2010-03-20 12:43:34

皇室のメンタルヘルスとメンタルタフネス

テーマ:徒然記
「もし、日本の精神科医がみんなカウンセリングの研修を受けたとしたら今の精神医療は変わると思いますか?それともカウンセリング云々だけではこうした現状はかわらないのでしょうか?」という質問のメッセージをいただいた。

確かに、日本の精神科医のカウンセリングのトレーニングはひどい。ほとんど(例外は2つか3つしかなくなった)の精神科の医局が生物学的精神医学の人間が主任教授をやっていて、まともに医局でトレーニングを受けられるところはほとんどない。

拙著『精神科医は信用できるか』のアマゾンでの書評欄でも精神科医と思しき人間から、こてんぱんに叩かれているが、その内容と言うと発売中止(発売禁止ではない)になった薬をいい薬(実際、鎮静作用の割に副作用が少なく、高齢者に使いやすかったので、発売中止は残念だ)紹介しているだけで、この医者(私のこと)が信用できない医者とわかるというようなことを書いたり(この医者の判断の基準がこんなものであれば、患者のほうが可哀想だ)、人間を対象にした研究は意味がない、動物実験だけがすばらしいというようなことを書いたり、この書評をみるほうが精神科医が信用できないようになるものが多かった。

ある程度カウンセリングや心の治療を習っているほうが、人の心もつかみやすいし、第一、患者さんの話を聞けるようになる。私にしても、人の話を聞くような人間ではなかったが、精神分析を学んだり、とくに留学してから人の話が聞けるようになったのだ。

ただ、カウンセリングを学んだだけで、精神医療が劇的によくなるかというと、実は私はそうは思っていない。

日本の場合、精神分析の世界でも大御所のような人でもずいぶん独善的な人もいる。また、心の治療というのは、ただ習うだけでできるようになるものではない。私にしても、アメリカに行って患者の体験をしたことで、急激に患者さんの気持ちがわかるようになったし、患者さんの話も聞けるようになった。日本の精神科医に(何科の医者でもそうだが)決定的に足りないのは、自分が患者になる体験だ。

また、保健医療の問題もある。話を長く聞いても、短く打ち切っても入ってくる金はまるっきり変わらない。人の話をろくに聞かない、聞けない、生物学的精神医学の人間のほうがはるかに収入が多いし、1時間に10人以上も通院精神療法を保険請求する医者もいるらしい。ゆっくり話を聞くほど損という現行の保健医療のシステムを変えないと、トレーニングだけで解決するとは思えない。

さて、最近、精神科医というだけの理湯で、愛子さまの不登校がらみの取材が多い。

一つ思うのは、皇室関係のメンタルヘルスだ。あれだけ公にさらされ、あれだけ世間と違う因習に縛られて生活しているのに、昔と違って、民間の人が身内になっている。

そう考えるとそのメンタルヘルスは重要だ。

実際、昔の宮内庁の人たちは思慮もあったし、皇室の人たちのことを心から考えていた。

現皇后陛下が心の具合が悪くなった際も神谷 美恵子さんというその時代きっての精神科の名医をつけたし、そのことも事実上オープンにされた。

そして、当時の皇太子妃は、徐々に心の健康を回復された。

さて、その後、皇后になられてからも、心の病が問題になることはなかったが、某週刊誌が批判記事を書いた際に、声が出なくなるという古典的なヒステリーの症状を発症された。

そこで、マスコミと宮内庁は、その批判記事を書いた週刊誌をボロクソに叩いた。

しかし、精神科医の私に言わせると批判されるべきは宮内庁のクソ役人だ。

精神科の主治医が亡くなると、その信任が厚いほど、トラウマになってしまう。それを乗り越えたとしても、何かのストレスですぐに心の病を発症してしまう。要するに皇室が神谷さんが亡くなった後のフォローをきちんとしなかったから、そんなことになったと考えるのが通常の筋だ。

批判記事にしても、日本のマスコミは抑えられても海外のメディアは抑えられないし、ましてやインターネットの時代にそんなものを抑えられるはずはない。

皇室の人間に閲覧を禁止するというのも非現実的だろう。

だとすると、批判されても大丈夫なメンタルタフネスを保てるような方法論を考えるのが宮内庁の仕事のはずだ。

メンタルタフネスなどという言葉を使うと、心臓に毛の生えた人間になるようなトレーニングでもさせるように思われるかもしれないが、コフート学派の精神分析の考え方では、打たれた際にきちんとフォローしたり、頼りにできるメンタルヘルスのプロフェッショナルを用意するということだ。雅子さまだって、おそらくは大野先生がその受け皿になっているから、いろいろと批判されても一定以上病状が悪くならないのだろう。

愛子さま問題にしても、宮内庁はいろいろな原因を外に求めて、愛子さまのメンタルヘルスを守る手立てをとっているように思えない。実際、雅子さまの大野先生にしても、小和田家の知り合いだったという話を聞いている。

宮内庁の役人がアホな上に皇室の人々の心の健康を考えないから、こんなことが頻発するのだろう。

ただ、そういうものがなくても、タフな人はタフだ。秋篠宮妃などはそんな印象を受けるし、あくまで伝聞だが(それでも学習院に子供を通わせている人からの一次情報だが)、娘さんは二人とも、相当メンタルにタフな人のようだ(これ以上は書けないが)。

宮内庁がしっかりしないのなら、元々タフな人をお妃にするしかないのだろうか?ただ、娘さんの噂話を聞く限り、タフすぎるのもどうかと思うし、その弟が同じくらいタフな天皇陛下になるというのも、ちょっと不安を感じてしまうのだが。