広報担当者は「長期優良というだけで売れるほどまだ顧客には認識されていない。長期優良の認定基準はハードルが高い」と話す。同社ではいま、長期優良のマンションを建てる具体的計画はない。
国交省の集計を元に朝日新聞が調べたところ、認定された1棟5戸以上のマンションは全国で5棟206戸。長谷工コーポレーションは年明けから大阪府吹田市(114戸)とさいたま市(69戸)のモデルルームを順次、オープンし販売を始めるが、認定マンションが定着するかどうかは今後の売れ行き次第だという。担当者は「どれくらい反響があるかは未知の世界」と話す。このほか、大阪府豊中市で三和建設(大阪市淀川区)が建設中の賃貸マンション1棟11戸と奈良市の2棟で計12戸のアパートも認定を受けた。
マンションの普及にブレーキがかかっている最大の理由は、耐震強度への対応だ。
戸建て、マンションの双方を建てる積水ハウスの広報担当者は「戸建ては従来の建て方で長期優良に対応できるが、マンションは建て方の標準の見直しが求められている」と話す。
長期優良住宅が求める耐震レベルは戸建て、マンションとも耐震等級2の強度だが、マンションの9割は同法の基準を満たす耐震等級1だ。国交省の担当者は「戸建てでは、大手を中心に耐震強度の高い住宅が標準化する動きが早々に広がったが、マンション業界は耐震強度で差別化する動きはみられない」と話す。壁や筋交いを増やして強度を上げる場合、戸建ては対応が比較的コストに響かないが、マンションは建物全体の壁や鉄筋を増やす必要があり、販売価格に直結するというわけだ。
大手ディベロッパーも「質を上げればコストも上がる。品質とコストのバランスのとれた商品を検討中だが、具体的な計画はまだない」(三井不動産レジデンシャル)といった具合だ。