居酒屋火災:非常口前についたて、客の視界ふさぐ 警視庁

2009年12月9日 15時0分 更新:12月9日 15時51分

火災現場のビル1階に設けられた献花台には、今も花が供えられている=東京都杉並区高円寺南4で2009年12月8日、山本太一撮影
火災現場のビル1階に設けられた献花台には、今も花が供えられている=東京都杉並区高円寺南4で2009年12月8日、山本太一撮影
居酒屋「石狩亭」の店内
居酒屋「石狩亭」の店内

 東京・高円寺の居酒屋「石狩亭」で11月、4人が死亡し12人が重軽傷を負った火災で、店舗奥の非常口の前に高さ約1メートルのついたてが置かれていたことが警視庁捜査1課の調べで分かった。また、調理していた焼き鳥の「ぼんじり」の肉片が、火の付いた状態で脂がたまったトレーに落ちて出火したことも判明。捜査1課は、非常口が客から見えにくくなっていたことや、調理器具の手入れが行き届いていなかったことなど悪条件が重なり、被害が拡大したとみている。【古関俊樹、神澤龍二、山本太一】

 捜査1課は業務上過失致死傷容疑で捜査しており、今後、燃焼実験をして出火の状況を詳しく調べる方針。

 捜査関係者や同店関係者によると、店の奥の大座敷には、出入り口とは別に非常階段につながる非常口があった。ところが、非常口の前にはついたてが置かれていたうえ、座布団が重ねて置かれていたという。同店従業員でさえ「非常階段があることも気付かなかった」と話している。

 大座敷には十数人のグループ客がいたが、非常階段で避難した人は確認されておらず、窓から飛び降りて足の骨を折った人もいた。ついたてなどが置かれていたために、客から非常口が見えにくくなっていた可能性があるとみている。

 消防法では廊下や避難口には避難の支障になる物を放置してはならないと定めている。

 ◇ぼんじりに火付きトレーの油に引火

 一方、死亡した同店従業員の男性(当時43歳)は出火当時、焼き場のガス式調理器具でぼんじりを焼いていたことが分かった。ぼんじりは鳥の尾の部分で、脂分が多い。調理中に肉に火が付き、したたり落ちる脂を受け止めるためのトレーに落下して炎が上がり、約1メートル上に取り付けられたダクトにこびりついた油に引火したとみられる。さらに、天井の汚れを隠すために張られた飾り布やのれんに燃え移り、あっという間に煙が店内に広がったという。死亡した4人の死因は煙を吸い込んだことによる一酸化炭素中毒だった。

 ◇今も冥福祈る人々

 「石狩亭」が入居していた第8東京ビルの周辺は、火災から2週間以上が経過した今も焦げ臭いにおいが漂っている。ビル1階に設置された献花台には、亡くなった4人の知人や近所の人が訪れ、冥福を祈っている。

 同店の十年来の常連という居酒屋の女性店長(29)は「店員さんは親しみやすい人ばかりで、リラックスしてお酒を飲める店だった。落ち着ける場所がなくなり寂しい」と話していた。

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