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« 続・世論調査の「TPP推進」は本当?──地方議会の反対決議
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中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる

TPP反対論を展開する中野剛志氏にインタビューを行いました。10月以降政府・大マスコミが「開国」論を展開する中、中野氏は「日本はすでに開国している」「TPPで輸出は増えない」「TPPは日米貿易だ」と持論を展開してきました。

TPPの問題点はもちろん、今までのメディアの動き、そしてインタビューの後半には、TPP議論の中で発見した新たな人々の動きについても触れていただきました。

*   *   *   *   *

中野剛志氏(京都大学大学院助教)
「TPPはトロイの木馬」
110114_nakano.jpg

TPP問題はひとつのテストだと思います。冷戦崩壊から20年が経ち、世界情勢が変わりました。中国・ロシアが台頭し、領土問題などキナ臭くなっています。米国はリーマンショック以降、消費・輸入で世界経済をひっぱることができなくなり、輸出拡大戦略に転じています。世界不況でEUもガタがきていて、どの国も世界の需要をとりにいこうとしています。1929年以降の世界恐慌と同様に危機の時代になるとどの国も利己的になり、とりわけ先進国は世論の支持が必要なので雇用を守るために必死になります。

このような厳しい時代には、日本のような国にもいろいろな仕掛けが講じられるでしょう。その世界の動きの中で日本人が相手の戦略をどう読み、どう動けるかが重要になります。尖閣、北方領土、そしてTPPがきました。このTPP問題をどう議論するか、日本の戦略性が問われていたのですが、ロクに議論もせずあっという間に賛成で大勢が決してしまいました。

─TPPの問題点は

昨年10月1日の総理所信表明演説の前までTPPなんて誰も聞いたことがありませんでした。それにも関わらず政府が11月のAPECの成果にしようと約1ヶ月間の拙速に進めたことは、戦略性の観点だけでなく、民主主義の観点からも異常でした。その異常性にすら気づかず、朝日新聞から産経新聞、右から左まで一色に染まっていたことは非常に危険な状態です。

TPPの議論はメチャクチャです。経団連会長は「TPPに参加しないと世界の孤児になる」と言っていますが、そもそも日本は本当に鎖国しているのでしょうか。

日本はWTO加盟国でAPECもあり、11の国や地域とFTAを結び、平均関税率は米国や欧州、もちろん韓国よりも低い部類に入ります。これでどうして世界の孤児になるのでしょうか。ではTPPに入る気がない韓国は世界の孤児なのでしょうか。

「保護されている」と言われる農産品はというと、農産品の関税率は鹿野道彦農水相の国会答弁によればEUよりも低いと言われています。計算方法は様々なので一概には言えませんが、突出して高いわけではありません。それどころか日本の食糧自給率の低さ、とりわけ穀物自給率がみじめなほど低いのは日本の農業市場がいかに開放されているかを示すものです。何をもって保護と言っているかわかりません。そんなことを言っていると、本当に「世界の孤児」扱いされます。

「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」と言いますが、そこにアジアはほとんどありません。環太平洋というのはただの名前に過ぎません。仮に日本をTPP交渉参加国に入れてGDPのシェアを見てみると、米国が7割、日本が2割強、豪州が5%で残りの7カ国が5%です。これは実質、日米の自由貿易協定(FTA)です。

TPPは"徹底的にパッパラパー"の略かと思えるぐらい議論がメチャクチャです。

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ニュージーランド、ブルネイ、シンガポール、チリの4加盟国+ベトナム、ペルー、豪州、マレーシア、米国の5参加表明国に日本を加えたGDPグラフ。日本と米国で9割以上を占める。(国連通貨基金(IMF)のHPより作成(2010年10月報告書))

─菅首相は10月当初、TPPをAPECの一つの成果とするべく横浜の地で「開国する」と叫びました

横浜で開国を宣言した菅首相はウィットに富んでいるなと思いました。横浜が幕末に開港したのは日米修好通商条約で、これは治外法権と関税自主権の放棄が記された不平等条約です。その後日本は苦難の道を歩み、日清戦争、日露戦争を戦ってようやく1911年に関税自主権を回復して一流国になりました。中国漁船の船長を解放したのは、日本の法律で外国人を裁けないという治外法権を指します。次にTPPで関税自主権を放棄するつもりであることを各国首脳の前で宣言したのです。

APECでは各国首脳の前で「世界の孤児になる」「鎖国している」と不当に自虐的に自国のイメージをおとしめました。各国は日本が閉鎖的な国だと思うか、思ったフリをするため、普通は自国の開かれたイメージを大切にするものです。開国すると言って得意になっているようですが、外交戦略の初歩も知らないのかなと。すでに戦略的に負けています。

世界中が飢餓状態にある今、世界最大の金融資産国である日本を鵜の目鷹の目で狙っています。太ったカモがネギを背負って環太平洋をまわっているわけで、椿三十郎の台詞にあるように「危なっかしくて見てらんねえ」状態です。

─TPPは実質、日米の自由貿易協定(FTA)とおっしゃいましたが、米国への輸出が拡大することは考えられませんか

残念ながら無理です。米国は貿易赤字を減らすことを国家経済目標にしていて、オバマ大統領は5年間で輸出を2倍に増やすと言っています。米国は輸出倍増戦略の一環としてTPPを仕掛けており、輸出をすることはあっても輸入を増やすつもりはありません。これは米国の陰謀でも何でもないのです。

オバマ大統領のいくつかの発言(※1)を紹介します。11月13日の横浜での演説で輸出倍増戦略を進めていることを説明した上で、「...それが今週アジアを訪れた大きな部分だ。この地域で輸出を増やすことに米国は大きな機会を見いだしている」と発言しています。この地域というのはアジアを指しており、TPPのGDPシェアで見れば日本を指しています。そして「国外に10億ドル輸出する度に、国内に5,000人の職が維持される」と、自国(米国)の雇用を守るためにアジア、実質的に日本に輸出するとおっしゃっています。

