見! ていうかチートシステムだし!(ここでテンションが止められないほどに天元突破)

え、チートシステム使っていいの!?

よっしゃ、不特定多数に許可してる!

とりあえず、マブラヴとロボットものクロスだとアーマードコアなのか! 買ってこよ!

でもミケにまともなロボットものなんか書けるわけないよね! チートシステムでなのはとモンスター軍団出そう! 後、日本に行くと心読まれるし、ここはアメリカ様だよね!

いや、待てよ。心を読まれたくない→一方的に心を読むのは卑怯。→未知の相手と出会うのは怖いけど、互いに同条件で歩み寄ろうぜとSEKKYOU。→つまりロザリーヒルでロザリーとして助けを求めるわけか!

あれ、ロザリーが主人公はありえない。ロザリー憑依の主人公にピサロが惚れる事もありえない。つまり、ピサロをポイントで選ぶと、もれなくロザリーを選ばされる事に!

主人公空気乙wwwまあ、あれだ。アーマードコアよくわからんから、何かチートっぽい物出さないと。

智也や鈴出してぇな……。無学でチートキャラ思いつかん。さすがにマブラヴでロボット無しとか駄目だろう。

でもそうすると、主人公ミケ以外になくね? でもそれって凄く痛くね?

ご本家確認

なんだご本家様も主人公小説家じゃん! いけるいける(何故そう思ったのか)

書いてみた

ハイテンションになりつつも後で後悔するんだなーと予測

でも書いたもんは出さないともったいないよね←今ここ。まだハイテンション。

正気に戻って後悔

うん、わかってる。凄く痛い事してるってわかってる。
それでも、ちょっとでも笑って頂けたら幸いです。



[27302] プロローグ ~実際に知っている能力全部あげるって言われても、思いつかないよね? ね?~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/20 00:35
「Arcadiaのちーたー様が気付かぬうちに設定使用許可を出してたお! マブラヴ公式設定資料集買ったからマブラヴ物で何か書きたかったし、早速有難く「【マブラヴ・ACFA・オリ主・ネタ】ちーとはじめました【チラ裏より移転】」をぱくらせてもらうお! 戦術機以外のロボット知らないし、アーマードコア人気みたいだからアーマードコア・ラストレイヴンも買ったよ! 設定資料集は調べてもよくわかんなかったからいいや! チラ裏って事で許して貰うお! 出すかどうかわからないしね!」

 その者は、るんたったるんたったと買い物をしていた。
 そして、その帰り……家に着く直前。その者は、ふっと消えていった。
 そこは白い空間。楽しかった気分は困惑にとって代わり、何が起きたのかと周囲を見回す。

「……何ここ?」

【ミケに主人公補正と主人公属性が追加されました】

「……何今の?」

 ミケとはその者のペンネームだった。それと同時に、不思議と心が落ち着いてくる。

「はぁい、私は……まあ、好きに呼んで。それより、喜びなさい。貴方の夢見たシュチュエーションになったわ! マブラヴ世界を救いに行けるわよ! それもチートな状態でね」

 ふわり、と何者かが降りて来て言う。それは、天使だった。天使としか言いようがない。だって、空を飛んでいるし。

「え。死ぬ……」

「大丈夫よ。貴方が死んでゲームオーバーになれば、元いた場所の元いた時間に戻されるだけだから。もちろん、記憶以外の全てが同じ状態でね。ま、五千ポイントあげましょ」

「狂ったら?」

「その為の主人公補正と属性よ。貴方は幸運と強さを得るわ。ちなみに、強制参加よ」

 ミケは、ぺたんと座った。似たような夢はあった。その時もただ、呆然と流されるだけだった。夢かもという思いと、諦め、恐れ。抗うという選択肢はミケには無かった。

「いい姿勢ね。暴れたらどうしようかと思った。一万ポイント上げる」

「チートって?」

「貴方が今書こうと思っていたチートシステムがあるでしょ。あれを使わせてあげる」

 ミケは、思い出した。ぱくろうと思っていたチートシステム。
 しかし、些か頭の鈍い自分に、アクションゲームというハードルの高いゲームが苦手な自分に、戦術機が扱えるのだろうか。例え知識を追加されたとしても。

「まあ、そこら辺は自分で頑張ってよ。さっき言ったように、貴方は既に強化されているし、失敗しても失う物は何もないわ。信じるかどうかは貴方次第だけどね」

 それを聞いて、ミケは不安ながらに頷いた。とくに深く考えてはいない。流されているだけである。後で錯乱するであろう。

「ん、よろしい。もう一万ポイントあげる」
 
 理知的な返答をすれば、もっとポイントがもらえる。しかし、理知的とは縁遠いミケである。せいぜい、差し出された物を一生懸命確認する事が精一杯だ。

「まあ、十分ではないけど必要条件は満たしているわね。一万ポイント。全部で、十三万五千ポイントよ。さ、貴方の前にあるスクリーンを見て」

 ミケは、唐突に目の前にあるスクリーンに気がついた。これをじっと眺める。
 まず、戦術機っぽい物が必要なのではないだろうか。
 そう思うと、戦術機っぽい物一覧が出て来た。ミケは少し焦った。求めた物が出るのであれば、見落としが多数出るだろう。とにもかくにも、画面を覗く。
 
――レイアース(一体しか手に入れられません)一万ポイント
――ウィンダム(一体しか手に入れられません)一万ポイント
――セレス(一体しか手に入れられません)一万ポイント
――ロボット族(一般人)一体五千ポイント

 以上である。

「え?」

「え?」

 天使が覗きこんで驚愕に顔を染めた。
 
「貴方、戦術機すら知らないの?」

 そう言いながら、天使が手を振った。項目から、レイアースの機体が消えてしまった。

「設定資料集は買いましたけど、詳しく知っているかというと……」

 天使は、頭を抑える。

「いいわ、アーマードコアラストレイヴンと、戦術機の設定資料集は持ち込ませてあげる。それでイメージを固めなさい」

 そして、ミケの手にそれが出てくる。受け止められず、無様に落としたミケは、とにかくPSPの電源を入れて動かしてみる。
 ところで、アーマードコアは上級者向けの人を選ぶゲームである。
 そして、知らずにミケが買ったそれは、その中でも特に難易度が高いラストレイヴンであった。もちろん、理解できるはずが無い。

「あの、バックユニットって、どうやって撃つんですか?」

 ちなみにそれは右肩武器のミサイルの事であり、敵がいないと撃てない。
 その後もミケは、レーダーの示すままに、扉に向かって全弾撃ち尽くした。

「だ、駄目すぎる……」

「えと、時間ってあります?」

「あと二十二時間。ただし、眠くならないしお腹も空かないわ。あー、もー! その程度の知識なら、後からでも理解すれば選択肢が出るようにしてあげる!」

 怒られてびくっと身を震わせ、ミケはすみませんと謝った。
 しかし、裏ではアーマードコアの選択肢は一生出ないんだろうな、と考えている。
 そして、とりこぼしのないように、閲覧、全てと思い浮かべた。
 その途端、残り時間の計器と残りポイント数が現れる。
 しかし、愚かなミケにも理解した事が一つあった。

『ロボット族(一般人)』

 頭に思い浮かべていれば、自分の創作物でもいいんだ……。
 それって最強じゃなかろうか。そう、ミケは考えた。
 そして、一つ一つ項目を見ていく。
 まず基地は、必要だろう。

 ――時の庭園(五万ポイント)
 ――ロザリーヒル(初期出現場所が必ず救出できる範囲の敵地であり、一度救出されないと稼働しないが、最も安価で五百ポイント。護衛付)
 ――ラピュタ(三万ポイント)

「普通の基地は無いんかい!」

 天使の突っ込みに、ミケはびくっとする。途端、ある項目が浮かび上がった。

 ――ペンタゴン(二万ポイント)

