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陸羯南 [著]有山輝雄

[掲載]2007年6月17日

  • [評者]赤澤史朗(立命館大学教授・日本近現代史)

■政論を書く新聞経営者とは

 陸羯南は、明治中期の日本新聞社の社長兼主筆であり、気骨のあるリベラルなジャーナリストとして知られている。陸羯南については彼の思想が、その時代状況といかに切り結んでいたのかを中心に描かれることが多かった。これに対し本書は、陸が政局から独立した政論を書く主筆であったことと、一つの新聞の経営者であったことが、どんな風にその内側で結びついていたのかを追究している点でユニークなのである。

 陸の新聞経営の背後には、谷干城、近衛篤麿などの同志的なパトロンがいただけでなく、時には藩閥政治家の品川弥二郎の資金援助もあったという。このパトロンの保護は、一方でさまざまな政治勢力から距離を持つ批判を可能にするとともに、パトロンとの政治判断の相違から難しい立場を生み出すことになる。

 そんな彼には、海千山千の「策士」としての面があったと、ライバルの徳富蘇峰は指摘していた。しかしその陸も、新聞大衆化の時代の波には、うまく対処できなかったようである。権力からも大衆からも一定の自立性を持ったジャーナリズムを目指した陸羯南の理想は、今日でも未解決の課題として残っているといえよう。

表紙画像

陸羯南

著者:有山 輝雄

出版社:吉川弘文館   価格:¥ 2,205

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