米国の失業率は10%近くあり、オバマ政権はレームタッグ状態です。だからオバマ大統領はどこに行っても米国の選挙民に向けて発言せざるを得ません。

「巨額の貿易黒字がある国は輸出への不健全な異存をやめ、内需拡大策をとるべきだ」とも言っています。巨額の貿易黒字がある国というのは、中国もですけど日本も指しています。そして「いかなる国も米国に輸出さえすれば経済的に繁栄できると考えるべきではない」と続けています。TPPでの日本の輸出先は米国しかなく、米国の輸出先は日本しかない、米国は輸出は増やすけれど輸入はしたくないと言っています。

米国と日本の両国が関税を引き下げたら、自由貿易の結果、日本は米国への輸出を増やせるかもしれないというのは大間違いです。米国の主要品目の関税率はトラックは25%ですが、乗用車は2.5%、ベアリングが9%とトラック以外はそれほど高くありません。日米FTAと言ってもあまり魅力がありません。

─中国と韓国がTPPに参加するという話が一部でありました

中国は米国との間で人民元問題を抱えています。為替操作国として名指しで批判されています。為替を操作するということは貿易自由化以前の話ですから、中国はおそらく入りません。韓国はというと、調整交渉の余地がある二国間の米韓FTAを選択しています。なぜTPPではなくFTAを選んだかというと、TPPの方が過激な自由貿易である上に、加盟国を見ると工業製品輸出国がなく、農業製品をはじめとする一次産品輸出国、低賃金労働輸出国ばかりです。韓国はTPPに参加しても利害関係が一致する国がなく、不利になるから米韓FTAを選んでいるのです

日本は米国とFTAすら結べていないのに、もっとハードルが高く不利な条件でTPPという自由貿易を結ぼうとしています。戦略性の無さが恐ろしいです。

<関税はただのフェイント 世界は通貨戦争>

米国は輸出倍増戦略をするためにドル安を志向しています。世界はグローバル化して企業は立地を自由に選べるので、輸入関税が邪魔であればその国に立地することもできます。現に日本の自動車メーカーは米国での新車販売台数の66%が現地生産で、8割の会社もあります。もはや関税は関係ありません。それに加えて米国は日本の国際競争力を減らしたり、日本企業の米国での現地生産を増やしたりする手段としてドル安を志向します。ドル安をやらないと輸出倍増戦略はできません。

日米間で関税を引き下げた後、ドル安に持って行くことで米国は日本企業にまったく雇用を奪われることがなくなります。他方、ドル安で競争力が増した米国の農産品が日本に襲いかかります。日本の農業は関税が嫌だからといって外国に立地はできず、一網打尽にされるでしょう。グローバルな世界で関税は自国を守る手段ではありません。通貨なんです。

─関税の考え方をかえる必要がありそうです

米国の関税は自国を守るためのディフェンスではなく、日本の農業関税という固いディフェンスを突破するためのフェイントです。彼らはフェイントなどの手段をとれるから日本をTPPに巻き込もうとしているということです。

─農業構造改革を進めれば自由化の影響を乗り越えられるという意見はどう思いますか

みなさんはTPPに入れば製造業は得して農業が損をすると思っているため、農業対策をすればTPPに入れると思うようになります。農業も効率性を上げればTPPに参加しても米国と競争して生き残れる、生き残れないのであれば企業努力が足りない、だから農業構造改革を進めよと言われます。

それは根本的に間違いだと思います。関税が100%撤廃されれば日本の農業は勝てません。関税の下駄がはずれ、米国の大規模生産的農業と戦わざるを得なくなったところでドル安が追い打ちをかけます。さらに米国は不景気でデフレしかかっており、賃金が下がっていて競争力が増しています。関税撤廃、大規模農業の効率性、ドル安、賃金下落という4つの要素を乗り越えられる農業構造改革が思いつく頭脳があるなら、関税があっても韓国に勝てる製造業を考えろと言いたいです。

自由貿易は常に良いものとは限りません。経済が効率化して安い製品が輸入されて消費者が利益を得ることは、全員が認めます。しかし安い製品が入ってきて物価が下がることは、デフレの状況においては不幸なことなのです。デフレというものは経済政策担当者にとって、経済運営上もっともかかってはいけない病だというのが戦後のコンセンサスです。物価が下がって困っている現状で、安い製品が輸入されてくるとデフレが加速します。安い製品が増えて物価が下落して影響を受けるのは農業だけではありません。デフレである日本がデフレによってさらに悪化させられるというのがこのTPP、自由貿易の問題です。

農業構造改革を進めて効率性があがった日には、日本の農家も安い農産物を出荷してしまうことになり、さらにデフレが悪化します。デフレが問題だということを理解していれば、構造改革を進めればいいなんて議論は出てきません。

こういう議論をすると「農業はこのままでいいのか」ということを言い出す人がいます。しかし、デフレの時はデフレの脱却が先なのです。インフレ気味になり、食料の価格が上がるのは嫌なので農業構造改革をするということはアリだと思います。日本は10年以上もデフレです。デフレを脱却することが先に来なければ農業構造改革は手をつけられません。

例えばタクシー業界が競争原理といって規制緩和の構造改革をしました。デフレなのに。その結果、供給過剰でタクシーでは暮らせない人が増えて悲惨なことになりました。今回は同じ事が起ころうとしています。

─TPP参加のメリットを少しだけ...

