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台湾海峡・最前線:融和の裏の攻防/中 情報戦、網軍の脅威

 ◇情報戦、網(ネット)軍の脅威

 台湾国防部(国防省)の報道官が、記者会見で中国からのサイバー攻撃の頻度を質問された時だった。ややあきれた表情を浮かべた報道官は、こう答えた。「当然、毎日だ」

 指揮系統の破壊や機密情報の窃取、サイバー攻撃などの情報戦で「台湾の優勢」を保つため、台湾国防部は04年に「情報電子作戦指揮部」を創設した。絶え間なく続くサイバー攻撃にも、国防部は対処可能としているが、台湾の民間機関はそうもいかない。04年7月には軍事関連メディアなど約30のサイトが攻撃に遭い、表題を「2020年台湾統一」などと書き換えられた。

 台湾の情報機関である国家安全局は昨年3月、「台湾の政府機関が08年に中国から受けたサイバー攻撃は3100回を超えた。目的は機密情報の窃取だ」と指摘した。台湾外交部(外務省)の幹部は「台湾の役所は中央も地方も、職員1人がパソコン2台を所有し、外部と内部のネット環境を完全に分離している。中国への情報漏えい対策だ」と明かす。

 台湾を警戒させるのは、中国の「網軍(ネット軍)」の存在だ。台湾国防部によると、網軍は情報戦に対応する組織で99年に設立され、コンピューターウイルスや戦術・戦法の研究開発も行っている。その存在が「評価」され、本格的に組織化されたのは、01年に中国・海南島沖の南シナ海上空で米中の軍用機が接触した事件がきっかけだ。中国の複数のハッカーが米軍のサイトにサイバー攻撃を仕掛け、中国旗の掲載を成功させたとされる。

 台湾国防部は「網軍は軍民一体で資源と人材を集結させ、巨大なサイバー攻撃の能力を持つ」と分析。規模は数十万人とも言われる。台湾の軍事関係者は「網軍にはコンピューターを専門とする米国留学組もスカウトされており、給料は日本の自衛隊や台湾の軍よりも高い」と話す。

 一方、国家ぐるみでサイバー攻撃に関与しているとの批判に、中国国務院(政府)新聞弁公室は「事実無根だ」と反論している。また、中国湖北省公安庁は今月6日、インターネットを通じて他人のコンピューターに侵入する技術を提供したとして、05年に開設された会員制サイト「黒鷹安全網」(会員17万人余)を摘発したと発表、取り締まり強化の動きを見せている。

 情報戦に関しては、中台間では「ほぼ同レベル」との見方が一般的だ。根拠は「台湾のハイテク企業は中国でも事業展開しており、情報戦に使う電子部品は中台が同じものを使っている場合が多いから」。軍事関係者は笑いながら説明するが、台湾の防衛においては見逃せない問題だ。【台北・大谷麻由美】

毎日新聞 2010年2月24日 東京朝刊

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