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鳩山発言を矮小化する中央メディアと政治家 - 岡留安則

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マガジン9提供:マガジン9

 前回の当連載において、鳩山由紀夫前総理が日本外国人特派員協会で講演し、<米軍普天間飛行場の名護市辺野古崎移設に関し、暫定的なものとして県民理解を求めたい考えを示す一方で、沖縄の反対が続く場合は合意見直しの必要性にも言及した>と紹介した。このとき、鳩山前総理は普天間基地の県外・国外移設のマニフェストを撤回し、日米合意=辺野古新基地建設を容認した「転向」宣言の背景として<「米国の圧力よりも日本の役所の中の論理にも(国外県外は)なかった。それを押し切るだけの意思を強く主張できなかった」「官僚側は最初から辺野古ありきだった」>と述べていた。それ以外にも普天間の県外移設ができなかった理由に、米側がヘリ部隊と地上部隊の一体運用を強く主張したことを挙げている。そのうえで両方をまとめて県外に移設する方策について「海兵隊全体の海外移設が可能ならば、模索もできたが、時間的に不可能だった」と述懐していた。

 総理職を離れて約8ヶ月が経過し、鳩山前総理もようやく自由に語れるようになったのだろう。その意味では貴重な証言であると書いたばかりだが、それよりもっと衝撃的な鳩山証言が飛びだした。共同通信、沖縄タイムス、琉球新報3社共同企画による普天間基地移設の検証記事の過程で、鳩山氏に対する約3時間のインタビューに成功したのだ。すでに、共同通信配信の形で地元紙・琉球新報では1面トップで「抑止力は方便」という極太活字が躍った。もうひとつの地元紙・沖縄タイムスも新報よりは地味だったが、一面トップで同様の見出しをつけて報道した。

 すでに国会でも大々的に取り上げられ、メディアも追撃したので、鳩山インタビューの内容は広く知られることになった。わかりやすくいえば、鳩山氏自身が総理の時代に日米合意=辺野古新基地建設を決断するに至った理由としてあげていた普天間基地の抑止力は「方便だといわれれば、方便」だったと認めたのだ。それだけではない。普天間基地移設は「最低でも県外、できれば国外」としてきた鳩山総理が辺野古案に回帰した背景には、防衛・外務官僚や岡本行夫といった御用評論家は言うに及ばず、自ら任命した岡田外相、北澤防衛大臣などが、最初から県内移設ありきで勝手に動き出したことがあったと率直に告白しているのだ。

 むろん、官僚や関係閣僚に対して強力なリーダーシップを発揮できなかった鳩山氏の失策であることは否定しようもないが、それ以上に日米両政府の周辺で長年暗躍してきた日米安保マフィアの巨大な壁に阻まれたということである。鳩山氏は、オバマ大統領とサシのトップ会談をひそかに望んでいたようだが、日本、米国両政府ともに既得権益を最優先する官僚たちがべったり張り付いており、2人だけで腹を割って話す機会など作りえなかったのだ。言葉を換えていえば、鳩山氏もオバマ大統領も、政治主導を発揮する能力がなかったということになる。これじゃ、誰がやっても官僚主導の壁は打ち破れないという悲しい結論になる。

 そのことをある意味で証明したのが、辺野古新基地建設派の自民党、公明党はいざ知らず、民主党主流派までが、黙殺ないしは鳩山発言はなかったことのように火消しに躍起となっていることだ。あれは、「宇宙人」の勝手な妄想といわんばかりの官僚答弁を読み上げた枝野官房長官、菅総理、岡田幹事長しかり。北澤防衛大臣などは、人生の中でも1、2を争う衝撃的なことだったと鳩山氏を小馬鹿にするような国会答弁をしていた。メディアも似たり寄ったりで鳩山批判のコメントを意図的に紙面化していた。

 しかし、国会やメディアがやるべきことは、「普天間の海兵隊に果たして抑止力があるのかないのか」の検証であり、防衛・外務官僚は沖縄以外の移設先をどこまで真剣に検討したのかの徹底検証ではないのか。あるいは、グアム・サイパン・テニアンの首長たちが官邸に誘致依頼で訪問した時、役人が面会すら拒絶したのはなぜなのか。橋本大阪府知事が自ら手をあげた関西国際空港への移設はどうなったのか。県外移設先として候補の一つにあげられた硫黄島はホントにダメなのか。国会やメディアが検証すべき問題は山積のはずだ。

 鳩山発言は、日米両政府の外交タブーの内幕を明るみに出してくれた。まさに、当事者による歴史的証言である。にもかかわらず、メディアも不感症なのか、動きが鈍い。沖縄のメディアはこの鳩山発言について、連日のように検証記事を掲載した。筆者も沖縄タイムスに頼まれて、鳩山発言をどうとらえるかという検証座談会に呼ばれた。しかし、霞が関と二人三脚路線をとる全国紙は、沖縄は日米安保のために犠牲になってもらおうとでも考えているのだろう。いや、考えているのではなく、思考停止状態なのだ。

 沖縄では、東村高江のヘリパッド建設をめぐる防衛局と住民のトラブルも激しくなっている。防衛局が雇った地元の工事関係者と住民が争う姿は見たくない光景だ。それも民主党政権が見て見ぬふりをして防衛局の強硬策を容認しているからだ。すでに怪我人も出ており、10人程度の警官まで動員される体制になった。こうした日常的な小競り合いは一体いつまで続くのか。先日は、嘉手納基地上空でパラシュート降下訓練も4年ぶりに強行された。沖縄を植民地くらいにしか考えていない米軍に対する地元民の反感は強まることはあっても、弱まることはあるまい。それも、民主党政権の裏切りと無為無策の結果である。
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憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。毎週水曜日更新。

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