デメリットは山ほどありますが、メリットはないんです。

米国が輸出を伸ばし日本が輸入を増やして貿易不均衡を直すこと自体は、賛成です。ところが、関税を引き下げて輸入をすると物価が下がるので、日本はデフレが悪化します。経済が縮小するので、結局輸入は増えません。農産品が増えれば米国の農業はハッピーですが、トータルで輸入は増えません。

本当は日本がデフレを脱却して経済を成長させれば、日本の関税は低いんだから輸入が増えるんです。実際に米国はそれをしてほしかったのです。ガイトナー財務長官は昨年6月、日本に内需拡大してくれという書簡を送りました。ところが日本は財政危機が心配だと言って財政出動をしないので、内需拡大をしようとせずに輸出を拡大しようとするので、米国は待ち切れずにTPPに戦略を変えたのでしょう。米国は「とりあえずTPPを進めれば農業は儲かるからいいや」となったのでしょう。

デフレを脱却し、内需を拡大し、経済を成長させれば、関税を引き下げることなく輸入を増やすことができます。環太平洋やアジアの地域は、例えば韓国がGDPの5割以上、中国も3割以上が輸出に頼っており、シンガポールやマレーシアに至ってはGDPよりも輸出が多いです。つまり輸出依存度が高く、その輸出先となっていた米国が輸入したくないと言っているので環太平洋・アジアの国々は困っていることと思います。

今、東アジアが調子が良いのは、資金が流入してバブルになっているからで、本当はヤバイ状況です。環太平洋の国々は経済不況に陥った米国やEUに代わる輸出先を探しています。日本は世界第2位のGDPがあり、GDPにおける輸出の比率は2割以下という内需大国です。その日本が内需を拡大して不況を脱し、名目GDP3%程度の普通の経済成長をしたとすれば、環太平洋の国々は欧米で失った市場の代わりを日本に求めることができるので、本当の環太平洋経済連携ができます。これなら、どの国も不幸になりません。

─あえてTPPを推進する狙いをあげれば、TPP事態は損だとしても今後FTAやEPAなど二国間貿易を進めるきっかけにしたいということなのでしょうか

それも無理筋ですね。自由貿易を進めている国として韓国をあげ、日本はFTAで韓国に遅れをとっているという論調があります。しかしFTAは、一つ一つ戦略的に見ていくべきもので、数で勝ち負けを判断すべきではありません。韓国はGDPの5割以上が輸出で得ており、自由貿易を進めなければ生きていけません。韓国人はやる気があるとか、外を向いているとかいった精神論ではありません。しかし、自由貿易は格差を拡大するものであり、それが進んでしまったのが韓国なのです。

韓国がなぜ競争力があがったかのでしょうか。韓国はこの4年間で円に対するウォンの価値が約半分になっている。韓国の競争力が増したことはウォン安で十分説明できます。日本がTPPで関税を引き下げてもらったとしても、韓国のウォンが10%下がれば同じ事ですし、逆にウォンが上がれば関税があっても十分戦えます。

グローバル化の世界は関税じゃなく通貨だということがここでも言えます。なんで全部農業にツケをまわすんだと言いたいです。とっちにしたって世界不況ですから海外でモノは売れませんよ。失業率が10%の米国で何を売るんですか。

<TPP議論の女性の反応>

─中野さんがおっしゃるような問題点が出されないままに大マスコミが一斉に推進論を展開し、有識者も賛成論がほとんどでした

外国から見ればこんなにカモにしやすい相手はいません。環太平洋パートナーシップ、自由貿易、世界平和など美しいフレーズをつければ日本人はイチコロなんです。

なぜこんなにTPPが盛り上がってしまうのでしょうか。TPPは安全保障のためだという人がいますが、根本的な間違いです。まずTPPは過激な自由貿易協定に過ぎません。軍事協定とは何の関係もありません。

米国はかつての黒船のように武力をちらつかせたり、TPPに入らなければ日米安全保障条約を破棄するなどと言ったりしていません。日米同盟には固有の軍事戦略上の意義があり、経済的な利益のために利用するためのものではありません。さすがに米国でもTPPで農産物の輸出を増やしたいので、その見返りに日本を命をかけて守れと自国の軍隊を説得できませんよ。TPPを蹴ったから日本の領土が危なくなるなんてことはありません。

それにも関わらず日本が勝手にそう思い込んでいるのです。尖閣や北方領土の問題を抱え、軍事力強化は嫌だなと思っているときにTPPが浮かび上がってきて、まさに「溺れる者は藁をもつかむ」ようにTPPにしがみつきました。でもこれにしがみついたって何の関係もないです。もし米国が日米同盟を重視していないのであれば、TPPに入ったって日本を守ってくれません。

その中で無理に理屈をつけようとするから、アジアの成長だの農業構造改革だのと後知恵でくっつけるからきわめて苦しくなるのです。TPP参加論は、単なる強迫観念です。

─推進派が根拠にしているのは経産省が算出したデータです(※2)。どこまで信用できるものなのでしょうか

経産省はTPPに入らなければ10兆円損をするというデータを発表しました。その計算方法は、日本がTPPに入らず、EU、中国とFTAを締結せず、韓国が米国、韓国、EUとFTAを結び発効した場合は10兆円の差が出るというものです。

なぜ中国とEUを入れているのでしょうか。おそらくTPPに加盟しても本当は経済効果がないことがわかったからでしょう。反対派の農水省と賛成派の経産省は数の大きさで争っているので、試算自体に水増しがあります。もっと言えば、なぜTPPとFTAが混ざった試算をするのかが疑問です。日本がTPPで韓国がFTAと試算していることを見れば、韓国がTPPに興味がないことを政府が知っていることがわかります。こんな不自然な試算を見ていると、TPP参加の理屈をつけるのはさぞかし大変だっただろうなと同情したくなります。

─理屈が通らずに「平成の開国」というフレーズに飛びついた

「黒船の外圧でも、幕末・明治は変にナショナリスティックにならなかったからうまくいき、戦後はGHQによって屈辱的に占領されたものの日米安保を結び平和になり経済が繁栄した」ということをみんなが思っているから、今回も「開国」と聞いた瞬間に飛びついたのではないでしょうか。それまでは尖閣の問題できわめて「攘夷」の雰囲気がありましたから「開国」のフレーズに心理が動いたのでしょう。