 それに天使がずっこける。ミケは考えた。ラピュタは降りるときにレーザー攻撃で死にそうだし(ミケがこれに気付いた事を大いに褒めてほしい)、ペンタゴンはアメリカが怖い。できれば時の庭園がいいが、時の狭間に落ちたら怖いしロザリーヒルが安価である。
敵地なのは怖いが、必ず救出・脱出できる範囲って書いてあるし、大丈夫でしょ。護衛がつくのがありがたい。よし、一つ目はこれを選択肢に入れておこう。
ミケが考えると、その項目に色が付き、ポイントの横にもう一つポイントが出て来て、減った。仮想計算機完備なようである。ミケはそれを有難く思った。
 後先考えずに選択するのがミケである。もちろん、ミケはこの後、時の庭園を選べば良かったと激しく後悔するのだ。
 ……ミケはまだ、気がついていない。ペンタゴンと後から選択肢が出た恐ろしさに。
 そう、このシステムはミケの頭の中に無い物を出さない事を。
 それからも、選択は続く。

「XM3は必要だよね?」

 それは千ポイントと安かったから、即購入。さすがに、一般人のロボット族は買っていない。ロボット族とは進化した一族であり、少なくともミケよりはずっと優秀であり、色々と能力もあり、それを選ばない事は愚かな選択なのだが、ミケはこれから戦場に向かうという時に、一般人と堂々と書かれた者を買うという選択肢は選べなかったのだ。素直に一般人と書かれていれば何の役にも立たないだろうと思ったのもある。

「パソコン欲しい。後からこのシステムにアクセスできる媒体が欲しい」

 常に使っているパソコンと同機種のパソコンが、五百ポイント。自作ニートが神になりましたで出たパソコンが二千ポイントで出ていた。ミケは迷わず後者のパソコンを買った。
 未だに使っているポイントは三千五百ポイントである。

「それと、仲間が必要だよね」

 ずらずらっと並ぶ人、人、人。
 紅麗、烈火、陽炎、小金井、土門、風子、雷覇、ジョーカー、磁生……。
 ミケは、迷わず紅麗と陽炎を選び、一瞬悩んで紅麗様には御供が必要と自分に言い訳をした後、ジョーカーを選んだ。
 すぐに、天使ががしっと腕を掴む。

「何をしているの? ベータ相手に、それが何の役に立つの?」

「酷いっ影界玉と翅炎でとりあえず世界は救われるのに!」

「溢れだしたベータはどうするのよ!」

「それは誰も知らない」

 天使が、ミケの首をギリギリと締める。あっさりミケが倒れたので、天使は慌てて介抱した。

「パイロットは!?」

「えと、えと、イーグル様!」

 イーグルとはレイアースに出て来た美形である。ちなみに乗っていた機体は覚えていないから、彼を呼ぶなら彼プラス機種変用の一万ポイントが必要となる。
 
「ほ・か・に!」

「えっと、ケロロ軍曹のギロロ! 白銀武! まりもちゃん! えと、えと、後は思いつかない!」

 天使は、今度はムンクの顔をした。
 ミケは半分泣きそうになりながら、画面を見る。
 そして、顔を輝かせた。
 
「ダイの大冒険のバーン様! SS準備の為に読んでて良かった! えと、洗脳解放と合わせて、二十万ポイント……買えない……」

「洗脳解放って危険な響きは何よ!?」

「あ、なのはが買える! 神様ありがとう!」

 ふと、自分のスペックはなんだろうと思い浮かべると、戦術機適性C、アーマードコア適性D、リンカ―コアB、魔力A、体術Fと出た。見ている間に、お前駄目すぎるからおまけね、BY神と出て、リンカ―コアと魔力がワンランク上がった。

「あ、ありがとうございます、神様!」

 他に何かないか、ミケは目を滑らせる。

「佐藤先生(ダークエッジに出てくる吸血鬼)」

「不可! 人類滅ぼしてどーするのよ!」

 これも天使が手を振って消した。

「ああ、フェロモンで交渉に使えるかもしれないのに!」

 ミケが言い訳しながら未練がましく見ていると、項目が戻った。

「神様!?」

 天使が驚愕する。
 ミケは気が変わらぬうちにと、急いで選択する。今の所、選んだ者は全て美形である。

「後は……」

――スライム
――スライムベス
――スライムナイト
――キングスライム

「だから! ベータに! 何の役に立つと!」

 暴れる天使に怒られながら、ミケはスライムを一つ選択した。一ポイントだった。
 それとピサロを選択。繰り返すが、今の所、選んだ者は全て美形である。
 しかし、とミケは考えた。
 自分は馬鹿である。どう考えても馬鹿で弱い。
 これは、まずは参謀が必要なのではないか。
 ミケは、参謀に絞って選ぶ。

――烈火の炎の命。
――三国無双の司馬懿。
――三国無双の諸葛亮。
――ダイの大冒険のミスト

 ミケは、迷わず司馬懿とミストを選択した。
 護衛も欲しい。

――幻影旅団。
――カイト。
――呂布。
――ノヴ。

 幻影旅団はスル―。紅麗や佐藤先生を選んだとは思えないほどの賢明さである。ここでも大いに褒めてほしい。高すぎたのもあるけど。カイトとノヴ。念能力はぜひとも欲しい。つーか、ノヴのマンション内に基地建設すればいいんじゃね? 駄目?
 スクリーン上に、それは駄目と出る。
 そして、ようやくメカニックや、自分を鍛える強化合宿コースが必要なのではないかと考えた。

――極振りっ!のマゼラン(ただし同一人物は選べない)。
――極振りっ!の智也(ただし同一人物は選べない)。
――リリカル戦術機の鈴(ただし実際に作成可能な機体しか作れない)。
――短気な薬師のサライ。
――ツインシグナルのドクタークエーサー(若)(ただし同一人物は選べない)。
――ツインシグナルのドクタークエーサー(老)(ただし同一人物は選べない)。
――ツインシグナルのクオーター。
――ツインシグナルのカシオペア博士。
――ツインシグナルのハンプティ博士。
――ケロロ軍曹のクルル。

 ミケは、悩んだ末に、クルルと鈴と智也とサライ、クオータを選んだ。
 そして、強化合宿コース。
 今のミケが選択できるのは……。

――ロザリーヒルでの助けを呼ぶ練習コース

 のみだった。
 ……クリアさせる気あるんだろうか。
 ……クリアする気あるんだろうか。
 二人は互いに見つめあう。ここで念を押しておくが、あくまでミケは必死である。
 そして、ミケは最後に見直した。
 以下が、選んだ物である。

生物(45001pt)
 紅麗、陽炎、ジョーカー、なのは、佐藤先生、スライム、司馬懿、ピサロ、ミスト、カイト、ノヴ、クルル、鈴、智也、サライ、クオータ

技術(計1000pt)
 XM3技術

物(計500pt)
 ロザリーヒル(制限・特典付き)

教習コース(計500pt)
 ロザリーヒルでの助けの呼び方

所有パソコン(計2000pt)
 神のパソコン

 ……人物を選び過ぎである。ポイントは足りるが、洗脳した人間相手だとしても、コミュニケーション力が圧倒的に足りない。それに、言うまでも無くポイントの無駄遣いは馬鹿である。ミケは悩み、人物を以下のように修正した。

 人物(18001pt)
 スライム、司馬懿、ピサロ、ミスト、カイト、クオータ、鈴、智也、サライに絞った。
 
 スライムは一ポイントだし、ミストは体を操って守ってくれるだろうし、カイト、クオータは講師役として外せない。鈴、智也、サライは技術部として絶対に外せない。鈴が、魔法についても教えてくれるだろう。司馬懿は軍師だから必要だ。ピサロはなんとなくである。
 ふう、とため息をつき、ミケはポイント振りを終えた。
 最初にあったのが13万5千ポイント。選んだのが計2万2千1ポイント。
 残ったのは11万2千999ポイントである。

「ここまでポイントを余らせたのは貴方が初めてよ……」

 ミケは、褒められたと勘違いしてほっとした。そうだ、後は移動してから考えればいい。
 準備が出来ました。
 そう言おうとした矢先に、目の前に、機体が現れた。

「F-4ファントム、最初の機体と設計図ぐらいあげるわよ!」

 ミケは、深々と頭を下げたまま、姿を消して行った。
 教習コースに移ったのだ。



[27302] 一話 ~それぞれの一番に思いつく事~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/20 19:37
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 ミケは、走らされていた。それはもう、走らされていた。
 
