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防衛省は、陸上自衛隊の定員を現在の15万5千人から1万3千人も増やし、宮古島以西への部隊配備を視野に入れ、南西諸島を含めて2万人に増やすことを検討している。現在の沖縄本島の2千人規模の駐留を約10倍にする計画だ。
なぜこの時期なのか。尖閣諸島の領有権をめぐって高まる中国との関係悪化を背景とする防衛力強化を狙いたいようだが、外交による日中間の懸案改善を二の次にして部隊規模拡大が先走る乱暴な議論だ。
沖縄周辺に新たな緊張を生み出すことは不可避であり、外交による平和構築を放棄したとも取れる軍備拡大は撤回すべきだ。
陸自の増員は沖縄が本土に復帰した1972年の千人が最後で、当時の18万人以来、隊員数は減り続けてきた。今回の大幅増強構想は、定員削減圧力にさらされる陸上幕僚監部の意向が強く働いている。制服組の組織防衛丸出しの独走に歯止めをかけるのが内局や政治家の役割のはずである。
周辺諸国との緊張をいたずらに高めることが自衛のためになるのか。計画がそのまま防衛計画大綱に組み込まれるならば、国家としての文民統制(シビリアンコントロール)の根幹が問われる危険な事態に発展する。
ソ連を脅威と位置付けた北方重視の陸自配備は、東西冷戦の崩壊によって転換を迫られた。米軍も同様だが、自衛隊も常に新たな脅威を意図的にアピールし、軍備増強を図ってきた。脅威を掲げ、沖縄への基地集中につなげる軍事優先の思考回路は変わらない。
90年代中盤以降、北朝鮮や中国を脅威と位置付けて西方重視を強調した上で、さらに南西諸島重視戦略に転換してきた。防衛省は2011年度からの新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画で島しょ防衛強化を前面に掲げ、宮古、石垣、与那国島に陸自配備を明記し、規模についても一気呵成(かせい)に増やすことをもくろんでいる。
配備増強の前提となる「脅威」の実態について立ち止まって考えたい。
そもそも、中国の軍事力増大は海空戦力に傾いており、宮古、八重山の島しょ部に上陸して侵攻する戦闘形態は考えにくい。ミサイル攻撃や空軍力を背景にして押し寄せるなら、陸自の歩兵部隊が抑止力にもなり得ない。陸自大幅増強は、軍事合理性の面からも的確性を欠いているのは明らかだ。
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