しっかりと考えて欲しいのは、幕末・明治の開国がそのイメージと違うことです。富国強兵をして戦争に進み、関税自主権の回復を目指した、つまり開国した後の日本は独立国家になるために戦い抜いた歴史があるんです。それ以前に開国したのは江戸幕府であり、外圧になすすべなく国を開いた幕府の方が倒されたんだよ、と。そこからしてもう歴史観が間違っているんです。

─TPPの議論は「思考の停止」が起きているように見えました

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議論が複雑でやっかいかもしれませんが、せめてGDP比を見て「TPPは日米貿易に過ぎない」とか、米国が輸出拡大戦略をとろうとして輸入しないようにしているということぐらい知ってもらわないと、戦略を立てようがありません。推進派の人たちが国を開けとか、外を向けとか言っていますが、本当に外を向けば、TPPでは何のメリットもないことがわかるんです。そういう意味では推進派の頭の方が鎖国しています。

この程度の議論は、私みたいな若輩者が言わなくても、偉い先生が言うべきなのに誰も声を上げません、もはや民主主義国家じゃないですよ。

─「反対」はもちろん「わからない」と言いづらい雰囲気がありました

一般の人の方が正常な感覚を持っていたのですが、偉い先生が賛成しているから反対する自信がなかったんだと思います。それこそ下級武士が目を覚ませということで、それにかけるしかない状況です。

私は今回のTPPを見ていて女性の反応に驚きました。男どもが開国ごっこ、龍馬ごっこをやっていて、その安っぽいロマンチシズムのせいで自分たちの大事なものが奪われるかもしれないと不安に思っているのでしょうか。

「明治の開国は関税自主権の回復であり今回はそれを放棄しようとしている」と言うと、多くの女性がまさにその通りと言ってくださいました。女性の方が戦略性というものには敏感なんでしょう。

─日本史を教えている高校教師が「幕末・明治の開国を教えるときは、1911年・小村寿太郎をセットにして教えるほど関税自主権は基本的で大事なこと」と言いました。関税をゼロにするという話に飛びついた政府やマスコミは歴史に何を学んでいるのか疑いたくなります

幕末の開国はペリーが武力で迫ったものですが、今回はそんなことはありません。世界第2位のGDPがあり、何度も言っているようにすでに開国しています。なぜ自爆しようとするのでしょうか。こんな平成の開国の歴史を、僕らの子どもや孫にどうやって教えますか。雰囲気で決めるようなこの時代を、将来、歴史の教科書でどう教えるのですか。

─私は欧米に輸出している液晶モニターメーカーの営業経験がありますが、社員の関税に対するイメージが悪かった思い出があります。EUが関税を引き上げる度に域内の製品価格が上がり売上やマーケットに直結するため非常にセンシティブになります。関税に対するイメージの悪さが、関税撤廃を後押しする雰囲気につながっていることはありませんか

あるかもしれませんね。EUは関税が高いし、戦略的に関税をつかっていますし、そもそもEUはそのための関税同盟です。でも思いだして欲しいのは、TPPはEUと関係ないんです。日本はEUとFTAを進めたいけどフラれています。それはEUにとって得にならないからです。どの国もひとつひとつ損得を考えて進めているんです。

<迫り来る食糧危機と水不足>

─結局TPPで困る人は?

国民全体です。農業界だけじゃありません。あるいは日本でデフレが進行すれば日本が輸入しなくなり、世界全体も困ります。

心配なのは食料価格の上昇です。世界各国がお金をジャブジャブに供給していて、お金の使い道がないから金や原油の価格が上がっています。食料価格は豪州は洪水と干ばつなどの影響ですでに上昇しており、投機目的でお金が流れてくるとさらに上がることが予想されます。

─TPPの問題は家庭の食卓にも迫ってくるわけですね

1970年代の石油危機がありましたよね。石油の問題はみなさん心配されますが、石油よりも危険なのは食料です。中東の石油は生産量のほとんどを輸出用に回していて、外国に買ってもらわないと経済が成り立たないため、売る側の立場は意外と弱いものです。ところが穀物の場合は、輸出は国内供給のための調整弁でしかなく、不作になれば売らないと言われかねません。

穀物はまず国内を食わせて余剰分を輸出します。当然不作になれば輸出用を減らして国内へまわすものです。もともと農業は天候に左右されるため量と価格が変動しやすく、特に輸出用は調整弁なので変動が大きいのです。変動リスクが大きいから、穀物の国際先物市場が発達したのです。

日本のトウモロコシはほぼ100%米国に依存しているので、僕らは米国の調整弁になっているということです。不作になったら安く売ってもらえなくなります。そのトウモロコシの大生産地である中西部のコーンベルトで起こっていることが、レスター・ブラウンが警告する地下水位の下落です。水不足の問題です。

米国は水不足がわかっているから、ダムのかさ上げ工事を始めています。例えばサンディエゴ市に水を供給するダムは、将来の水不足に備えて市民の1年分の水が追加的に貯められるようになる計画が進められています。米国のフーバーダムひとつで、日本の約2,700のダムの合計貯水量を上回ります。ところが日本は「ダムはムダ」とか言っています。世界が水不足になる中で、日本の水源地はどんどん買われていると聞きます。本当におめでたい国です。

このようにして国は外からでなく内側から滅びるんです。カルタゴを始め、歴史上別に滅びなくてもいいような国がバカをやって滅んでいきました。日本もそういうサイクルに入ったということかもしれませんね。

欧州では「トロイの木馬」の教訓があります。それは「外国からの贈り物には気をつけよう」という言い伝えです。外国から贈り物を受け取るときはまず警戒するものですが、日本はTPPという関税障壁を崩すための「トロイの木馬」を嬉々として受け入れようとしているのです。

