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ごはんのよさを見直そう

                                   TOSS SANJO 齋藤 一子
第1回たくみ講座in三条で行った模擬授業。ごはんや和食について学習する単元の導入の授業。
後藤一則氏のフラッシュを編集して使用している。授業用CDを希望される方はこちらをクリック
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<発問指示>
発問1 〈クリック〉誰ですか。
イチローです。
発問2 〈クリック〉では、この人は?
高橋尚子です。
発問3 〈クリック〉この人は?
 田村亮子です。
発問4 3人とも超一流のスポーツ選手。この3人の大活躍を支える共通の食べ物があるのです。
    その食べ物とはなんでしょうか。
 指名して聞く。
説明1 それは、ごはんです。〈クリック〉例えば、イチローは試合の前に必ずおにぎり2個食べる。イチローのすごさの    ひみつでは、と、まねしだした大リーガーもいたほどです。高橋選手、田村選手も熱烈なごはん党です。
発問5 一流のスポーツ選手から大切にされているごはんですが、今から50年前は悪口を言われていました。
     〈クリック〉
    「ごはんを食べると、□。」
   あとにはどんな言葉が入るでしょう。ノートに「ごはんを食べるとなになに・・・」と書きなさい。
 指名して聞く。
「ごはんを食べると太る」「ごはんを食べると栄養のバランスが悪い」「ごはんを食べると胴が長くなる」など。     
説明2 当時いわれていた一番はこれでした。〈クリック〉読みます。さんはい。   
   「ごはんを食べると、ばかになる。」
    〈クリック〉「米食低脳論」です。アメリカやヨーロッパの人に比べて、日本人が小さいのは、ごはんのせい。ごはんばかり食べると体だけでなく、頭も悪くなると言われました。「ごはんは残しても、おかずをたべろ。」ともいわれました。
発問6 この悪口は、当時のひとたちの食生活に影響があったでしょうか。
あった、なかった、で挙手させる。
発問7 50年前といえば、みなさんのおじいさんおばあさんの子どもの頃です。給食もありました。〈クリック〉 ごはんですか。
 聞く。パン給食の画像  
説明3 〈クリック〉月曜から金曜まで、毎日パンが主食でした。ごはんのもと、米が日本にないわけではなかったのにです。パン給食は20年間続きました。
    〈クリック(食生活のグラフ)〉そのころの食生活です。お米が半分をしめていました。
    その割合は現在こうなっています。〈クリック〉
発問8 グラフを見てわかったこと気づいたこと思ったことをノートに書きなさい。
     (修正:大きく変わっているところはどこですか。←米の部分の変化に焦点づけたいときはこう発問する。)
説明4 悪口は根も葉もないことでしたが、ごはんばなれが進んでしまいました。
説明5 さて、今から100年前、明治時代、日本人の食事に大変驚いた人がいました。
   〈クリック〉その人はベルツ博士。ドイツから日本に栄養学を教えに来て、大きな影響を与えた人です。〈クリック〉
   ベルツ博士は、東京から110km離れた日光に旅行することになりました。〈クリック〉
   なにせ、110km、ここ三条から新潟市までの4倍もある距離です。〈クリック〉
   ベルツ博士はとちゅう馬を6回も交換し18時間かかってやっとつきました。〈クリック〉
   もうひとりの人は、人力車を使いました。
発問9 馬と人力車どちらが早くついたと思いますか。(挙手で確認)
説明6 人力車はなんと10時間。それも交代なし。馬の約半分の時間でついてしまいました。<クリック>
   ベルツ博士は人力車を引く人、車夫の食事を調べました。<クリック>
   その食事は玄米のおにぎりとみそ大根とうめぼしだったのです。
発問10 ベルツ博士は、驚きました。ベルツ博士は食事のどんなところに驚いたのでしょう。ノートに書きなさい。
   おにぎりだけでそんな力がでると思わなかったから。
   肉などのタンパク質がないから。
   栄養バランスが悪いと思ったから。
説明7 肉も食べずにおにぎりだけでそんな力がでるなんて、と驚いたのです。
  そこで、ベルツ博士は食事の実験をしました。<クリック>
  人力車の車夫に80kgの荷物を40km3週間毎日引かせます。<クリック>
  おにぎりの食事と肉の食事で、どちらが長く引き続けられるか試したのです。
発問11 どちらが勝ったでしょうか。
 おにぎり、肉で聞く。
説明8 結果を見ましょう。まず肉。<クリック>3日でダウン。ではご飯は。<クリック>
    3週間ずっと続けることができました。
   
