最終更新: 2010/01/21 21:05

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米・オバマ大統領就任から1年 戦争長期化で兵士の心や体の傷が社会問題化しています。

熱狂的な就任式からまる1年。「チェンジ」の実行力に疑問符がついたオバマ大統領は、支持率が急落中です。中でも長期化する戦争で、兵士が受ける心や体の傷が社会問題化し、「オバマの戦争」への批判が高まっています。

2009年、閉塞(へいそく)状況にあったアメリカが、7割近くの驚異的な支持率で期待を寄せたオバマ大統領。
しかし、拡大したアフガニスタンでの戦争は、泥沼の様相を見せ始めている。
2009年末に発覚したテロ未遂事件では、アルカイダの拠点が、中東イエメンにできていたことも明らかとなった。
戦争継続の姿勢を崩さないオバマ大統領は7日、「われわれはアルカイダと戦争をしている」と述べた。
しかし、そこには、兵士たちが直面する現実があった。
東部メリーランド州に住むマーク・グワスミーさん(39)は、元海兵隊員。
ブッシュ前政権が始めたイラク戦争に、2度にわたって派遣されたグワスミーさんの任務は、最前線での偵察やパトロールなどだった。
そしてグワスミーさんは、武装勢力とアメリカ軍が正面からぶつかり、激しい市街戦へとエスカレートしたイラク戦争での激戦、ファルージャの戦闘にも投入された。
そこでグワスミーさんが遭遇したのは、武装勢力がアメリカ兵などを狙い、砲弾などを改造して路肩などに仕掛けた「IED」と呼ばれる簡易爆弾だった。
グワスミーさんは、その爆発に数回遭遇したという。
グワスミーさんは、「その時、体が完全に宙に舞ってひっくり返りました。コンクリートで頭を強く打ったんです」と語った。
分厚い防護装備などのおかげで、けがは右足骨折だけで済んだはずだった。
しかし、帰国したグワスミーさんは1年後、突然、ある発作に襲われた。
グワスミーさんは、「まったく、何もわからなくなることがある。目は開いているらしいんだけど、体がまったく動かなくなるんです」と話した。
診察の結果、病院が下した診断は「TBI(外傷性脳損傷)」というもの。
表面的な傷はないものの、爆発など強烈な衝撃波が頭部を直撃し、脳神経を損傷するというTBIでは、記憶障害などが引き起こされるという。
さらにグワスミーさんは、ストレス障害の一種であるPTSD(心的外傷後ストレス障害)も併発。
けん怠感や不眠に悩まされ、今でも時々、言葉を発することができなくなるという。
グワスミーさんは「(帰還後の)2006年になってから、そういう症状(体が動かない・記憶障害)を体験することが増えました」と話した。
しかし、こうした症状に即効的な治療はないとされ、現在は、発作を周囲に知らせる介助犬とともに暮らす日々を送る。
実は、このような帰還兵のケースは、特別ではないという。
ジョージタウン大学医学部精神科のボニー・グリーン教授は「イラクやアフガニスタンからの帰還兵は、非常に高い率で、うつ病やPTSD、TBIを発症します。しかも併発して起きるのです」と語った。
国防総省も、TBIは気づきにくい形で広がりを見せているとし、一部には、イラク戦争以降、10万人以上の兵士が発症しているのではとの見方もある。
前政権が残した帰還兵のTBI問題は、アメリカで大きな問題となりつつある。
しかし、2009年12月、オバマ大統領は「わたしは最高司令官としてアフガニスタンに3万人を追加派兵することが、極めて重要な国益だと判断した」と述べ、2010年夏までにイラクから撤退する一方、これまで900人余りのアメリカ兵が死亡しているアフガニスタンに、新たな増派を決定した。
そのアフガニスタンでは、現在でも「IED」による攻撃が続いている。
オバマ大統領の戦争に投入される兵士たちが直面するこうした現実は、新たなTBI問題を生み、戦争反対の声を一層強めることになる。
折しも19日、アメリカ・マサチューセッツ州で行われた上院の補欠選挙では、圧勝を予測された与党の民主党候補が、共和党候補にまさかの逆転負けをした。
国内政策の目玉「医療保険制度改革」にも、黄色信号がともった。
感動の就任式からわずか1年。アメリカが期待した大統領の変革はどこへ向かおうとしているのか注目される。

(01/21 02:36)


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