<TPP問題の側面にある世代抗争>

こんな状況が広がっている中で、TPP推進派が「日本には戦略が必要だ」と言いながら米国に依存しようとしています。

米国の庇護の下で経済的な豊かさだけを追って、何をしても成功し、ちょっとバカをしても大した損はしなかった世代の人々が90年代以降に企業や政府のトップになり、それ以降日本のGDPが伸びなくなりました。この世代の人たちが「日本の改革のためには外圧が必要だ」「閉塞感を突破するためには刺激が必要だ」という不用意な判断をするので、ものすごい被害を及ぼすことになるのです。

例えば日本は13年連続3万人の自殺者がいます。その前までは、日本は先進国の中でも自殺率が低い国として有名でした。バカなことをすると一気に転げ落ちてしまうんだという真剣さに欠けている人たちが、今の日本を牛耳っているんです。「最近の若者は元気がない」と言う人たちが元気だったのは、彼らが若いころはバブルだったからです。愛読書は「坂の上の雲」と「竜馬が行く」のこの世代は、「開国」と聞くと条件反射的に興奮するようです。

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先日朝日新聞社から団塊の世代の方がインタビューに来た時に、彼らの世代の口癖を指摘しました。このままでは日本が危ないという話をすると必ず「そんなことでは日本は壊れない」という口癖です。しかし、日本はもうすでに壊れているんです。政界はもちろん、私も含めた官僚、財界そして知識人は、毎年3万人の自殺者の霊がとりついていると思うぐらいの責任感をもって、もっと真剣に国の行く末を考えないといけません。

私は1996年に社会人になり、以来、一度も名目GDPの成長を経験していません。私より下の世代はもっとひどい。この世代は「いい加減にしろ」という気持ちになっているのでしょうけど、へたっている上、少子高齢化で上の世代が多すぎて声が出ないんです。でも「最近の若者は元気がない」などと偉そうに言わせてる場合じゃないんです。

今回は地べたを耕している農家、ドブイタ選挙をやっている政治家、女性、この人たちの「危ない!」と思った直感を大切にしなければいけません。全体が賛成派の中で黙っていた人、発言の機会さえ与えられていない人、真剣に生きている人たちに声を上げてもらいたいと思います。(了)

※インタビューの内容は中野氏個人の見解です。

2011年1月14日《THE JOURNAL》編集部取材&撮影 

【関連資料・記事】
■(※1)オバマ大統領、TPP推進の決意を示す APEC最高経営者サミットで講演(AFP)
■(※2)EPAに関する各種試算(pdfファイル)(経産省HPより)
TPP「開国」報道に"待った"の動き(NewsSpiral)
続・世論調査の「TPP推進」は本当?地方議会の反対決議(NewsSpiral)
TPP "見切り発車"は許されない(琉球新報社説 1.18)
怪談!TPP環太平洋連携協定 TPPって何?(TOKYO MX)

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110114_nakano4.jpg【プロフィール】 中野剛志(なかの・たけし)
1971年、神奈川県生まれ。京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)助教。
1996年、東京大学教養学部教養学科(国際関係論)を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。2000年より3年間、 英エディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年、同大学院より優等修士号(Msc with distinction)取得。2003年、同大学院在学中に書いた論文がイギリス民族学会(ASEN) Nations and Nationalism Prizeを受賞。2005年、同大学院より博士号(社会科学)を取得。経済産業省産業構造課課長補佐等を経て現職。
著書に「考えるヒントで考える」「成長なき時代の「国家」を構想する」「自由貿易の罠 覚醒する保護主義」「恐慌の黙示録―資本主義は生き残ることができるのか」など。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

すばらしい。
久しぶりに良い記事を見ました。
中野剛志先生のご活躍を期待しております。

中野 様

功罪の功が少なく,罪のほうが圧倒的に多いTPPについて、極めて分かりやすく、解説していただきありがとうございました。

お話の通り、アメリカとの自由貿易にあって、為替の問題、中国など日本より圧倒的に賃金の安い国に太刀打ちできるわけがなく、日本からの完成品輸出は、極度に低下しています。

日本は既にアメリカに生産拠点を移したり、完成品輸出する中国などに部品を供給する態勢になっており、あらためてTPPといっても輸出が増える可能性が、良くわからないのが、普通の感覚でしょう。

しかし、財界などは、アメリカと現地生産、日本からの輸出で多くの利害関係を持っており,工業界としては、実質的損害がまったくないので、賛成しています。

同じ日本人として、己の業界に実害がないからといって、農業、金融、サービス分野における致命的実害に目をつぶっていることは許されることでしょうか。

このような自分だけは被害がなければよいという利己主義が跋扈すると、この国の将来が極めて不安であり、心配です。このようなご投稿が、極めて自然に既存のマスコミで議論されるといいのですが、先ず無理でしょう。

少なくとも、このご投稿を議員に配布することを「一新会」が進められないだろうか。議員必読に値するものであり、平野様にお骨折りいただけないものでしょうか。

私を含め多分大多数の方が、TPPが国民に齎すモノ・駄目にするモノが漠然として見えていませんでした。まさに「目からうろこが」でした。

中野さんの論説を3度読み直し、まだ不十分とはいえ、TPPが国民にとっては必要のないものだと理解しました。

消費税増税とTPPという国民生活に影響がある大問題を、自分の手柄のように言う菅総理には、一刻も早く総辞職して頂く事が,日本の自殺者を増やさない事になりそうですね。

国民生活が第一のマニフェストを破り捨て、官僚の思い通りに操られ、改革を謳う方を狂ったかのように攻撃する総理。

精神不安・欝病などの診断をされたほうが宜しいのでは?