「走るのです、ミケ殿。走るのです!」

 なんで走らされているのか。ダイエットの為である。何故、ダイエットせねばならんのか。美しくない者は囚われの姫の価値が無いからである。
 他にも、腹筋、腕立て伏せ、化粧の練習、演技力の訓練など、計一年間もの厳しい時を送った。
 無論、ミケにそんな忍耐力は無い。ArcadiaでSS書きたい。しかし、嫌がると鞭が飛んでくるのである。
 何せ、向こうは呼ばれなかった事を根に持っているのだ。
 でも、張郃様を使う場面など、さすがのミケにもわからなかったのである。
 そして、厳しい試練をなんとか突破し、ようやくロザリーヒルに着く。

【ミケは蝶々を出現させるスキルを手に入れた】

 嬉しくない。
 ミケの到着と共に、ミケの呼んだ者達が召喚された。
 ミケの腕にはパソコンが変化した腕輪が装備される。既に使用者登録済みである事はすぐにわかった。血を登録するなんて、針で血が出るまで指をつくなんて絶対に嫌なのでほっとする。
 スライム、司馬懿、ピサロ、ミスト、カイト、クオータ、鈴、智也、サライが現れる。
 ピサロは、開口一番、引き裂かれそうな声で言った。

「ロザリー! ロザリーに会えない世界で生きていて、何の意味がある!」

 ピサロは、ドラクエ4のボスである。ロザリーは人間に殺されたエルフの恋人だ。

「バーン様ぁぁぁ!」

 ミストは、ダイの大冒険で、大魔王バーンの体を預かっていた、体を操る力を持つ者である。

「ドクタークエーサーは、ドクタークエーサーはどこですか!?」

 クオータはツインシグナルに出てくるロボット。クエーサーは無論創造主である。

「おい、私を部下なしで働かせるつもりか。文官と張郃を用意しろ」

 司馬懿、張郃は真三国無双の武将である。
その司馬懿の言葉に、ピサロ、ミスト、クオータが一斉にミケを見つめる。ミケは、それには勝てるほど強くなかった。

「一応、全員ポイントで呼びだせるけど……洗脳付きだけどいい?」

「ドクタークエーサーに洗脳だと、ふざけているのか!?」

「バーン様に洗脳など駄目に決まっているだろう、下種が!」

 ミケは、平謝りするしかなかった。悪いのは無理やり洗脳しているこちらだから、当然である。ただし、彼らも洗脳されているはずなのだが。ピサロナイトが、困ったようにミケの傍に佇んでいる。

「洗脳を解くのに十万ポイント掛かります。後、今の所バーン様しか洗脳解除の選択肢がありません。バーン様は元から高いので二十万ポイントになります」

「……仕方ありませんね。今はただドクターに会いたい」

「よかろう。ただし、ロザリーに無礼を働いたその時は……」

「バーン様に洗脳など、一瞬たりとも許されん! さっさとポイントを稼ぐぞ」

 ハンターxハンターに出てくる凄腕ハンターのカイトは厳しくロザリーヒルの外側を……具体的には、ミケが初期に使用したポイントの為に出現したベータを見つめており、魔術師の生まれ変わり智也と、転生を繰り返す天才サライと、戦術機の作り手であり魔法も扱える鈴がロザリーヒルを確認して、ミケの元に向かってきた。

「何もないぞ。研究室ぐらい用意してくれ」

 ミケは慌ててパソコンを開く。ちなみにパソコンの名前はクロで、変化した姿はラブラドールである。名前がミケの癖に。
 そこには、トイレ、風呂以外の基地機能全停止の表示があり、食料などの選択項目があった。ちなみに、ロザリーヒルにあった食料は全員分で二十日分あった。
 ミケがそれを説明すると、全員、ため息をつく。

「まずは、救助されてロザリーヒルを作動させる事が重要だな」

 カイトの言葉に頷く。召喚は出来たので、ロザリーは召喚する事になった。
 ドクタークエーサーと張郃、文官はもう少し環境が整ってから呼ぶ事になった。

「ロザリー、召喚、と」

 ミケの言葉と共にロザリーが現れる。それは一種の宝石であった。それほど、彼女は美しかった。

【ミケはスライムとピサロナイトと引き換えに空気スキルを手に入れた】

 何それ。護衛を奪われた事にミケは驚愕するが、カイトが安心させる。

「俺が守るから大丈夫だよ」

 無論洗脳効果である。

「不本意だが、これもバーン様を救う為。私もお前を守護してやる。私を受け入れるがいい」

 ミストがミケの体に入りこむ。
 ミケはようやく安心する。しかし、ロザリーが助けを呼ぶ段取りとなって、ミケは今までの一年を思い泣きたくなるやら、ほっとするやらだった。

『どうか、私達を目覚めさせてほしいのです……。お願い、誰か……』

 ロザリーが助けを求める間、外を見る。
 海である。だだっ広い海である。そしてベータである。
 ミケは初めてベータを実際に見て、その恐ろしさに震えた。
 しかしロザリーヒルは救援が来て解放されるまで、何も出来ない代わりに無敵である。
 とはいえ、ミケは怖かったので、カイトの傍で寝ないでSSを書いた。
 他にやる事が山ほどあるのだろうが、ミケの一番上の優先順位はそれである。Arcadiaに投稿したい。それ以外にミケの頭を占める者は無い。
 そこでミケは気付いた。ここは娯楽の無い世界である。つまり、ライバルのいない世界である。ここならば、ミケも小説家になれるのでは?
 ミケは、俄然やる気を出した。
 もちろん、この世界の人間にはミケを含め娯楽に費やす事が許される時間を持つ人間などいないし、美食に溢れた世界だからこそ好む者もいるゲテモノ料理が、王道すらない世界で受け入れられるはずが無い事にまでミケが気付けるはずもない。
 しかし、ミケは馬鹿でも回りは違うのである。カイトが、ミケを呼んでいった。

「今から、念能力の勉強をするぞ」

 もちろん、ミケは頷いた。しかし、ミケはすぐに後悔する事になる。
 瞑想は暇なのである。難易度が違うのである。妄想とは違うのである。それをミケは思い知る羽目になるのだった。
 空いた時間は心話……テレパシーと分割思考処理の練習である。
 本当は他にも学ぶ事があったのだが、ミケはSSをどうしても書きたがったのでそれは免除された。もちろん、本当は免除されてはいけないのである。
 そうして、色々出来た筈の十日はただ勉強とSS書きと助けを呼ぶ事に終始した。
十日後、ついに救助隊が現れた。
 それは国連軍だった。
 ミケは、急いで司馬懿に視線をやった。今こそ、軍師の出番である。
 司馬懿は、自信満々に、そして見下しながら言い放った。

「掛かったな、馬鹿めが!」



[27302] 二話 ~心を読まれるのって実際には拒否すると思う~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/21 13:02
 その言葉を聞いて、国連軍は身構えた。そして、何も起こらなかったので、警戒しながらロザリーヒルへと入ってくる。
 その間にも静かな地震と共に、ロザリーヒルが稼働しつつあった。
 救出条件が満たされたのである。どう見ても救出には見えないが。
 海に突き立った塔だけであったロザリーヒルは、塔を中心とする島となりつつあった。
 ピサロは人間が嫌いな為、ロザリーを背後に庇い警戒していた。
 以下、彼らの思考である。

『ろざりーちゃんを守らないと!』

『例え相手が何だろうと、ロザリー様を守る!』

 スライム、ピサロナイトである。特にピサロナイトは険悪な雰囲気である。そして、明らかにスライムは人間ではない。

『今度こそ、人間にロザリーを殺させはしない!』

 ピサロの思考である。異様に耳が長いが、この思考がなければエルフの物語など無いこの世界では人間として受け入れられていただろう。彼は自ら自分が人間でないと暴露した。

『ピサロ様……。ああ、争いにならなければよいのですが』

 ロザリーの思考である。

『司馬懿が交渉役に最適との事だが、これでは……まあ、失敗すれば殺せばよいか。ともかく、人間が訪れて基地は稼働した。この者達に、もはや用は無い。ああ、大魔王バーン様、必ず貴方をお助けします』

