「約束したことを守って下さい」「これ以上基地負担を押しつけないで」。米軍普天間(ふてんま)飛行場移設候補地の沖縄県名護市で5日開かれた岡田克也外相と市民との対話集会では、住民らから鳩山由紀夫首相が衆院選で公言した「県外移設」を強く求める意見が相次いだ。「率直な意見交換」を理由に集会は非公開にされ、参加をボイコットした市民グループもあり、集会後は民主党への失望と批判が渦巻いた。
集会には、同党沖縄3区総支部支部が招待した100人近くが参加した。岡田外相はシュワブ沿岸部(名護市辺野古)への移設で譲らない米側の姿勢を説明し、日米同盟の重要性を強調。会場から10人以上が発言したが、辺野古への移設に賛成する意見はなかったという。
名護市瀬嵩(せだけ)の成田正雄さん(56)は「外相はどこかが普天間を負担しないといけないと言ったが、沖縄は戦後64年間ずっとで、これは沖縄差別。政権が変わって沖縄差別が変わるかと期待したが、大臣の説明からはそんな感じを受けなかった」と怒りをぶちまけた。
会場に来たが入場できなかった名護市の女性(62)は「民主党は事業仕分けも公開で評価していたのに、対話集会がなぜ非公開になるのか。おかしい」と納得できない様子だった。辺野古への新基地建設に反対している「ヘリ基地反対協」からはメンバー10人が参加予定だったが、非公開に反発しボイコット。安次富(あしとみ)浩共同代表は「こんな集会で地元の意見を聞いたということにされてはいけない。政府主催の公聴会をするべきだ」と批判した。
来年1月の名護市長選に民主党などからの推薦で出馬を表明している稲嶺進氏(64)は集会の最後に「この場で辺野古に基地をつくらないと言ってほしい」と迫ったが、岡田外相は答えなかったという。陣営関係者は「この集会で民主のイメージが明らかに下がった。今後、闘い方を考えなおさないといけない」と漏らした。
また、普天間飛行場を抱える宜野湾市の伊波洋一市長は那覇市内のホテルで岡田外相と意見交換。伊波市長は報道陣に「沖縄の海兵隊は実戦部隊もグアムに移る。県内移設の必要はないと訴えたが、理解してもらえなかった。大いに失望した」と話した。【三森輝久、井本義親】
2009年12月6日