何が正しいのかの判断が出来なくなった総理の言うことは、全て逆が正しいということに成ります。

これから政治話で、特にTPPが話題になれば、大反対だと言う事にします。

久しぶりに新鮮な論評を読ませてもらいました。中野剛志先生(自分で納得する人にのみ先生とつけます)、私は、団塊の世代の少し手前の年齢ですが、若い人達の発言を心待ちにしています。団塊の世代は高度成長期に日本を作ったと自慢しますが、まともに子供のしつけも出来なかった世代です。退職した後は、現職時代の能力を生かして疲弊した地方に移住するなりして、地方の活性化と自身の豊かな精神を取り戻して、さっさと若者に日本を渡して欲しい。

先日、中野さんのyoutubeでの説明を見ることがありました。こちらの記事と併せてわかりやすい説明でした。要するにTPPとはアメリカのジャイアン政策の一環みたいなものですね。日本はのび太。。戦後、アメリカは天皇を前面に出して陰ながら支配してきて、そのアメリカに言われるままだったからこそ急速な経済成長を遂げる事が出来たのだろうと思えば、これまでは致し方ないことだったと思うのですが、果たしてこれからもそれでいいとは思えません。。
ただ、正面からとか分かり易い形で対抗すると、即座に脅し的な事件が発生するので上手に変えて行く様にしてもらいたいと思います。

日本の保守の一部の方々は、親米嫌中韓でだったりしてますけど(最近その訳がやっとわかってきた、、今更ですが)この時代にそんなこと言ってたら本気で取り残されると思います。沖縄の問題といい、米と何かあるとすぐに守ってもらえなくなると言う話になりますが、私はもし日本と中韓の間で何かあったとしたら、米は日本につかない可能性の方が高いと思うんですよね。いまや。韓国は北朝鮮があるし、ほとんどキリスト教国だし、中国はいわずもがな、、、という感じがするのです。日米同盟なんて何かあれば知らんぷりじゃないですかね?これまでのアメリカの世界での行動を見ていれば。だからと言って防衛だと言って闇雲に軍事力強化しても世界から見放されそう。米主体の核削減だって、日本に核爆弾を持たせない為にあらかじめ釘を刺したということはないですか?どっちみち自分たちは最後の一個まで持つつもりでしょうから。もしそれでも日本が核をとなったら、あっという間にイラクとか北朝鮮扱いになりそうじゃない?と思うんですが、、

だからと言って嫌米なんていうのも絶対あってならないし。日本は、主体性を取り戻しつつ(明治維新以前の日本をもっと学ぶべきと思う。戦とか武士とかだけじゃなく。歴史と伝統、中性的、芸術、自然的な信仰とか諸々)、親米、親中韓、果ては親世界でやってもらいたいです。

あとデフレはどうやって脱却するのがいいか今度教えて下さい。

先日、中野氏が西部氏にTPPを説明しているユーチューブを偶然見まして
なるほどと納得出来ました。
特に参加国のGDPの合計を100として米国と日本を除いたら10%しか残っていない、何処に売りに行くのかと言う指摘に、なるほど。
日本を除いた後の国はみんな農産物の
輸出国の指摘に、なるほど。
やっぱり大手マスコミは本当の事は言わない。

中野 様 論説ごもっともです。田中氏も言っておられましたが、国同士の条約は常に提案してくる国の国益によるものだと言う事です。TPPの世論の支持率が高いとのことですが大多数の国民が内容を理解してるかといえば理解していない国民が大多数でしょう。大体菅政権が唐突に政治課題に挙げることに不快感をおぼえます。目先の人気取りに利用され国益をたがえないようにしなければならないと思います。一刻も早く政権から退場していただくしかないでしょう。あらためて今回の中野氏の論拠に耳を傾け、熟考する必要があります。

 小沢問題の郷原先生も含め、いざというときに、アメリカ大本営メディアに与しないような、しっかりとした論者のインタビューをだしてくれるThe Journalはありがたいです。立派なメディアです。存続のためにも、カンパ会員の検討します。
 

本TPP解説掲載で、The Journalの面目躍如ですね。

実に正論ですね。中野様のように日本の国益を考慮し、曇りなく、TPPの本質を見事に喝破され、公言される勇気をお持ちの元霞ヶ関役人出身の大学の先生がおられることに感動しました。

霞ヶ関の全省庁の若い役人諸君に伝えたい。大学卒業後、入省し、主権者国民の意向を無視し、省庁権益維持・拡充に明け暮れる官僚上司に仕え、自分の志が萎えてくると感じるなら、我が身を正し、公僕として吏道の道を目指せないなら外へ飛び出して民間の会社へ早く転身してくれ。霞ヶ関の仕事が適さないのだと。

京都府民主党の頭でっかち議員たちの地元から大きな声を上げ続けて下さいませ。

中野剛志先生のよくわかるTPP解説―日本はTPPで輸出を拡大できっこない!
http://www.youtube.com/watch?v=RlyluxDfjMo&feature=related
中野剛志著「自由貿易の罠」、青土社 (2009/11/4)も興味深い。

このサイトは、かの西部邁ゼミナールとか、西部氏の話など聞きたくもないが、たまたま通産省から京大に出向中の中野剛志さんがTPP解説をしているので、視聴した。中野剛志さんの解説、歯切れが良くわかりやすく、素晴らしい。

TPPはまさに米国の財政が背に腹かえられぬ状況下で、米国の利益誘導むき出しに日本の脳みそカラッポの財務省官僚の操り人形の菅総理は赤子のような稚拙な米国隷属姿勢、日本国民を守る気概などなにも感じられない。このような総理は日本国民には必要ない。さっさと総理を辞めていただきたい。蔵前工業會の恥さらしです。

ところで、小沢一郎さんは自由貿易には基本的に賛成で、国内産業のセーフティネットをきちんと行ってからの保護貿易により外国としかるべき交渉をやれといわれている。これは中野剛志さんの自由貿易の罠から解き放たれるための保護主義と相通じるものがある。小沢さんと中野さんの目指しているものは基本的に同じといえるのではなかろうか。

>TPPは"徹底的にパッパラパー"の略かと思えるぐらい議論がメチャクチャです。

日本には、王冠がありまして

その王冠は、自由な争奪戦が行われ
どんな汚い勢力でも、勝てば、戴冠できるのです…

とんでもない阿呆が戴冠すれば
とんでもない阿呆が、日本社会を一元制御することになります。

アホがTPPなる大問題で思考停止したから
世間やマスコミがTPPで思考停止議論になったのですよ…

中野さんのおかげで、停止しかかってた頭脳が再始動できています。
いやー助かるなあ

日本はもはや、満州国でしょうか…
なるべく阿呆を満州皇帝に据えて
大国のいいように操る…
菅政権ってポチ米だから、ああも不自然に優遇されてるんでしょ?

