独立行政法人「日本原子力研究開発機構」(茨城県東海村)の関連施設の保守・点検などを請け負う企業グループ3社が、勤務の実体が無いのに同機構OB3人らに報酬や給与を支払い、利益供与していたなどとして、関東信越国税局から計約1億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。
同機構の年間予算額は約2千億円で、うち9割以上は国の交付金など。グループ各社の売り上げは、同機構からの請負業務がほぼ全額を占めており、公金を還元する形で同機構OBへの実質的な利益供与を行った構図だ。
機構OB3人は顧問や嘱託扱いで報酬・給与を得ていた模様で、同機構はその実態を把握していないため、再就職者の公表対象でもなかった。
2007年までの7年間に計約1億円の所得隠しを指摘されたのは、グループ中核の「常陽産業」と「原子力技術」、「ナスカ」の3社(いずれも東海村)。3社を含むグループ6社が税務調査を受けており、他の経理ミスを含む申告漏れ総額は二十数億円。重加算税を含む追徴税額は8億円前後で、既に修正申告しているという。
グループ関係者によると、常陽産業など3社は、元理事1人を含む同機構のOB3人らの役員報酬や給与について、勤務の実体が無いのに負担していた。同国税局は、利益供与を経費に仮装した悪質な所得隠しと判断した模様だ。また、これとは別に約1億円の所得隠しの中には、子会社を吸収合併した際、子会社に支払ったコンサルタント料には実体がなく、経費とは認められないとされた分も一部あるという。
この元理事(68)は取材に「週1回とか月何回とか会社に行ったり、受注の相談に乗ったりした。(報酬額は)他社と合わせて月20万円くらい」と答えた。
常陽産業と原子力技術は「勤務していないのに給与を支払うなど、あり得ない」などとコメントしている。