2011年2月20日20時49分
【ロンドン=伊東和貴】米国がイラク戦争開戦の根拠とした大量破壊兵器の開発疑惑について、情報をもたらした亡命イラク人男性が、フセイン政権を倒すためにでっち上げたことを初めて認めた。男性に取材した英紙ガーディアンが伝えた。
「カーブボール」の暗号名で知られる男性は、2000年3月に独への亡命が認められた。すぐに独連邦情報局(BND)の当局者に協力を求められた。「サダム(フセイン大統領)追放のチャンスだ」と思い、トラックを使った可動式の生物兵器施設や秘密工場の話を捏造(ねつぞう)した。男性は化学エンジニアとみなされていた。
BNDは02年5月以降、頻繁に男性に接触。男性は協力しなければ国外にいる妊娠中の妻が独に戻れなくなると示唆され、聴取に応じた。米当局の聴取は受けなかったとしている。
03年2月、パウエル米国務長官(当時)が国連でイラクの兵器計画隠蔽(いんぺい)の「証拠」を提示。男性は、自らでっちあげた生物兵器施設のイラストをパウエル氏が掲げていたことに衝撃を受けた。その後ホテルに監禁されている間に、イラク戦争が始まったという。
大量破壊兵器は結局、見つからず、市民を含む10万人以上が犠牲になった。男性は戦争による犠牲は悲しいとしつつも、「誇りに思う。イラクに自由をもたらすには他に方法がなかった」と、「世紀の大ウソ」を正当化した。
中東に駐在し、日々、中東の動きに接する川上編集委員が、めまぐるしく移り変わる中東情勢の複雑な背景を解きほぐし、今後の展望を踏まえつつ解説します。エジプトからの緊急報告も。