つまりは米からのインテリ・サポートが入るので
TPP議論は、いくら正論がインテリ武装しても
詭弁側もおなじだけインテリ武装してしまうと思います。

内戦やテロがないと操れない…西洋列強とは常にそうでありました。帝国主義体制において。

日本がまず行うべきは、二大対立政治を下火にしていくことかとも思います。

中野先生の明解なTPP反対論。そのとうりだと思います。
今の日本は本当に異常ですね。巨大マスコミが揃いもそろってTPP賛成の旗振りを行い、恐らくTPPの中身も分からない国民の世論調査を行って、賛成多数を押しつける。いい加減な世論調査で国の方向性を強引に推し進める政府やマスコミのやり口に本当に日本国の将来に危惧を感じます。
TPPの賛成論、反対論をもっと明確に国民に示すべきだし、もっと議論を重ねるべきです。
すぐにでも参加しなければ日本は取り残されるという、安物商品の詐欺まがいの販売手法のような軽薄な政府のプロパガンダは止めていただきたい。

 「全体が賛成派の中で黙っていた人」ですね。賛成するのなら、それなりの目標があるのだから、それを掲げて、躍起になっても、進めようという声があって普通なんだけど、賛成派が不穏とも言えるほど静かなんですね。 賛成派と反対派で、もっと苛烈な議論が起こっても、TPPの場合は不思議ではないと思うのですが、現状の風景を見ていると、気持ち悪くなるくらいです。 中野さんは、パーセンテージで示されていますが、具体的な数値を想定してみても、土地の規模的な暫定値があるから、いづれ、無理あるな、とは気づきますよね。
 どうやら、戦争をしなくても、なにかを手に入れる手段を、どこの国かは思いついたようですね。まったく!

中野さん

とても勉強になりました。
TPP参加は直感的に危ないと思っておりましたがすっきりしました。戦う姿勢を強く感じられる小気味良い文章で久々に爽快な気持ちになりました。

中野さんや小沢さんが仰るように、TPPは米国の国家戦略であり、そもそも外交交渉は自国の利益の為に行うもので持ちかけた側の利益がより大きいと云う単純な事実から日本国民は、学び直さないといけませんね。

TPPが日本の利益には何一つならないことには同意します。
しかしながらTPPというブロック経済から隔離された場合。日本は孤立し戦前の二の舞になるのではないでしょうか?

日本にも中野氏のような、若くて優秀、そして頼もしい官僚出身の人がいることを知り、勇気づけられます。

後は、まともな政治家が政権を担ってくれさえすれば日本にも希望がもてるであろうにと、もどかしさを感じます。

冗談など言っている場合ではありませんが、

「TPPは"徹底的にパッパラパー"の略かと思えるぐらい議論がメチャクチャです。」

にはおもわず笑ってしまいました。

いくら安いからといって、中国産の果物を買う気にはなれません
口に入れるものですから、やはり安全を考慮するとちょっと

日本産のリンゴが、中国では1個数千円で売られているとのことです

日本国内なら数百円でしょうが、その中間搾取はだれが行っているのでしょうね

TPPによってその差額が日本の農家に還元される可能性もあるのだが

中野さんみたいな優秀な官僚が日本にいるとは予想していませんでした
移民を何千万人も受け入れなければいけないかもしれないTTPには正義はないと思います
ニュース・スパイラルは本当にすばらしいニュースサイトだと再認識しました、ぜひ大マスコミが取り上げない問題を報道してください、留学生利権や生活保護利権などです

~中野剛志の爽快な反TPPの一撃 - 議連は、国民戦線はできないか~

朝日新聞の1/18の紙面にTPPについての特集(15面)があり、中野剛志の反対論がインタビュー形式で載っている。この内容が実に素晴らしい。私がブログで言っていることと、ほとんど一言一句同じ主張が並んでいて驚かされた。マスコミに載った研究者の議論を読んで、ここまで我が意を得たりと膝を打つのは何年ぶりのことだろう。(中野剛志のTPP反対論はネット上にもあるが)、この朝日紙面にコンパクトに整理された発言録が、最も切れ味が鋭く説得力がある。まさに、待望した本格的な代弁者が救世主の如く颯爽と登場した感があり、読みながら興奮させられる。引用しよう。「TPPへの参加など論外です。今でも日本の平均関税率は欧米よりも韓国よりも低い。日本はすでに十分、開国しています。そもそも『海外に打って出れば、日本製品の競争力が高まる』というのは、考え方が古い。『安ければいい』という途上国市場でいくら製品を売っても、開発力はつきません。日本製品に競争力があったのは、消費者の要求水準が極めて高い国内市場で鍛えられてきたからです。(略)うるさい消費者を相手にしてきたから、日本企業は強くなった。ところがデフレが進み、安さばかりが求められるようになって、国内の『目利き』の消費者が減ってしまった。企業は研究開発を怠るようになり、ipadのような魅力的な商品を作れなくなった」。そのとおりだ。正しい指摘だ。そして最も重要で本質的な点だ。よく言ってくれた。引用を続ける。
【続き - 以下は有料です 転載禁止】

私も女性ですが、中野さんの情熱と慧眼にしびれました。

全く同感です。TPP絶対反対です。

こんなことを言うと変節漢みたいですが、この世に完全無欠な純粋な悪というものが存在しないように、TPPもどこから見ても悪だとはいえないと思います。煮え切らない態度で申し訳ありませんが、TPPはまったく悪い制度というコメントを拝見しますと、どうも違和感を覚えます。同時に既視感も覚えます。民主支持者と自民支持者とか。小沢派と反小沢派とか。

