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動物愛護管理法:改正を考える/下 販売時の説明、必要性は

 ◇業者「義務づけ、非現実的」/専門家「今でも不十分」

 「野菜ばかり食べさせてます」「ケージにわらを敷いて飼っています」

 ウサギを専門に扱うペットショップ「うさぎのしっぽ横浜店」(横浜市磯子区)では、飼育用品を買いに来た客に飼い方を尋ね、こんな答えをされて驚くことがある。店員はそのたびに「小さいときはペレット(ウサギ用の餌)を食べさせてください」「わらでなく、すのこを敷くのが一般的ですよ」と指摘する。

 食べ物や住環境は、ペット業者が動物を販売する際の基本的な説明事項。首都圏に3店舗を経営する町田修社長は「そんなことを知らない飼い主がなぜいるのだろう」と首をかしげる。

 「うさぎのしっぽ」では、販売時の事前説明に少なくとも1時間半から2時間を割いている。飼育環境が整っているかを確認し、ウサギの生態や飼育用品を説明。店内で抱き方も練習し、最後に書面にサインをもらう。

 ペットブームの広がりで、人間が飼育する動物は多様化している。最近ではウサギのほかにもフェレットやモモンガなどの小動物が人気だ。町田社長は「犬猫より飼い主の少ない小動物は飼育方法を周囲に聞くことが難しく、診断できる動物病院も少ない。きめ細かな説明が飼い主の安心につながる」と話す。

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 動物愛護管理法はペットブームを背景とした05年6月の法改正で、ペットショップなどの動物取扱業に関する規制を強化した。販売する際にはその動物の特性や飼い方を書面で示しながら説明した上で、その書面に署名をもらうことを業者に義務づけた。

 しかし、業者の間には「さまざまな動物がいるのに、一律に説明を義務づけるのは現実的でない」との声があり、次の法改正に向けた議論では「販売時説明義務の緩和」が主要課題の一つに浮上している。

 2万2000ある業者の3割弱が加盟する全国ペット協会(ZPK、東京都杉並区)は08年3月、1000業者を対象に、事前説明に関するアンケートを実施した(回答数436件)。犬の販売時の説明時間は「30~60分」が58・1%と最も多く、「30分以内」が30・5%、「60~90分」は9・0%。猫もほぼ同じ傾向だった。

 これに対し、小動物は73・0%の業者が「30分以内」と回答。「30~60分」は23・8%、「60~90分」は3・2%にとどまった。

 ZPKは「事前説明は時間もかかり大変だが、業者の責務。今後も十分行うべきだ」としている。

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 犬猫以外の動物を飼う側からは、規制緩和に不安や不満の声も上がる。

 1級愛玩動物飼養管理士でフリーライターの大野瑞絵さんは「今でも販売時の説明義務が順守されていると言えない」と訴え、インターネット上で規制緩和に反対する署名を集めている(http://www.shomei.tv/project-1610.html)。

 署名と同時に実施している犬猫以外の飼い主へのネットアンケートには「エサの適量が分からず太らせてしまい、足の関節を悪くしてしまった」「去勢手術のことを教えてもらえなかった」「鳴き声やにおいについての説明がなかった」--など、事前説明の不足をうかがわせる経験談が寄せられている。

 大野さんは規制緩和が飼育放棄を増やすのではないかと懸念。「購入時に飼育上のリスクを知らされず、飼い始めてペットを持て余す飼い主もいる。十分な説明を聞き、書面に署名するという行為で、飼う覚悟が生まれる」と訴える。【水戸健一】

毎日新聞 2010年10月26日 東京朝刊

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