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広がる「竹島」授業/小中学校9割超で実施

2010年02月22日

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竹島についての授業で、地図上の竹島の位置を指さす児童=松江市西川津町の市立川津小

◆明日「竹島の日」/歴史認識・国際協調、バランスに苦心◆

 日韓両国が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)について授業で取り上げる動きが、県内の小中学校で広がっている。県教委は昨年5月、竹島に関する副教材のDVDと指導案を独自に作成し、公立小中学校の9割が今年度、活用する見通しだ。22日に迎える5回目の「竹島の日」を前に、現状を追った。(玉置太郎)

 「3日後の22日は何の日か知っていますか」。19日、松江市立川津小であった5年生の社会科授業の冒頭、石川和代教諭(51)が尋ねると、約40人の児童らは顔を見合わせ、首をかしげた。

 地図帳を開き、各自が竹島の位置を探す。県教委が配布した副教材のDVDを上映し、竹島でアシカ猟が盛んだった時代の写真や、アワビ漁の経験がある漁師のインタビュー映像を見た。石川教諭は「今、竹島で漁ができなくなっているのはなぜでしょう」と問いかけ、歴史的経緯や韓国が警備隊を置いて実効支配している現状を説明。児童らは「どうして日本はそのままにしているのだろう」「韓国と話し合って、二つの国のものにすればいい」など、様々な意見を発表していた。

 同校は副教材の配布を受け、今年初めて5年生の1コマを使って竹島を取り上げた。担任教諭3人が話し合い、韓国への敵対心だけが強調されないよう、以前児童と交流した市国際交流員の母国であることにも授業で触れた。石川教諭は「歴史認識と国際協調をバランスよく伝えることに注意した。子どもたちが竹島について何も知らない真っさらな状態だからこそ、どう教えるかが重要になると実感しました」と話す。

      ◆

 県教委は今年1月、県内の全公立小学校251校、同中学校104校にアンケートし、竹島に関する学習を今年度実施したかどうかを調べた。「複式学級のため今年度は行わない」と回答した小学校17校を除く全小学校(93%)とすべての中学校が、「行った」「行う予定」と回答した。2006年度のアンケートでは、実施したと答えた小学校は56%だったが、07年度69%、08年度79%と年々増え、中学校は06年度以降、90%台で推移している。

 また、副教材のDVDは小中学校のそれぞれ91%が「活用」と回答。今月12日には副教材を使った指導方法を考える研究授業が安来市で開かれ、教育関係者約50人が参加した。県教委義務教育課の板倉富士夫指導主事は「全国に先駆けて竹島学習に対する教員の認知が広がっている」と評価する。

 全国の中学校でも12年春から、授業で竹島について取り扱う動きが広がる見通しだ。文部科学省が08年7月に公表した中学社会科の新学習指導要領の解説書に「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要」と、初めて「竹島」の文言を盛り込んだためだ。

 しかし、これに対する韓国側の反発は大きく、公表後、自治体や民間の交流事業で中止や延期が相次いだ。昨年末、同省が公表した高校地理歴史科の新指導要領解説書は「竹島」とは明記せず、「中学校における学習を踏まえ」という表現にとどめた。

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 日本政府が主張する竹島の住所は「隠岐の島町竹島官有無番地」。地元の同町教委は07年に作成した小中学校向けの副教材「ふるさと隠岐」に、竹島をめぐる日韓の歴史や、竹島に出漁した島民の証言などを9ページにわたって盛り込んだ。

 編集委員長を務めた町立布施中の常角敏教頭(51)は「隠岐の子どもたちにとって、竹島問題は郷土史の一部でもある」と話す。担当する社会科の授業では、江戸時代の水産業の発達や敗戦後の領土問題など、さまざまな場面で副教材を開かせ、竹島とのかかわりを説明する。

 「複雑な領土問題だからこそ、事実を子どもたちに示し、どうすれば解決できるかを学習のなかで問いかけていくことが必要です」。常角教頭は竹島の日、県など主催の記念行事で国会議員ら4人とともにパネル討論に臨み、そう訴えるつもりだ。

◎キーワード◎

 竹島の日 1905年2月22日、政府の決定を受けた県が竹島の帰属告示を出して100年になるのを記念し、05年3月、県条例で定めた。県は毎年2月22日に合わせ、研究者や国会議員らを招いた記念行事を開いている。

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