わたしはTPP加盟には、動機に不純なものを感じていますんで、積極的に参加する必要はないと思っておりますが、TPPはまったく悪いんですねとは考えておりません。WTOが開店休業状態で、TPPは制度としては、自由貿易というある種の「理想的」な世界貿易システムのための扉を強引にこじ開ける荒療治という要素も持っています。理想と理屈優先で、かなり痛みを伴うリスクの高いやりかたではありますが、事態がドラスティックに進展する可能性もないわけではありません。

それでもわたしは反対するでしょうが、TPPのプラスを認めマイナスも織り込んで議論するという作法がTPPに限らず政策を選ぶときの正攻法じゃないでしょうか。
すくなくとも、TPPはまったく悪でといえるほどTPPの形がはっきりしているとは思えません。TPP賛成の世論調査が「知ったかぶり」であるなら、TPP反対の意見の一部もまた知ったかぶりの可能性はあるわけです。いまは善悪論ではなく、TPPの姿を正しく捉えることと、その功罪の検証が必要な段階と思います。
善悪論で議論するやりかたは、一種の思考停止に他ならないのではないでしょうか。

すみません。何となく気になっていて、やっぱり。訂正です。
核はイラクでなくイランですね。いつも混同してしまいます。。

この国の人間が度々思考停止に陥るのは、大衆心理なるものではないかと思っています。「この話題知ってる?」といったノリで何事も扱ってしまう。TPPも。

「地べたを耕している農家」の近くにいて感じることは、彼らは余裕があるということです。社会の底辺扱いをされることに不満はあるでしょうし、経済的なアドバンテージを得にくい憤りもあるでしょうが、「自分達は日本がどうなろうとも食べることになんら困らないけど」というゆるぎない事実が見て取れます。

あと、企業文化の影響を社員が否応なしに吸い込んでしまうように、中央の文化もあるのだなと感じます。素人がいくらお勉強しても戦略的な発想は得られないでしょう。特にこの国では内輪もめを乗り越えないと何も出来ません。現場主義で誰よりも実態を知っていること、そして現実的な勘所を持ち合わせている力強さが必須かと思われます。

元々、この国で中央はあてにされていないかも。「この話題知ってる?」の大衆心理でネタにされているだけのような。
頼もしいことに、わかってる人は国に影響されない生き方を選んでいるように思います。

「関税より通貨」は勉強になりました。腑に落ちます。

仰る事は判りますが、韓国との関係が重要だと思います、韓国が加盟した場合、日本の輸出企業は圧倒的に不利になります。
FTAにしろTPPにしろ、韓国と同じ土俵で戦わなければ日本の国内は空洞化してしまうのではないでしょうか?
企業は工場の海外移転を進めればよいのでしょうが、
特に地方の工場が壊滅してしまう。


今更韓国に抜かれてしまうとか、国内が空洞化してしまうなどというのは、いかがなものでしょうか。

既に抜かれる部分では抜かれてしまっていますし、空洞化は実際に進んでしまっています。
「法人税減税」で、企業が何をやるか?
浮いたお金で、海外に工場を建てる事を考えるというのが、輸出型企業の「心」です。
嘘じゃありません。

農業に比べて、工業というのは、実に難しい分野で、「保護」というのが、簡単に出来ない産業なのです。
せいぜい、基幹技術を守ろうとするのですが、これがまた難しい。
完全なブラックボックス化しない事には、解体されてしまえば、技術の秘匿などというのは夢のまた夢です。


TPP好きにとっては、
そんな事も考えての、韓国云々や開放なのでしょうか。
また、金融については、どう考えるのでしょうか。
日本が、全てをトランスパシフィックなパートナーシップで、解放開放をやっていたならば、
リーマンの際、いかなることが起こったかなどという事は、一度も考えた事が無いのでしょうね。

すごい事になっていたと思いますよ。

中野剛志様

他の方もちょっと触れておられるようですが、私も先日の朝日新聞における先生と戸堂東大教授による争論を読みました。

TPP推進派の、というより自由貿易体制支持者の戸堂教授の論は
①グローバル対応により人モノ金が集まり、結果競争力も開発力もつく、ということでしたが、これは中野先生言うところの典型的な黒船論。まぁ外圧無いとだめな日本人、と言っているようなもんですね。
しかし、雇用面における考察がなく為替レートの問題に対する言及もない。
②デフレが加速するという指摘に対する反論はグローバル化した国でデフレが進んだ国はない、と言ってますが、すでに長期のデフレ下にあるわが国と同様の条件にある先進国ってあったっけ?と当然の疑問を持ちました。

結局理想としての関税障壁0%による共同体構想をお持ちの方なのかな?と勝手に推測しましたが、現実論としてはやはり無理がある。
個人的には中野先生の論立てに改めて賛同することを確認することとなりました。

ただ一点お伺いしたいことがありました。
先生は前述争論において内需拡大策として公共投資が有効、ダム建設が無駄であるとして海外に水資源を買い占められている状況はバカげている、と発言されています。
しかし、すでに従来型の公共投資の乗数効果は疑問視する声が多く、また、例えばダム建設により天竜川流域のようにダム銀座が出現、生態系の破壊から膨大なランニングコストの発生まで大きな問題があります。
私自身は分散型社会への移行に伴う公共投資を進めることにより、それが結果的に地方での雇用を生み、内需拡大策につながると見ていますが、いかがでしょうか?

もっとも例えば電力の発送分離の可否も既に90年代経産省内部で激しい論争があり、結果的に見送られたと聞き及んでおります。
やはり難しいのかな?

地方の多くの勤労世帯は工場勤務と農業(自家用栽培を含む)の両輪で何とか生活しているのです。
片方だけでは生活できない。
だから都市部の半分以下の給与所得で何とか頑張っているのです。
都会の人には判らないでしょう。

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2009年11月、日刊工業新聞社

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