『困ったな……。司馬懿が交渉役って事に不安が出て来たぞ……』

カイトである。

『私が一番……私が一番……私が一番……』

『やれやれ、やっと基地が稼働した。これで研究が出来るな』

『俺は俺の研究したいものを研究する。……と言いたい所だが、他にやる事なさそうだな』

 上から、鈴、智也、サライである。

クオータはロボットなので、思考は読めない。しかし、ミストがミケの中に入っている事で、思考の頭数はあった。運よく、クオータとも近くにいたので、問題は無かった。

『軍人、初めて見ちゃった! 緊張する! ちょっと怖い! そして萌え! 軍人x軍人はぁはぁはぁはぁ……でも司馬懿、こんな交渉方法で大丈夫なのかな……それより軍人萌え―――――――!』

 ちなみに、この思考はミケの思考、ミストの思考はクオータの思考として思われている。

『ふふふ、この辺での活動の許可を得、交流をするなどこの軍師・司馬懿の頭脳に掛かれば赤子の手を捻るような物よ! 人間がここに入った時点で基地が作動し、目的は果したような物だしな。そもそもここは海なのだし、国連とやらと敵対する予定も無い。大規模な漁さえ行わず領海権を行使しなければ問題にならんだろうしな! この程度の事で切り札の技術提供をする必要もあるまい』
 
 最後に、司馬懿の思考である。
 そして、これら思考は全て霞にリーディングされており、国連軍に送られていた。
 兵士達は、緊張しながら司馬懿を見る。
 人間さえ訪れれば後は用は無い。彼らは人間ではない。失敗すれば殺せばよい。ピサロ「様」、「大魔王」バーン「様」、それらの事を考えれば、メンバーはここにいる者だけでなく、大規模な本隊があるはずである。
 とにかく、今この場で重要なのはロザリー、司馬懿であろう。彼らに対する周囲の評価から、わかりやすい要人である。

「貴様らはなんだ!」

 乱暴な物言いに司馬懿はむっとした。

「私は司馬懿。ここの軍師である。貴公の名を告げられよ」

「私は国連軍、伊隅戦乙女中隊隊長、伊隅みちるだ。ここは日本の領海である。この突如現れた塔は我が軍が接収する。ついてきてもらおうか。そこの騎士! 剣を降ろせ。ロザリー! 司馬懿! お前達は手を頭につけて前へ出ろ」

「ふん、たかが中隊の隊長の分際でこの軍師、司馬懿に随分と偉そうだな。断る。どうせここらの海など、貴様らには必要なかろう。心配せずとも、ここで大規模な漁を行ったり、膨大な領海権を主張したりする事は無い。貴様らはただ、これにサインすればよいのだ」

 司馬懿は、ロザリーと同列にされた事に密かに腹を立てながら予め用意した書簡を渡す。
 それは混魔国との不可侵条約と書かれていた。
 ちなみに、これは全員で決めた名前である。初めはミストが魔界を主張していたのだが、どうしてもポイントの都合上魔界全ての生き物を召喚するというわけにはいかず、場所も小規模、メンバーもファンタジー的な力の持ち主ばかりという事で混魔国となったのだ。
 さすが司馬懿、そこには様々な条件が定められてあり、最低限身を守る為に必要な分の領海権と互いに敵対しない事、交流を持つ場合の取り決めなどが定められていた。
 客観的に見て、これは妥当な物だった。ただし、人間同士の話ならば、である。
 伊隅が霞伝えに聞いた指示は、拉致の続行。

「関係ない。我々が望むのは、貴様らに来てもらう事のみだ。繰り返す、貴様らは何者だ」

「埒が明かんな。お前はこの書簡を持って帰ればよいのだ」

 発砲許可が出る。
 威嚇射撃に、即座に全員が反応した。
 結果、兵は全員ダウンする事になった。軍師ビーム? もちろん出ましたとも!

「馬鹿めがっ馬鹿めがっ凡愚めが! この私がその程度の挑発に乗ると思ったか!」

 全員片づけて地団太を踏む司馬懿の為に、ミケは無双武将専用の肉まんを召喚する。

「こ、殺しちゃったの……?」

 呆然と見ているだけだったミケが、震えながら問う。

「殺してなどおらんわ。まさか、来たのがこれだけというわけはなかろう。手紙を持たせて回収させるぞ」

 その言葉に、ミケは大いに安堵した。

「ありがとう、司馬懿様」

「……ふん。交渉を決裂させない為、当然の処置であろう。それより、手紙を書くぞ。それと、やつらロザリーの名前を知っていたな。一体……」

 そこで、ミケは顔色を無くした。

「国連軍だと、確か心を読める人がいたと思う」

「馬鹿めが! 心を読まれていれば交渉にならんではないか! 何故それを早く言わない!」

 ミケが激しく叱責され、落ち込んだ・
 幸いな事に、叱られた事でいっぱいになってしまったミケは、その後マブラヴについて色々考える事をしなかった。
 それに、怒られながら心を読まれるという事が頭にゆっくりと沁み渡り、ミケは怒りに支配されつつあった。

「司馬懿様! 人の心を勝手に読むなんて絶対に許されないと思います! 国連とソ連は交渉対象から外しましょう! 基地も稼働したし、これからはアメリカ様です、アメリカ様!」

 勇気を出してミケは言う。本来ならこんな小娘の意見など一顧だにしないが、今は司馬懿は洗脳されている。

「む。私としては中国を優先して助けたかったのだが……確かに、初めに交渉するなら安定した場所の方がいいかも知れんな。交流については削除して、不可侵条約と心を呼んだ場合の警告と使者が働いた無礼の謝罪要求のみ書いておけばよかろう。アメリカが心を読む者を招致する可能性も無くはないから、心を読まれるリスクは常に負わねばならんか……。どうするかな」

「接触しなければいいでしょう。今はまず、頭の中で歌でも歌って、この人達を外に放り出しましょう」

 実際は、兵士達の中に霞が混じっており、一緒に気絶している為に心を読まれる心配はないのだが、一同は知る由も無い。
 全員が外に運び出され、船から出た人員がそれを警戒しながら引き入れ、ファーストコンタクトは終わった。
 それが終わると、クオータはミケに問うた。

「ミケさん、通信装置は出せますか?」

 その後、司馬懿に通信装置に着いて講義がされる。こっそりミケも聞いていた。

「それ位なら、さすがに出せると思います」

 ミケがクロを開くと、基地の機能が増設できるようになっており、兵士を撃破したポイントが入っていた。結果、五千ポイントほど消費して、立派な管制室が出来た。
 外の様子も見れるといいとか、レーダーが欲しいとか、色々クオータがアドバイスした結果である。
いくつもの画面のある、計器の並んだ立派な部屋を、興味深げに司馬懿が見回す。
 しかし、ここで問題が出た。……回線がわからない。
 どこに掛ければどこに繋がるの? それは謎である。わかるのはこの部屋自身の回線だけだった。

「とりあえず、基地も稼働しましたし、基地の運用施設から考えましょう」

「プラントに国連軍が倒したベータも入れないとな」

 クオータが言い、カイトが頷く。
 所変われば品変わる。ここの一般的な基地の設計図を手に入れるという新たな目標を得て、しかし何も出来ず、相手が動いてくるまでまずは訓練でもしよっか、その時に回線を聞けばいいやという事になった。その時の応対は心を読まれないクオータで決まり、各々に管制室に置いてあった携帯通信装置が配られた。
 無為に時間を消費する事、五日。一日で情勢が変わるこの世界で、貴重な時間を湯水のごとく使うミケ一行。
 無論、この間、世界は現れた第三勢力に大騒ぎになっていた。
 神は現れず、魔王が現れちゃったのである。
 これがハルマゲドンの大魔王なのでは!? はっそんなもんが今更来たって何も変わらんわ。
 そんな激論が交わされる中、ミケ待望のアメリカ様が決死部隊をロザリーヒルへと向かわせていた……。