   この実験の結果の違いは、食事の栄養バランスにありました。<クリック>
   大切なのは、バランスです。
   ご飯の栄養バランスと肉の栄養バランスを見てみます。<クリック>
発問12 違いをノートに書きなさい。ご飯はなになにだが、肉はなになにと書きます。 
   ご飯・・・炭水化物が多いが、肉・・・脂質、タンパク質が多い
説明9 車夫の体力持久力を奪ったのは、脂質のとりすぎでした。
    ご飯には脂質が少なく、エネルギー源の炭水化物がたっぷりです。
    パンのようにバターを塗って脂質のとりすぎになる必要もありません。
   一流のスポーツ選手たちがごはん中心の食生活をしていることがベルツ博士の実験からわかりますね。
   ご飯中心の食事は、日本型食事といわれ、注目をあびています。
   ごはんばなれになったわたしたちです。
   ごはんのよさ、和食のよさについて学習していきましょう。
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<授業について>
 ごはん(米)は、日本人の主食だ。しかし、そのよさが見直されたのは、ここ最近のことであり、外国からの影響が大きい。
 ごはんを中心とした食事は、「日本型食事」または、「和食」と言われる。
 和食は、つぎのようなよさを持っている。
@「おかずとの相性のよさ」「そしゃくの多さ」「脂質の少なさ」「食物繊維の多さ」など、健康に関するよさ
A日本人としての食文化を伝えるよさ
B食料自給率の向上など日本の食料事情からみたよさ
 ごはんのよさ、和食のよさを学習する意義は大きい。
 本授業は、一流スポーツ選手のごはん中心の食生活、50年前当時のごはんに対するキャンペーン、そして100年前の
エピソードからなる。
 ごはんに対する評価がたった100年の間にころころかわっていることを知らせ、もう一度ごはんのよさ、和食のよさを学習
していこうという導入の授業である。
 後藤一則氏の和食のフラッシュサイトを編集させていただき、本授業用として再構成した。
(http://homepage1.nifty.com/GOTO/washoku1.htm)
 
【スポーツ選手とごはん】
1 イチローのエピソード
「朝の練習から戻ってきたばかりのイチローは、自分のロッカーの前でうずくまっていた。毎朝、夫人に作ってもらっている2
個のおにぎりのうちの1つを食べようとしていたのだ。
「おにぎりかい?」と、エドガー・マルチネスが聞いた。
 イチローは答えた。「おにぎりだよ」
 おにぎりは、中に具が入っていて大きさは野球の球よりも少し小さい。イチローは、大きく口を開けて慎重におにぎりを食
べながら、混雑したクラブハウスを上目遣いに見渡していた。
(中略 齋藤)暇さえあればしなやかな身体をさらにストレッチしたり、ピッチングの合間に外野で球を投げる格好をしてみた
りするのも、おにぎりと同じようにまだイチローがやめていない習慣である。バッターボックスに立つときの習慣は、黒いバット
を空に向かって差し出して一旦止めてユニフォームの袖を触るのだ、準備ができるまで。」(シアトルマリナーズのコラムより)
 
2 田村亮子のエピソード 
「日本ごはん党(嵐山光三郎党首)はこのほど、「第2回日本ごはん党ライススポーツ大賞」の受賞者を決定した。大賞には
史上初の女子柔道世界選手権5連覇を達成した田村亮子さん、優秀賞には中田大輔さん、川西隆由樹さん(トランポリン)、
寺内健さん(水泳飛び込み)と、関西学院大学アメリカンフットボール部、佐川急便東京支社綱引きクラブが選出された。
 『ごはんはパワーの源であり、お米のパワーとともに歩んできた柔道人生』という受賞の言葉。」
                             (農政ニュースHPより)
 
