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安倍首相の二枚舌 「従軍慰安婦」問題、ワシントンポスト紙社説

 「二枚舌の安倍晋三」と題した3月24日付の米紙ワシントンポスト社説の内容を以下に紹介する。

 北朝鮮に拉致されていった日本人被害者に対しては、これだけ情熱的に糾弾の声を上げながら、日本自身が犯した戦争犯罪に対して口を閉ざしているのはなぜか−。

 現在、ブッシュ政権は6者会談において、北朝鮮の金正日政権の要求に押され、今週2500万ドルの銀行預金を返還すべく、あたふたと慌てているのであるが、苦境にはまって苦しんでいるのは、米国だけではない。日本も同様であるのだ。

 日本は何十年も前、北朝鮮に拉致されたと思われる17人の日本人がその後どうなっているのか、その現況について情報を提供せよと北朝鮮に要求を突きつけており、このような要求に応じないかぎり、国交正常化のような問題を論議することはできないと、拒否の姿勢を堅持している。安倍総理は、13歳の時拉致されていったと思われる一人の少女を含め、これら拉致被害者の問題があたかも道徳上の至上課題であるかのような主張を展開してきたが、このような一点主義的な外交政策は、どうも日ごとに低下していく自らの支持率を挽回したいという底意に根ざしているのではないかと思われる。

 拉致問題についての日本の要求に対して、なかなか応じようとしない北朝鮮に、安倍が苛立ちを感じているのはわからないことではない。しかし、声高に北朝鮮を非難しながら第二次大戦中、少なくとも十数万の朝鮮の女性を拉致したうえ、彼女らを強姦し、性奴隷にした日本自身の国家犯罪に対しては、その責任を回避するばかりか、そのような事実があったことさえ否定しようとする安倍の態度は、単に理解しがたいということを越え、不愉快きわまりないことだと言わざるをえない。

 いま米国の下院では、日本が犯したかつての犯罪に対し、日本が公式に謝罪することを要求する決議案が上程されているが、安倍はこれに対し、日本軍隊がこれら女性の拉致に関与したという記録がないと、今月に入ってすでに二度も否定の声明を出している。

 いわゆる「慰安婦」に対し日本が残虐な犯罪を犯したことを認めた「河野談話」(1993年)に対しても安倍内閣はこれを否定ないし稀釈せんとする声明を発表した。

 北朝鮮が日本人を拉致し、彼らを翻訳者か、もしくは言葉を教える教師として利用したことは事実であろうが、それにもまして日本が朝鮮の女性を拉致し、彼女らを性奴隷として酷使したということは、歴史的にも記録されている明白な史実である。朝鮮、中国、フィリピン、またはほかの国々から拉致された20万人近いアジアの女性が性の奴隷にされ、しかもこれら女性たちの拉致に日本の軍隊が関与したということは、歴史が証明している事実である。このことについては、まだ生存中の被害者による証言があり、米国の下院に出頭した3人の証人も自分たちが受けた被害について証言を行った。

 日本の政府が今に至るまで被害者たちに対する責任と賠償を回避してきたことも褒めたことではないが、すでに発表されている「河野談話」のようなものさえも、これを否定しようとしているのは、少なくとも名だたる民主国家を自称している国の指導者としては恥ずべきことだと言わざるをえない。

 安倍総理は、過去日本が犯した拉致について、これは事実無根であると言い張れば、いま北朝鮮を糾弾してやまない自らの道徳的立場が強化されるだろうと信じている様が見受けられるが、結果は逆であろう。

 北朝鮮に拉致された日本人について、その現況を知るうえにおいて、もし日本が国際的な支援が必要だと思うならば、安倍自身が、かつて日本が犯した犯罪に対して、その責任を認め、そして日本によって侮辱にさらされた被害者たちに申し訳なかったと謝罪することこそが必要ではないか。(訳、鄭敬謨)

[朝鮮新報 2007.4.2]