[27302] 三話 ~うん、ろくな奴がいない~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/22 00:03
 突如現れた、塔。夜な夜な、耳の長い少女が語りかけてくる夢。それはそれなりに大騒ぎになった。
 そう、霞が派遣されるほどには。
 そして、その結果を元に、大激論が交わされた。
 大魔王という言葉、人間ではないという生物。そして司馬懿という男が放った未知なる力。威力はさほどないように思えたが、手加減しただけかもしれない。目覚めさせるとは何か? 何故、人間が来る事が目覚めさせるという事になるのか?
 司馬懿が言った、掛かったなとか、目的は達したとはどういう事なのか?
 わからない。ベータの時は、一度取り逃がした事が命取りとなった。G弾を使うべきか。
 それとも、問いかけてみるか? 我らは、友になれるのかと。
 彼らがベータと違う事。それは、日本語を話す事である。一見、人に見える事である。
 疑心暗鬼になるとともに、深い闇の中で迷子になったような、友を得たいという渇望が彼らを襲う。
 日本国に対する不可侵条約。心を読む事に対する警告。無礼に対する謝罪要求。謝罪要求とは、どの程度の物なのか。
 話し合いの末、アメリカがまず平和的方法で交渉を試みる事になった。
 自ら事態を手に入れたいという思いでもあり、謝罪要求を求められているという事で、慎重になりたい日本国との同盟国であるという関係でもあり、友好を期待する学者がいる国だという事があり、単純に最も力と余力がある国という事もあった。
 アメリカは、一抹の希望と不安を抱きながら、国連から提出された全てのデータを見つめる。
 まず、初めに表示されたのはスライム。

『ろざりーちゃんを守らないと!』

 明らかに人外である。むしろ、この体で明確な意志を持っている事に驚きを覚える。ベータの方が、よほど生物っぽい。その半透明の体に、脳らしき物は見当たらない。
 ただ、これだけは言える。この者はロザリーより身分が下である。
 偏見ではあるだろうが、小さいから知能が高そうに思えないし、人と違いすぎて価値観も違うのであろうから交渉役としては下位だ。
 次に、中世の騎士らしき格好をした者である。

『例え相手が何だろうと、ロザリー様を守る!』

 こちらは剣を持っていて、これもロザリーより下らしい。
 次に、耳長の男、ピサロである。これは、ロザリーと姿が近く、人間の目から見ても美男子である。この男の思考は、非常に興味深かった。

『今度こそ、人間にロザリーを殺させはしない!』

 つまり、彼らは以前人間と敵対した事があり、そして生きかえらせる手段がある、という事ではないのか?
 その思考から、ロザリーとピサロは恋人同士である事が伺えたらしい。また、ロザリーを呼び捨てにしている事から、上下関係が……少なくとも、ロザリーと同等である事がわかる。ただ、人間に対する敵意に凝り固まっており、交渉役にはしたくない。
次に現れたのは、宝石のような耳長の女性。美女という言葉では言い表せないほど美しい彼女の思考は、祈りであった。

『ピサロ様……。ああ、争いにならなければよいのですが』

 一見穏健派に見えるが、彼女に近づくと少なくとも三人が黙ってはいないし、彼女は、夢を使って人を呼び込んだ張本人である。その上、争いにならなければよい、というのは祈り以外のなんでもなく、彼女自身が争いを防ぐという行動は見いだせない。
ただし、交渉役としてはピサロよりは上位である。
次に、これは人間にしか見えない短髪の美男子である。が、霞は何か違和感を感じたらしい。

『司馬懿が交渉役に最適との事だが、これでは……まあ、失敗すれば殺せばよいか。ともかく、人間が訪れて基地は稼働した。この者達に、もはや用は無い。ああ、大魔王バーン様、必ず貴方をお助けします』

 これは最も警戒すべきだ。失敗すれば殺せばよい。氏が軽い分、ある意味、ピサロよりも達が悪い。しかし、興味深い事を思考している。『人間が訪れて基地は稼働した』。これは、ロザリーの『目覚めさせてほしい』とも合致する言葉である。そして、失われた興味。大魔王バーン。お助けする。この言葉から、一番位が高いのは大魔王バーンだと思われる。そして、それは窮地にあり、ここにはいない。されど、それを救う事を人間に願っているわけでもない。謎は深まる一方である。
次に、長髪の美男子である。これは、考えた事は短い。

『困ったな……。司馬懿が交渉役って事に不安が出て来たぞ……』

この思考からは、自分には変更の権限はないという意思が感じ取れたという交渉役としては下位だが、接触してみる価値はある。
次に、女である。顔立ちはやや整っているが、暗い女である。彼女は爪を噛んでいた。

『私が一番……私が一番……私が一番……』

 話が通じなそうである。が、一番を主張する程の何かがある事に留意。
 そして、醜い男と凡庸な男。

『やれやれ、やっと基地が稼働した。これで研究が出来るな』

『俺は俺の研究したいものを研究する。……と言いたい所だが、他にやる事なさそうだな』

 彼らは、技術班である事が感じ取れた。その研究が何であれ、技術交流はぜひともしたい。が、やはり交渉役としては下位である。
 そして、こちらも凡庸な女。これは短髪の男に隠れるようにしていた。

『軍人、初めて見ちゃった! 緊張する! ちょっと怖い! そして萌え! 軍人x軍人はぁはぁはぁはぁ……でも司馬懿、こんな交渉方法で大丈夫なのかな……それより軍人萌え―――――――!』

 嫌な意味で好意的である。そして、怖いと言っている事から、戦闘力が低く、脅しに屈してくれるかもしれないという可能性をほのめかせる。概念はよくわからないが、軍服の男同士が仲良くしている所を想像し、非常に興奮していたらしい。しかし、ここで重要な、とても重要な一言。こんな交渉方法で大丈夫なのかな、カイトと似た思考だが、決定的に違う部分。「今更他に任すつもりはないが」である。これは何より重要な言葉だった。
 ぜひとも他に任せてほしいような気もするが、良さそうな人材がいないので、司馬懿が一番マシだったのかもしれない。
 そして、司馬懿。入った直後、掛かったな馬鹿めがと言い放った男であり、交渉役。
 この者の頭の中は、まともな方と言えた。なにより、わかりやすい。

『ふふふ、この辺での活動の許可を得、交流をするなどこの軍師・司馬懿の頭脳に掛かれば赤子の手を捻るような物よ! 人間がここに入った時点で基地が作動し、目的は果したような物だしな。そもそもここは海なのだし、国連とやらと敵対する予定も無い。大規模な漁さえ行わず領海権を行使しなければ問題にならんだろうしな! この程度の事で切り札の技術提供をする必要もあるまい』

 侵入して来た者達が名乗る前から国連と知っていたのは、非常に大きい。それに、心を読めると知りえた事も。言葉と共に、なんらかの知識を得ている事は確実である。ただし、とやらという言葉からも、深い理解ではないだろう。有難いのは、敵対する予定も無く、あえて敵対するような事も行わないという姿勢だった。彼の言葉からは、全く持ってそんな友好的態度は感じ取れなかったが。
 ここで気になるのは、切り札の「技術提供」である。彼らは、いざとなれば技術を提供するつもりがある。何かはわからないが、相手を理解するうえでも、これはぜひとも欲しい。例え役に立たずとも、相手のレベルがわかればいいのだ。国連軍も、なんとか技術提供を交渉で引き出してくれればよかったのにと思うが、もう遅い。
 彼の戦い方は非常に奇妙だった。どうみても柔らかそうな団扇のような物で、全てを切り裂き、光線を放つのだ。
 彼らは、ベータの模倣した姿では、という意見すらあった。
 結果、アメリカではこのような推論を立てた。遥か昔、時は中世。その頃、人間とは別の勢力、魔王軍があった。彼らは退けられたが、今、部下達が復活した。
 そして、大魔王を蘇らせ、世界征服に乗り出す予定なのだ!
 そして、そんな推論をぶちまけてから失笑する。それで、緊張感は霧散した。異世界という事を除けば、それは大体あっていた事を、彼らは知る故も無い。
 続けざまに観察している最中、驚くべき情報が次々と入る。まず、ベータの死体を搬入しているという事。そして、最初の試作機、F-4が例の地点に唐突に現れたというのだ。
 これはアメリカを緊張させた。やつらは、確実に地球の物を模倣している?
 しかもそれは、三体も現れたのである。彼らは、初めは非常に拙い動きだったが、徐々に、恐るべき速さで習熟して行っている。もはや、一刻の猶予もない。
 すったもんだの末に呼び出されたのが、ウォーケン少佐だった。