3 高橋尚子のエピソード 
「以前は食欲に任せて好きなものを好きなだけ食べていましたが、最近は少し気を遣っています。大きなレースを目指して
トレーニングを積んでいく時は「食べなくてはいけない」と思います。食べた分、走れる。
 レース直前には必ずごはんとうどんを食べます。おもちも。おもちは腹持ちがいいと聞くし、実際マラソン中のエネルギーに
なるような実感があります。
 大きなレースが終わって練習量が減ると、体重も増えてしまいます。でも、気にしないようにしています。運動量が少なくなっ
てしまうのですから仕方ないって。この時期に心も身体も休ませることも大切だと思うんです。心身ともにリフレッシュしたら
また新しい目標に向かって厳しいトレーニングに挑めます。」(京都新聞『アスリートの食卓』『高橋尚子 食事もトレーニングの一つ』)
【米食低脳論】
1885(明18)「人ハ務メテ肉食ヲ為シ植物食ヲ用ヒサルヲ要ス」
              『日本食志 一名日本食品滋養及沿革説』小鹿島果 著
1954(昭19)「そして各国ともに行き着いた結論は、『バタ食の国民に永遠清栄あり』ということである。(中略 齋藤)
然るに日本の食養法を見る時、脂油があまり) にも過少である。」
             『世界人は如何に食べつつあるかー各国比較調理術ー』東佐與子著
戦後の『食生活改善運動』
「かつて日本人が欧米人より多く摂取していたのは、米などの穀類でした。多くのアジア人がそうであったため、『でんぷんを
多く摂取するのは後進国の象徴である。』ともいわれ、米の摂取を減らすことが指導されました。エネルギーの八割近くを占め
ていた糖質エネルギーを『欧米並』に減らすのが目標でした。『お米を食べると馬鹿になる』とも言われ、学校給食では『ご飯を
残してもおかずと牛乳は全部食べなさい。』と指導されました。現在でも『ご飯を食べると太る』という誤解もあります。
 その結果、1955年前後には一人一日当たり350gも摂取されていた米は、現在ではその半分以下の160g台まで減少し
てしまいました。」
             『伝統食の復権』(島田彰夫著 東洋経済新報社)
 
【ベルツ博士の実験】
 後藤一則氏のフラッシュサイトhttp://homepage1.nifty.com/GOTO/washoku1.htm
 『伝統食の復権』(島田彰夫著 東洋経済新報社)より
 
 
<参考文献・参考HP>
『伝統食の復権』(島田彰夫著 東洋経済新報社)
『ナンシー・クラークのスポーツ栄養ガイドブック』
            (ナンシー・クラーク著 辻秀一・橋本玲子訳 女子栄養大学出版部)
『完全米飯給食が日本を救う』(学校給食と子どもの健康を考える会編 東洋経済新報社)
『粗食のすすめ』(幕内秀夫著 OH!文庫)
『胃腸は語る』(新谷弘実著 弘文堂)
『世界一の長寿食「和食」』(永山久夫著 集英社文庫)
『じょうぶなこどもをつくる基本食』(幕内秀夫著 主婦の友社)
『長寿村・短命化の教訓』(古守豊甫・鷹嘴テル著 樹心社)
『アトピーがグングンよくなる生活革命』(豊田一著 廣済堂)
『知っていますか子どもたちの食卓』(足立己幸著 NHK出版)
「食生活指針の策定について」(厚生労働省HP)http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1203/h0323-1_11.html
学校給食と子どもの健康を考える会HP http://www8.ocn.ne.jp/~f-and-h/kyusyoku/index.html
健康日本21のHP http://www.kenkounippon21.gr.jp/
学校給食ニュースのHP http://www1.jca.apc.org/kyusyoku/index.html
新潟のお米事情入門(新潟食糧事務所のHP)http://www.hokuriku.fo.maff.go.jp/niigata/index.htm
ご飯の国の栄養学(亀田製菓のHP)http://www.kamedaseika.co.jp/r_story/okome/co0101.htm
お米ギャラリー(JAのHP)http://www.gohan.ne.jp/gallery/index.html
数字とグラフで見る米http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj2000/30413/n-f/c/rice/b/suji2.htm
米ネット(全国米穀協議会のHP)http://www.komenet.or.jp/index1.html
おいしい健康クラブのHP http://kei.box.co.jp/top.html
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