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【特報 追う】フグ料理…規定緩い東北 資格や罰則バラバラ 統一制度求める声

2009.2.4 02:56

 山形県鶴岡市の「鮮魚料理きぶんや」で先月26日夜、フグ料理を食べた男性客7人が身体のしびれなどを訴え病院に運ばれた。東北では調理資格の条件が緩いうえ、同店の男性店長(65)が資格すら持たずに調理していたことが、波紋を広げている。この問題を受け、各地では、フグ処理現場の点検に乗り出す一方で、本場からは、「全国で統一した制度をつくるべきだ」との声もあがる。(松本健吾)

 「旬だと思って常連客に勧めた」。店長は、県警の調べに、そう話しているという。

 県などによると、店長は、フグに関して、県の資格も知識も持たずに、新潟県産のヒガンフグを2匹仕入れ、男性客8人に、自らさばいた刺し身と、しらこの塩焼きを出した。まもなく、フグ料理を食べた7人が身体のしびれや意識障害を訴え、3人が一時、重症となる事態に陥った。

 食品衛生法では、有毒なものを調理し、提供することは違法と定めている。しかし、食習慣があるフグについては、厚生労働省通知で「都道府県知事等が認める者及び、施設に限って」、有毒部位の除去を認めている。

 それが、各都道府県での消費量などによって、資格取得の難易度や違反時の罰則が異なる原因となって、議論の的になっている。

 東京都やフグの本場、山口県などは条例でフグの処理資格を制定。「調理師免許の所持者」や「フグ処理業務に3年以上従事」(山口県)などの条件とともに、実技試験も設けており、違反者には、懲役刑を含む厳しい罰則を科している。

    ■   ■

 山形県では、「2年以上の実地経験と講習会の受講」が条件で、「フグになじみがない」との理由で、罰則規定のない要綱での指導に留めている。

 岩手県では、昨年まで要綱もなく、一昨年、船上で処理されたフグが流通したのを受けて要綱づくりを進めたという。それまでは、他県の資格の有無など、個別に対応していたといい、中毒事故の予防については、「食品衛生法で担保されている」(県保健衛生課)との判断だった。

 業界団体「下関ふく連盟」(下関市)の松村久会長は、「全国で統一した制度を設けるべきだ」と訴える。「フグ消費が広がるなかで、各都道府県で資格制度や対応がバラバラでは、混乱と事故の元になる」と指摘する。フグを売る鮮魚店を含めた制度化を呼びかけている。

 厚労省担当者は、資格を持った調理者によるフグの中毒事故は、「少なくとも過去5年間はない」とし、今回の事案についても、「県が事前にフグの調理には資格が必要なことを伝えており、店長個人のモラルの問題」としている。

    ■   ■

 一方、今回の問題でとばっちりを受けているのが、巷のふぐ料理店だ。山形市の「麒麟(きりん)」では、事故が客足に影響しているという。客からは、「大丈夫ですか」「何フグ使っているんですか」との声も。最も難易度が高い東京都の免許を持つ佐藤摂社長(50)は、「とんでもないこと。テロにあった気分だ」と、あきれ返る。

 山形県は、「罰則付き条例などで、規制を強化すべきだ」との声もあがるが、さし当たっては、指導要綱を守るよう関係団体に呼びかけるとともに、フグ処理現場の立ち入り点検に乗り出した。

 店長は、県警の調べに、「フグを一匹丸々解体して調理するのは初めてだった。まさか、こんなことになるとは…」と漏らしているという。

 フグの素人調理は、くれぐれも厳禁だ。

 ■フグ毒 フグは種類が多く、地方によって呼び名も異なるため複雑。オスとメス、産地、季節によっても有毒部位、毒の強弱が違う。同種同部位でも個体によって有毒の場合と無毒の場合がある。ヒガンフグは、内臓のほか、卵巣が猛毒で、皮にも毒を含む。フグ毒の原因物質の「テトロドトキシン」には、解毒剤もなく、加熱、加工処理しても毒性が変化しない。種類によっては、肝臓2グラムで成人一人の命を奪う場合もある。図鑑で見るより、実際の鑑別は難しいため注意が必要だ。(鶴岡市立加茂水族館 村上龍男館長)

      ◇

 山形県鶴岡市のフグ中毒を受け、仙台市生活衛生課は、フグを取り扱う市内飲食店の緊急点検を開始した。

 同市内にはフグを取り扱う店が 235店ある。3日、青葉保健所の職員2人が、青葉区立町の割烹「魚長」を訪れ、調理長と面談し、資格の有無などを確認。調理場にも立ち入り、ふぐの有毒部位の処理実態などについて聞き取りを行った。

 この割烹では、多いときで1日10匹程度のトラフグを扱うという。調理は有資格者の監視下で行い、内臓などの有毒部位は、苛性ソーダで無毒化処理している。点検でも、規定への違反などはなかった。

 東京でフグ調理の資格を得たという調理長の菅原喜美男さんは「東北では、フグ取り扱いの規定が緩い」と指摘。点検を行った市の職員も「指導要綱など、適宜見直していきたい」と応えた。

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