「第66戦術機甲大隊、アルフレッド・ウォーケン、ただ今参りました!」

「よく来てくれた、アルフレッド君。事前に渡した資料は読んであるね? 君は、我がアメリカ軍いい男選手権で見事上位に選ばれた」

「は! ……は?」

 ウォーケンはとにかく敬礼する。

「君の相手役は選ばせてあげよう。候補は能力から選定してあるがね」

「は……?」

 ウォーケンは、軍に入って初めて逃げたいと思った。
 そう、一番扱いやすそうで馬鹿そうで弱そうで権力っぽい物を持ってそうな相手をターゲットにしない理由は何もなかったのである。もちろん、司馬懿相手にも交渉するのだが。
 そうして、人身御供の乗った船はロザリーヒルへと向かったのだった。



[27302] 四話 ~あれ? ウォーケン無事? ……なわけがないか~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/23 14:15








 ミケ達は、F-4で遊んでいた。
 なんと、この世界ではネットは無かったのである! ミケはもう自棄である。
 自分のSSを読んでくれそうな人を召喚しようとさえ考えていた。こいつはどこまでポイントを無駄にするつもりなのか。だがミケは、真剣である。
 とりあえず、あれから張郃を呼んだ。前回の失敗を踏まえ、司馬懿の護衛である。
 もちろん、その為に現れたベータは彼らの手で倒している。
 ミケが隅っこで泣き叫ぶ中、さして慌てた様子も無く手際よくベータを片付ける者達。
 ミケに戦闘? できるはずがなかった。

「やっぱり、数の暴力は怖いな」

「技術班の開発を待つしかないか」

 とりあえず、F-4とXM3の知識だけでも技術班に開放したミケは、勉強をしたりSS書いたりして過ごしていた。
 そんな平和なある日、管制室から船が近づいていると連絡が来た。

「あの旗は、アメリカ様だ……!」

 ミケは目を見張る。どこまでが心を読める範囲かわからない為、ミケ達は静かにロザリーヒルへ撤退し始めた。クオータだけが前へ出る。
 ミケはアメリカ様から目を離せない。外国の軍人さんである。目が釘付けになるのは当然と言えよう。
 通信機から、会話が聞こえてくる。

『私は、アルフレッド・ウォーケン少佐だ。こっちは……』

「ウォーケン少佐! 凄い! この人、心読めないから大丈夫だったと思う。日本語出来るし!」

「む、そうか。ならばこの私が直々に交渉した方が良いな。ウォーケン少佐だけ招き入れ、他はお帰り願うのだ!」

『私はクオータと申します。ウォーケン少佐、よくいらっしゃいました。貴方だけご案内いたします。他の者はお帰り下さい。武器はお持ちになったままで構いません』

 戸惑いの気配。ウォーケンは、一人だけという事に、男と恋人の演技しなくていいんだ! と大いに安堵していた。しかし、良い男だから選ばれたとか言ったらどうしよう。何故自分が選ばれた? 代表者と勘違いされただけかもしれない。ぐるぐると思考を巡らせながら、それでもウォーケンはクオータに着いて行った。無論、通信機の使用許可は得ている。
 ウォーケン少佐は管制室に通され、目を丸くした。こんな重要な場所に連れていかれた、という事でもあり、中世っぽい服装の者が多いのにこんなに科学が進んでいる、という事でもあった。
 そこで、ウォーケンはさっと視線をめぐらす。
 資料に無かった者が一人増えている。
 そして、やはり件の女(ミケ)に遠巻きにガン見されている。
 なんとなく、招き入れたのはこの女では、と思った。
 そこで司馬懿が、ミケに茶を出させ、席に座らせた。

「私は軍師司馬懿だ。早速だが、交渉したい事がいくつかあるのだ。まずは日本語ですまぬが、この書状を見るが良い」
 
「不可侵条約と、交渉時の取り決めか」

 司馬懿は頷いた。

「それと、管制室を建てたは良い物の、そなた達の回線がわからぬ。設定をしていってくれると助かるのだが。そうだな、とりあえず日本とアメリカがあればよい。それと、軍事基地の設計図が欲しいな」

「基地……?」

 その言葉にウォーケンは緊張した。が、それは司馬懿の言葉で霧散した。

「この時代の基地はどういったものか、わからんのだ。ベータに対抗する為にも、早く体勢を整えなければならんからな。基地の設計図を元にここを改良したいと思う」

 この時代。その事をウォーケンは頭に刻みつけた。

「ちょっと待ってくれ。本部に確認を取る」

 実際には、受け入れて問題のない願いばかりだ。基地も、実在の基地の設計図を寄こせ、などと言われたら困るが、参考にするから寄こせ、というのなら飲みやすい。既存の地図を渡してもいいし、適当な基地の設計図を渡してもいいのだから。
 しばらく話して、ウォーケンは司馬懿に向き直った。

「通信装置の設定については、問題ない。日本からも許可を取った。ただ、基地の設計図に関してはアメリカへの依頼という形になる。こちらも何か得たい」

 もっともな事である。しかし、使えないミケのせいで司馬懿の札は少ない。XM3とクオータの作るAI。その二枚しかない札を、使ってよい物か。司馬懿はミケに視線を寄こした。
 しかし、それに気付くミケではない。司馬懿はため息をつき、ミケに問うた。

「ミケ殿、XM3だが、ここで使うぞ」

「あ、はい。司馬懿様の好きになさってください」

 ミケとしては、ただであげても良いぐらいの物である。無論、ミケは全く状況がわかっていない。
 しかし、このやりとりは重要な情報をウォーケンに与えた。権限は司馬懿よりもミケの方が上なのである。しかし、ミケは前情報通り頭が良くなさそうだ。となると考えられるのは、実力ではなく血筋で地位を得るという事である。大魔王バーンの娘……ではないにしても、やんごとなき地位の者の娘なのだろうか。いや、それにしては気品が無い。成り上がり者のお偉いさんの娘なのか。
 ウォーケンはつらつらとそんな事を考えながら問うた。

「XM3とはなんだ?」

「新型OSだ。扱い方は難しいが、慣れれば戦術機の機動が上がる。そなたらには必要な物だろう」

「……わかった。それと交換だ」

 そして、ウォーケンは設定をする。その際、「見ちゃ駄目(BL注意)」というのを見つけた。BLとは一体……? ウォーケンは、さりげなくそれを母国へとコピーして送ると、なんでもない振りをして司馬懿達に向き直った。

「それと、交渉が先になってしまったが、お前達が何なのか聞きたい。人間ではないようだが、一体……何者だ? 目的は? 指揮官はどなたなんだ?」

「バーン様を助けたい(ミストに言わされた)。後、私、自分の書いた小説を匿名で出したい。そして読んでほしい。感想も欲しい。それが出来るようになる為に、邪魔なベータなんて消えちゃえばいいと思ってる」

 ミケが開口一番に告げた意味不明な言葉に、ウォーケンは何を言っているかわからなかった。それは、帰国後すぐにわかる事となる。

「ふ……私も、ロザリーが安心して暮らせるようになるなら、戦いも厭わない」

「ピサロ様……私は、ピサロ様と穏やかな暮らしが出来ればそれで良いのです」

「ロザリーちゃんを守る!」

「ロザリー様を守る!」

「俺は……出来れば、故郷が欲しい、かな」

「私はドクタークエーサーにお仕え出来ればそれでいいのです」

「研究が出来ればそれでよし」

「智也に同じく、研究が出来ればそれでよし」

「私は、一番になる……」

 え。何このバラバラな人達。ウォーケンは困惑する。

「じゃあ、全部で」

 彼らは頷きあい、そしてミケは思いだしたように言った。

「後、世界を救うとかあるかもしんない」

「それで、指揮官は?」

 全員が、ミケを見る。
 ミケはというと、考えて答えた。

「後半、バーン様になるのかな……」

 訳がわからないまま、ウォーケンは帰国するのだった。



[27302] 五話 ~さらばウォーケン~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/23 14:11
 ようやく、基地づくりである。16日目にして、ようやく他の人がスタートラインでやっておく事をやるのである。
 
