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ネットの向こうの中国(28)馮正虎さん、ツイッター武器に籠城

コラムV 2010/02/08(月) 09:07
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  中国政府に帰国を拒否されたことに抗議し、成田空港の入国審査前の制限エリアで“籠城生活”を続けていた上海出身の人権活動家、馮正虎氏がこのほど、92日間にわたる抗議活動を終え、日本に再入国した。日本では無名に近かった彼を支えたのは、国内外の1万5000人近い「ツイッター」ユーザーだったことはあまり知られていない。

  彼の800を超える「つぶやき」は、一中国人の孤独で無謀に思えた戦いが、世論を動かす大きな力に発展した過程を物語る貴重な記録となっている(写真は馮正虎さんのツイッター)。

  民主化運動に関わったことで逮捕歴もある馮さんは、昨年、8度も中国へ帰国を試みたが拒まれ、日本行きの飛行機に乗せられたことに抗議、日本への再入国を拒み、11月4日籠城を始めた。ツイッターによる発信を始めたのはその数日後だった。「中国国内にいる友人から勧められて始めた。それまでツイッターを知ってはいたが、使ったことはなかった」という。

  「携帯を使って自分の状況を皆さんにお伝えしようと思う」「日本国門(国境)外での生活も10日になった。食事もなく、衣服も換えず長いすで寝ている。身体を洗うことも、パソコンでネットもできず、携帯が使えるだけ」(11月13日)

  やがて彼の活動を知った香港の知人らから食料の差し入れなどが入り、世界各国から支援のメッセージが携帯に寄せられるようになった。「とても感動した」(14日)

  初めてメディアの取材を受けたのも同日、英フィナンシャル・タイムズと日本の大手紙だった。

  帰国カウンターの手前に陣取り、プラカードなどを置いて主張を展開する馮さんは、到着する各国の旅行客や、乗務員らの注目の的となる。

  「2人の台湾のスチュワーデスから声をかけられた。『いつもこの前を通っていたが、あなたがお腹をすかせているとは知らなかった。中国はどうして自国民を帰国させないの? こんなことがあっていいの?』」

  「彼女らは手提げからパンや肉まんをくれた。私は『今は食べるものがあるから』と断った。『だめ、これは新鮮だから。飛行機に乗る前に台湾で買ったんです。もらって』私は感謝して受け取った。人々の温かい心を感じた」(19日)

  (ご存じのように、ツイッターは140字の制限があるため、長い話は分けて投稿している)

 海外からの差し入れにより十分な食料や着替えなどを得た彼は、このまま逗留を続けることを決意。

  「カナダのスチュワーデスが差し入れしてくれたのはミネラルウオーター、ビスケット、サラダ(中身はキュウリ、レタス、ニンジン、タマネギ、トマト、鶏肉)。25日目にして初めて新鮮な野菜を食べた」―彼はもらった食品の中身や味まで事細かく書いている。「自分の状況を人々に詳しく伝えるため」だったと、私の電話取材に答えてくれた。

  「とうとうネットにつながった」(29日)「皆さんありがとう、私はもう1カ月分の食料があります。しばらくは差し入れは結構です。」(30日)最終的に彼の“食料備蓄”は2カ月分に達したという。

  日本のメディア以外にも、CNN、CBS、VOA、BBC、仏フィガロ…、彼を取材するメディアはますます増え、12月31日の書き込みには「世界の主要な新聞、テレビ、ラジオ、はみな報道してくれた。一体何社の海外メディアが報道したか、はっきりしない。はっきりしているのは中国の政府系メディアは1社も報道していないことだ。だが国内のネットは封鎖するのは困難で、私の帰国問題を知る国内の人はますます増えている」。国内ではほとんど報じられなかったが、ツイッターを通じて支援の輪はどんどん広がっていった。

  書き込みで一番多いのが、入国管理局や空港職員とのやりとりだ。馮氏のもとには、毎日「上陸審査場にとどまることはできない。業務に支障をきたすので、退去してほしい」との入国管理局からの文書が届けれられ、計60通に達した。

  だが、決して対立していたわけではない。ソファーで横になっていたら空港職員が慌てて駆けつけ「大丈夫か」と声をかけてくれたと紹介、「確かに私は彼らに迷惑をかけている。日本の警察も私の事を気にかけ、しばしば巡回し、毎晩挨拶し、おしゃべりをする。私の境遇に同情し、体の心配をし、一日も早い帰国が実現することを願ってくれる」(12月9日)と対応に感謝している。

  馮氏の毎日は規則正しかったようだ。「7時に起床し、(掲示板の)逗留日数を更新、宣伝道具を並べ、トイレで洗顔、水を沸かし、食事をする。朝食の前に15分ほど運動をしている」(12月20日)

  「逗留がこのままずっと続くことに不安を感じなかったのか」と先日馮氏に聞いた。「90日でも、900日でも続けるつもりだった。なぜなら私の支持者はますます増え、困るのは中国政府の側だったからだ」

  その言葉の通り、1月2日にはツイッターのフォロアーが1万人を突破。最終的には1万5000人に達した。「彼らはブログなどで私の動向や主張を知らせてくれたおかげで、私のことを知っている人は数百万人いただろう」と馮氏は私に語ったが、その言葉の通り、中国のブロガーは「馮正虎現象」という言葉で彼に対する支持と関心の広がりを紹介した。

  中国政府もついに動き出した。1月25日には領事ら大使館員2人が空港を訪問、馮氏と面会、「私の体の状況について尋ね、私の要求を聞きたいと言った。私は感謝を述べ、自分の考えを伝えた」「双方の雰囲気は和やかで、お互いを尊重した。逗留83日目になり、日本政府の職員の後、ようやくやってきたが、私はそれでも感謝している。自分の国の役人がとうとう責任を果たし、現実を直視してくれたのだ」

  大使館員との面会は先々週だけで3回に及び、「彼らの誠意を感じた」馮氏は籠城を終えることを決意、ツイッターで発表すると、瞬く間に転載され、祝福のメッセージも書き込まれた。昨年頃から、中国を出国した活動家が帰国を拒まれたり、海外のシンポジウムへの参加を妨害されるなどの事件が相次いでいたことから、馮正虎氏の境遇は他人事ではなかったようだ。

  今回の件について、北京の作家、劉檸氏は「今回の事件の解決の過程で、ツイッターの果たした役割は非常に大きく、主流メディアによるニュースの独占を打破した」と高く評価するとともに、「まさにそれゆえに、政府のツイッターに対する封鎖はますます厳しくなっている」と指摘している。(執筆者:内藤康 中国ウォッチャー  編集担当:サーチナ・メディア事業部)

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