最新の医療ルネサンス・医療解説
- 最新の医療ルネサンス・医療解説
読売新聞朝刊くらし家庭面の連載「医療ルネサンス」から最新記事や夕刊医療面に掲載の解説記事を紹介しています。
連載は1992年に「心と体に優しい医療」の実現を願ってスタートし、すでに4700回を超えています。これまでに新聞協会賞(94年)、菊池寛賞(95年)、ファイザー医学記事賞(2007年)などを受賞しました。
がついている記事には、専門記者が最新情報などを書き加えた「情報プラス」があります。
シリーズ
- アトピー性皮膚炎(1)病院転々 治療まちまち
- 「ステロイドを使うと、アトピーが一生治らないのではないかと思っていました」と話す横浜市の女性
横浜市内に住む女性(27)の長女(5)は、2歳2か月でアトピー性皮膚炎を発症して以来、7か所の病院を転々とした。
赤い湿疹が首の周りに目立ち始めた2007年、最初に受診した近所の皮膚科では、「アトピーによる湿疹なのかどうか、よくわからない」と言われた。抗アレルギー剤の飲み薬と、かゆみ止めの塗り薬を出されたが湿疹はよくならず、顔や腕、足にまで広がった。
「ステロイド(副腎皮質ホルモン)を使わないとダメかな」と医師。5段階ある強さのうち、弱い方から2番目の塗り薬を使ったがよくならない。
総合病院のアレルギー科では、検査でハウスダストやダニのアレルギー体質がわかり、掃除や洗濯を徹底するよう指導された。ただし「アトピー性皮膚炎」とは診断されず、医師からは「塗り薬は何が良いですか」と逆に尋ねられた。しかたなく、前の病院と同じ強さのステロイドを出してもらった。
3か所目の病院で初めてアトピー性皮膚炎と診断された。中程度の強さのステロイドと保湿剤などを処方されたが、塗る量や塗る回数の説明はなかった。かゆい部分に適当に塗っていたところ、湿疹はほぼ全身に広がった。
アトピー性皮膚炎の治療のポイントには、ステロイドの塗り薬の使い方がある。だがステロイドを使うと副作用でかえって悪化するのではとの誤解も根強い。アトピー性皮膚炎の治療に詳しい神奈川県立こども医療センター(横浜市)アレルギー科医長の高増哲也さんは、「ステロイドの使い方に慣れていない医師は、診断にも消極的な面がある。処方する薬の効果や量が不十分なケースも多い」と、医療側にも問題があると指摘する。
女性は、インターネットや雑誌を見て、アトピーに良いと評判の無農薬野菜や無添加せっけん、洗剤などを購入するようになった。食費や洗面用具の出費は以前の3~4倍になった。
「防腐剤もなく肌に優しい」とうたったクリームは、1か月ももたない小型の容器で8000円もした。塗ると一晩で長女の皮膚は真っ赤になり、強いかゆみを訴えた。
ある皮膚科では、ステロイドも保湿剤も使わず、抗アレルギー剤の飲み薬だけを出された。かゆくて眠れない長女をあやすため、一晩中眠れなかった。
「あの頃は何が正しいのかわからず、情報に振り回され、気が変になりそうでした」と、振り返る。
(2010年12月14日 読売新聞)
- 情報プラス
-
神奈川県立こども医療センター(横浜市南区六ッ川2-138-4 (電)045-711-2351)
( http://kanagawa-pho.jp/osirase/byouin/kodomo/index.html )
同センターの受診は予約制です。かかりつけの医療機関などで紹介状をもらい、同センターの地域医療連携室に申し込むことが必要です。
アレルギー科医長の高増哲也さんの外来診療は月、水、木曜ですが、初診や再診など患者別に受診日が異なります。
シリーズ
- [医療解説]子どもに治療説明… アニメで理解 「怖さ」和らぐ(2010年9月30日)
- 静脈の詰まり(1)血栓30~40センチ 左脚パンパン(2010年11月12日)
- 静脈の詰まり(2)血栓 フィルターで止める(2010年11月16日)
- 静脈の詰まり(3)長期服用 不要な場合も(2010年11月17日)
- 静脈の詰まり(4)悪化防ぐ弾性ストッキング(2010年11月18日)
- [医療解説] 抗がん剤の副作用抑制… 吐き気止め 持続する薬も(2010年11月18日)
- 静脈の詰まり(5)長時間の同じ姿勢注意(2010年11月19日)
- コレステロール(1)「善玉」 「悪玉」 両にらみ(2010年11月22日)
- コレステロール(2)心臓病リスク 男女で差(2010年11月23日)
- コレステロール(3)魚を食べ 動脈硬化抑制(2010年11月24日)
- コレステロール(4)遺伝で異常に高い数値(2010年11月25日)
- [医療解説] 救命措置 新指針… まず心臓マッサージ(2010年11月25日)
- コレステロール(5)食事と運動 大事な要素(2010年11月26日)
- 骨・軟部腫瘍(1)謎のしこり検査で 「悪性」(2010年11月29日)
- 骨・軟部腫瘍(2)骨を残し 運動機能保つ(2010年11月30日)
- 骨・軟部腫瘍(3)発症部位に応じ連携体制(2010年12月1日)
- 骨・軟部腫瘍(4)CT確認 削る範囲小さく(2010年12月2日)
- [医療解説] インフルエンザ新薬… 点滴や吸入1回のものも(2010年12月2日)
- 骨・軟部腫瘍(5)切らずに重粒子線治療(2010年12月3日)
- 子どもの急病(1)娘が熱性けいれん 動転(2010年12月6日)
- 子どもの急病(2)症状の度合い 親も判断(2010年12月7日)
- 子どもの急病(3)講座で知識、適切な受診(2010年12月8日)
- 子どもの急病(4)溺水 直ちに人工呼吸(2010年12月9日)
- [医療解説] 新生児治療室 深夜の看護ルポ…守る 小さな命の鼓動(2010年12月9日)
- 子どもの急病(5)ドクターヘリが機動力(2010年12月10日)
- アトピー性皮膚炎(1)病院転々 治療まちまち(2010年12月14日)
- アトピー性皮膚炎(2)ステロイドの誤解を解く(2010年12月15日)