「大体の構造と必要な施設はこんな物ですか。皆さん、他に欲しい施設をあげて行って下さい」

「研究室」

「研究室」

「研究室」

「研究室」

「バーン様の為の玉座の間が必要だ」

 研究室ばかりである。

「ポイントやクレートを大量に使うと、ベータが大量にやってくるけど、どうする?」

「AIつきの戦術機の部隊を護衛として作ればいいでしょう。F-4以外の部隊はまだ作れませんか?」

「色々購入できるけど、どれを購入すればいい? アメリカ様のラプタ―でいっか。最新型だし」

 研究所を作り終わり、護衛の配置も済んだ。他に何かないかと、ミケはざっとスクリーンをスクロールさせる。そして、ああ、ミケは見つけてしまったのだ。

――アメリカ合衆国大統領 一万ポイント
――インキュベーター(契約必須) マイナス二十万ポイント

 我が目を疑ったミケである。
 名前もそうだが、人類の敵であるバーン様ですらマイナスポイントではないのに、インキュベーターはマイナスである。

――でも、インターネット整備……。

 ミケは、ふるふるとそこに指をやりかけ、止めた。マイナスポイントでないのが、幸いした。その事が逆に、美味すぎる話としてミケの心にブレーキを掛けたのだ。
 ああ、しかしミケは一体どれほどの人類の敵を呼びこむつもりなのか。
 アメリカ合衆国大統領も、召喚はしたいが、彼はアメリカを愛する指導者であるがゆえに、人類と敵対するバーン様と敵対するであろう。
 しかし、困った時は呼ぼう。
 そうミケは心に決めた。
 この日から、スクリーンを通してのインキュベーターのミケに対する営業が始まるのだが、ミケはそんな事は知る故も無かった。
 とにかく、ミケ達は順調に基地を開発し、メンバーを補充したのだった。
 16日め、夜。ミケは、佐藤先生の背中にくっついて満足していた。
 メロメロである。テラメロメロである。さりげにロザリーと鈴も一緒にくっついていて、ピサロ超涙目である。自分も佐藤先生の声を聞くとドキドキしてしまうので、ピサロは佐藤先生に近付けもしなかった。佐藤先生の魅了の力は男女分け隔てなく効くのである(ミケ設定)。
 ちなみに現れたベータは恙無く排除されてプラント行きになった。
 レベルが一つ上がり、全員の能力も上がる。そう。この任務は難易度ベリーイージーだったのだ。原作のちーたー様の主人公であったなら、既にこの時点でオリジナルハイヴを攻略していたかもしれない。
 しかし、この物語の主人公はミケである。ミケはまだ、この世界の日付すら確認していないのである。二週間以上たってスタート視点の一歩前。それがミケクオリティ!
とにかく、ミケは研究スタートの指示を出した。
 
(まあ、ベータを倒す技術は開発しておくか。渡すつもりはないけど)

(誰が研究を渡すか。俺の研究は俺のもんだ)

(何故……雛の戦術機の設計図が、思い出せない……)

(やれやれ、面倒な事だ。しかし、化け物と戦う戦術機に人を乗せるなど、馬鹿げている。協力も仕方あるまい。しかし、こういう事は姉さんの方が得意なのだがな……)

(お若いドクター……何と凛々しい……。早速、不老不死の研究をしなくては……)

 サライ、智也は通常運転であるが、鈴は自身に異変を感じていた。
 そう、素人が直感で簡単に操縦できる戦術機など、存在しえないのである。
 無論、オリジナルハイヴを軽く片づけてしまう戦術機も、存在しえないのである。
 それゆえ、鈴の記憶は穴が開いているのだ。
 鈴は爪を噛み、ラプタ―の設計図を見る。鈴の頭脳だけは、世界の修正を免れた。
 一番を取る為には、やるしかないのである。
 ドクタークエーサーもまた、研究を始めた。
 彼らは、研究室付属の加速装置のスイッチを入れた。
 さて、限りなくマイペース、限りなくマッタリポンな基地は、監視されていた。
 それはもう、きつく監視されていた。
 米国は驚愕していた。次々と地面から生えてくる建物や戦術機。
 それが出現する前に何か、手振りをしている……つまり、成し遂げているかのように見えたのは、あの馬鹿そうな女、ミケだった。
 米国は、それでミケが指揮官である事に納得した。
 EM3の技術においても、即時研究が開始された。
 わかったのは、これは超高性能なCPUとOSである事だった。
 技術説明が面倒くさいからと、それを組み込んだF-4ごとくれたのだが、F-4とは思えないほどの動きである。
 もちろん、他の機体に組み込むにあたっては、それなりに改修が必要だが、米国にとってそれは全く苦ではない。
 だがしかし、それと戦術機は、彼らを激しく戦慄させた。
 そのXM3の技術を見た香月博士が、これを作ったのは私と同じくらいの天才だ、いや、自分の研究の少し先を進んでいると言ったのである。それだけならば、なるほど、混魔国は凄いのだな、で済んだであろう。
 しかし、しかしだ。新たに出て来た戦術機。あれは、米国で開発中のはずの機体そのものだったのである。
 すぐさま、検証が行われた。結果、XM3は未来の香月博士が作った可能性が80%以上であるという結論が出た。プログラムを組む時の癖が、香月博士そのものの物だったのである。
 戦術機やOSを模倣できるのならば、何故基地ごときを模倣出来なかったのか?
 未来を読み取る能力者がいるのか? それは、ミケなのか?
 ならば、欲しい。地球の未来の技術を読み取り、形とする力、ぜひとも欲しい。
 幸い、ミケの性格をよく知る為の情報はウォーケンが手に入れて来てくれた。
ファイル「見ちゃ駄目(BL注意)」である。彼らにとってそれは正直、意味不明であったが、ミケの欲望だけは理解できた。
そして、ウォーケンが呼ばれた……。

「普通に司馬懿と交渉するという選択肢はないのか……?」

 途方に暮れてウォーケンは聞いた。

「取れる手段は全部取るに決まっているだろう。お前には今後も交渉役を任せる」

 ウォーケンは肩を落とすのだった。
 その頃日本でも、その情報を得て知識を得ようと画策していた。
 香月博士が混魔国の情報をオルタネイティブ4の研究利用の為求めており、日本もそれに協力する事となったのだ。
 九條透。九條家の次男である彼は、まだ若い衛士であった。
 とりあえず、国連軍がだが、初手の強硬姿勢で失敗した事もあり、日本でも見目の良い男を送ってみようという事になった。
 そんなこんなで、お前やれ、嫌ですっみたいなすったもんだをしているのを、他人事の目で見ていた。九條は、そんな得体の知れない者が役に立つとは思わなかったのだ。
 それでも、九條家程の家なら情報は回ってくるし、それを絶対見ない! という信念があるわけでもない。なんとなく資料を見た時、九條透の手は止まった。
 爪を噛む、暗い少女。何故だか、彼女から視線が外せなかった。
 最新情報で米粒ほどの小さく移った人間……佐藤先生が鈴と寄りそって映っているのを見て、九條透は唇を血が出るほどに噛んでしまった。そうなると、九條透は早かった。

「父上。未知の生物との交渉という、危険かつ重大な任務は人の上に立つ者がやるべきです。どうか、私に行かせてください」

 九條は、気がつけば父にそう頼んでいた。轟々と燃える嫉妬の炎。納得いかない気持ち。九條は、それが何か説明できなかった。
 
「しかし、良いのか。あれは、怪しい趣味をもっているとの事だし」

「帝国が相手に媚びるとは何事ですか。最初から敵意を向けるのも良くありませんが、堂々と赴けばいいのです。どうぞ、私にお任せ下さい」

 並々ならぬ熱意と共に言われ、九條家当主は思い悩み、そして結局は許可した。
 18日目。二つの船は、ロザリーヒルへと着いた。
 ミケは、その時ミスト付きで部屋に軟禁されていた。
 スクリーンがきゅうべえ先生の営業で埋まっていたのである。

