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ネットの向こうの中国(29)「ツイッターは勝利した!」

コラムV 2010/02/15(月) 08:14
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  前回、中国の人権活動家、馮正虎氏がミニブログ「Twitter(ツイッター)」、中国語では「推特(Tui Te)」を武器に成田空港で籠城を続けた話を紹介した。メディアでも報道されたように、12日(金)午後、馮氏は無事帰国を果たした。現場に行かなかった筆者も、刻々と何が起きているかをリアルタイムで知ることができたのは、やはりツイッターのおかげだった。

  この日は午後から仕事で、職場に着くとすぐにツイッターに接続した。彼の動向を知りたいと思い「馮正虎」で検索すると、タイムライン(書き込み一覧)には驚くべき量の情報が流れていた。ものの1分もしないうちに、「新しいツイートが89件あります」といったように、大量の投稿がたまっていき、全く追い切れない。大勢の「推友」(ツイッターユーザー)が直接上海浦東空港まで出向き、馮氏の帰国の一部始終をツイッターで中継し、これがあちこちで転載されているのだ。彼らは、馮氏が無事帰国できるかどうか、この目で確かめるとともに、全国の推友たちに動向を伝えに来ているようだった(写真はネットで公開された推友たちの様子)。

  このうちの1人、広州の活動家、北風氏によれば、彼やジャーナリストら10人以上の推友が現場で中継した。どうやら、彼らはiPhoneなどを使い、空港内の無線LANに接続して情報を発信していたようだ。彼らは直接馮氏に会えなかったようだが、入国したという情報を得て、北風氏は「馮正虎は勝利した!ツイッターは勝利した!インターネットは勝利した!メディアは勝利した!」と興奮した様子で書き込んでいる。

  いったい、この日だけでどれだけの発信があったのか、グーグルで調べてみた。ツイッターのサイトに限定し「馮正虎」で検索した結果、多少ばらつきはあるが約2万5000件がヒットした。「1年以内」の累計が約6万4000件なので、40%近くに達している。同じく、ツイッターで使われる検索用タグ(ハッシュタグ)「fzhenghu」で検索したところ、この日だけで3万8400件、1年以内では7万3300件だった。ちなみに、ツイッター以外も含むサイト全体では、「馮正虎」のヒット数は当日だけで約10万件、1年以内では105万件だった。

  今回の馮氏の帰国について、中国国内のメディアはまたもや沈黙を守った。当局に忠実な「百度」の「新聞」で検索すると、中国国内の報道はおろか、海外メディアの報道も一切表示されない。谷歌(グーグル中国)が米VOAの報道などを表示しているのと対照的だ。

  中国国内メディアが全く報道しないニュースを、ツイッターでは3万件もの情報が発信されている。しかも発信者は「公民記者」と呼ばれる、政府が発行する正規の記者証を持たない民間人である。これは、情報を管理したいと考えている側にとっては、全く「目にしたくない」(中国政府がよく使う表現)事態だろう。

  私自身、ツイッターを使い始めて間もないが、当初は中国の友人が熱中しているのを見て、なぜそれほど魅力的なのか、分からなかった。だが今回の馮氏の一連の事件を通じて、その潜在力を認識した。

  日本ではツイッターは「〜なう」と自分が今何をしているか発信したり、有名人の発言が見られるのが人気のようだが、中国の網民(ネット市民)にとって、ツイッターはBBS、ブログ、インスタントメッセンジャーなど従来のネットツールの「いいとこ取り」をしているのが最大の魅力のようだ。

  ツイッターと似ているのがメッセンジャーだが、基本的に1対1で使うことが多く、不特定多数のユーザーが参加し議論する場ではない。一方、人民網「強国論壇」のようなBBSは、不特定多数が参加できるが、匿名投稿が前提で、感情的で無責任な書き込みも多い。だがツイッターはブログ同様発言者が特定される分、信頼性も高く、著名なオピニオンリーダーが何を考え、発言したのか瞬時に知ることができるし、ブロガーが“主人公”のブログとも異なり、多数のユーザーが対等な立場で、特定の話題について意見や情報を交換できる(さらにこちらから巡回しなくても、新しい発言があれば、ブラウザに表示されるのも魅力だ。情報収集のため複数のサイトを毎日巡回するのは、結構疲れるのである)。

  要するに「他人が何を考えているか知りたい」「自分の考えを人々に伝えたい」「あるテーマについて議論したい」と考える中国の網民にとって、これほど便利なツールはない。

  筆者も長平氏や艾未未氏らをフォローしているが、ツイッターは中国のオピニオンリーダーらが時空を超えて集うことができるいわば議会のような場であり、強力な世論形成機能を秘めている。ある意味、1979年の西単「民主の壁」や1989年の天安門広場に匹敵すると言ってもよいのではないか。

  だが当局にとって、これは恐るべき事態だ。現在は表向きのアクセスは制限されているとはいえ、実際には放任状態にあるが、将来必ずや何らかの強力な手段をとるだろう。筆者としては、この貴重な公共空間が存続することを願うのみだ。(執筆者:内藤康 中国ウォッチャー  編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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