――僕と契約してよ!
――インキュベーター大特価 マイナス30万ポイント!
――叶えられる物リスト1、インターネット完全整備
――叶えられる物リスト2、烈火の炎の同人誌20冊
 
 なんだろう、この魅惑的すぎる誘惑は。ミケ負けちゃう。インキュベーター召喚しちゃう!
 相談した結果のこの扱いである。
 ミストは賛同しそうなものだが、感情エネルギーというのであれば、バーン様の崇高なお心ほど強い感情はない! バーン様が危ない! という結論になり、インキュベーターについては先送りされたのだ。
 そして、メールが届いた。

「ごめん、ハックされちゃった。駆除するまで待ってね☆BY神」

 そうなると、基地の拡張は諦めねばならない。まったり待つ事になっていた。
 待ちばっかりで、いつ攻撃に転じるというのか。話の最後まで待ちで終わる事もありえなくはないのが、ミケ主人公の恐ろしさである。
 そんな時に来たのが、ウォーケンと透であった。
 佐藤先生は、人間の匂いを感じ、足早に二人を迎えに行った。

「お前は、誰だ?」

「私は佐藤です。ここのミケさんの教師ですよ」

 蕩けるような美声。
 佐藤先生は、極上の餌(ロザリー)を前にして、食べたいのに食べれないというジレンマを抱えており、外部からの侵入者はちょうど良かった。
 おりしも、その日は夜だった。
 佐藤先生は、まず透の首筋に歯を立てようとする。その甘美なフェロモンに、透は腰が砕けそうだった。
 その時、透は発見する。こちらを見つめる鈴の姿を。
 透は、佐藤先生を突き放し、急いで鈴に駆け寄った。

「――ッ」

 名前が出ない。名前が出ない。知っているはずなのに、誰よりも知っているはずなのに……! 気持ちばかりが焦り、透は鈴を抱きよせ、代わりの言葉を言っていた。

「お前は私の一番だ……っ! 結婚しよう!」

 鈴が、ふと表情を和らげる。

「貴方は、最初から私の夫でしょ?」

 そして後日、日本とアメリカにこのような手紙が届いた。

「父上。私は混魔国の鈴と結婚いたしました。つきましては、日本に戻りません。お許しください」

「上官。俺はノスフェラツになりました。よってアメリカには戻りません。お許しください」

 ミケは、ウォーケンが食われる姿を見られなかったのが悔しいやら、閉じこもっていたばっかりにウォーケンを人外にした罪悪感やらで大変な事になっていた。でも佐藤先生xウォーケンは書くお!
 こうして、救世主一行は大魔王一行への一歩を踏み出しつつあったのであった。



[27302] 六話 ~騙してすまんね~
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:9a8f54f5
Date: 2011/04/24 20:34

「ええい! いつになったらバーン様を召喚できるのだ!」

 ミストは荒れていた。当然だろう。2週間以上も成果が上がっておらず、ポイントは基本的に減る一方である。

「九條さん、なにか、手柄をあげられる所ってないですか?」

 ミケが九條に問うと、九條は今日始まる、光州作戦をあげた。
 ミケは行ってみる? と首を傾げる。

「俺は興味ない」

「俺も研究を渡すつもりはない」

「どうせミケ理解出来ないよ。するつもりもないし。機動実験とかしたくない?」

 その言葉に、智也とサライは押し黙る。

「私が一番……。新型機、蛹を作った……。次世代機毒蝶々も準備している……」

「じゃ、蛹を製造するね」

 鈴の言葉は、智也とサライの自尊心を刺激した。今までは、チート小説という都合上、智也とサライにライバルなど存在し得なかった。
 研究を互いに見せ合わずとも、明らかに俺が上! という風に認識できていたのである。
 しかし、3人は同じチート小説の出である。智也とサライは舌打ちしながら、ミケに設計図を見せて来た。それに、考えてみれば、ミケに設計図を渡すのが一番製造が楽である。ちなみに、智也は戦術機は作れないので、魔術具の設計図である。
 ちなみに智也は、パラメーターが大魔導師マゼラン仕様というチート仕様である。レベルアップの恩恵だ。
 無論、3人ともミケに理解できると思っていないので、ミケに設計図を渡す事に関しては心配していない。
 そんな時に、アメリカ様から連絡が来た。

『ウォーケンがノスフェラツになったとは、どういう事だ。私達は、互いに歩み寄る必要がある。そこで、だ。使節をアメリカに寄こすべきだと思わんかね』

「何その罠フラグ。ミケやだ」

『そうか、それは残念だ……。所で、ここに観光案内の書類があるのだが……』

「英語の小説なんて読めないじゃん。ミケやだ」

『出版社が君と話したいと……』

「行きます!」

 心の中でミケに対し、馬鹿めがを連発しながら司馬懿は、しばし考える。

「どんな理由であれ、一人でも欠けて帰ってきたら……わかっておられるのでしょうな」

『もちろんです』

「実は我らは、光州にピクニックに向かう予定なのだ。その間、護衛は置くが今一防備が不安でな。クエーサー殿とクオータ殿、ミケ殿、智也殿、ロザリー殿をお預けしたい」

『喜んで預かろう』

 もちろん司馬懿は、ミケに拉致の危険性を教えなかった。クオータ、智也、カイトが守ればいいだけの話なのである。少なくとも、ベータの危険のある所にそれだけのメンバーで置いて行くよりマシだ。
 そんなこんなで、彼らは出かける事になったのだった。
 ミケは、緊張していた。それはもう、緊張していた。本当に出版社の人と会うと信じているのである。言うまでも無く馬鹿である。
 なんども確認して、出かける準備をする。
 そうして、ミケ達は丁重な扱いでペンタゴンへと案内されたのであった。

「へー。出版社ってイメージと違うねー」

 ミケは呑気に周囲を見回していた。軍人さんが多い。

「アメリカって軍人さん多いねー」

 違う。

「ようこそ、ペンタゴンへ」

「騙された!?」

「それはともかく、戦術機の戦闘訓練等の見学はさせてもらえるのだろうね」

 クエーサーが問う。設計図があっても、戦い方がそれでわかるわけも無い。
 
「それぐらいでしたら、どうぞご自由に見て行って下さい。ただ、ウォーケンの事について、少し聞きたいのです」

「それはミケくんに聞きたまえ」

 クエーサー、鬼である。

「え、えと、黙秘権を行使します。もう諦めて下さいとしか」

「ウォーケンの家族に、諦めろと伝えろと? 死んだわけでもないのに?」

「死ぬより悪いよ!」

 ミケの案内をしていた軍人が、訝しげな顔をする。

「ウォーケンに一体何が」

「黙秘権を行使します」

 ループである。
 軍人は、ため息をついて問うた。

「基地を建設したのは貴方ですか?」

「うん、一応」

「アメリカにも基地を建設する事は可能ですか?」

「出来るよー。ここじゃベータの死体集めるの大変そうだし、ベータが現れると困るからしないけど」

「ベータの死体?」

「基地の維持に必要だから」

 そこまで言って、ミケはクエーサーに置いていかれてるのに気付き、慌てて追いかける。
 軍人はため息をついた。
 慌てるな。まだ、時間はある。
 調べなければならない事は、まだ沢山あるのだから。
 ミケがアメリカ騙してすまんね旅行を満喫している間、彼らは光州へと赴いていた。
 


 月が輝く、夜。
 夜はノスフェラツの時間。

「佐藤先生……いい匂いがする……。この甘い匂いは知っている……憎しみの、匂いだ……!」

「お行きなさい、我が子よ」

 ウォーケンは走り出した。
 とりあえず、彼らの任務は「手柄をあげる事」「ベータの死体を手に入れる事」「必ず生きて帰ってくる事」である。
 まったりと、まったりと彼らは活動を開始する。
 ウォーケンの犠牲を持ってして、「人を襲わない」という基本的な事をお願いし忘れているミケであった。学ばない女、それがミケである。
 
 


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