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発信箱:新型インフル禍=下薗和仁(報道部)

 10年ほど前まで九州に拠点を置く地方銀行の支店に勤めていた女性に聞いた話だ。その銀行では、行員は1年に1回、それぞれ時期をずらして連続5日間の有給休暇を取らなければならなかったという。前後の土日を含めると9連休になり、女子行員らは競って海外に繰り出した。それだけ聞けばうらやましい限りだが、「休暇中に、その行員が担当している業務に他の人間が入って、不正がないかチェックしていたんです」とその女性。実はあまり気持ちの良いものではなさそうだ。

 ところで先月下旬、私も連続5日間、「出社に及ばず」となった。新型インフルエンザである。風邪の症状が出たので念のためかかりつけ医に行くと、鼻の穴からなにやら差し入れられての検査。15分ほどして診察室に入ると、「A型陽性です。タミフル5日間分出しますから、外出しないでください。お大事に」。体温計は37度に達しておらず、「本当に?」と思いつつ、医師に従うしかなかった。

 累計患者が1000万人を超えたというくらいだから、自分に回ってくるのも仕方がない、などと胸の内でつぶやきながら自宅にこもり布団をかぶってうつらうつら、5日間をアダに過ごした。タミフルの効果なのか、その後も体温計は36度台にとどまり、「ひょっとして新型じゃなかったら、本物が来たらどうなるの」と背筋が寒くなった。

 さて久しぶりの職場に復帰してみると、なんとなく周囲の空気や視線が気になる。休んだ間に、自分でも分かっていない何かまずいことが発覚したのか、などといらぬ邪気を回してしまったりする。心身ともによいことはない新型インフル禍である。みなさま、くれぐれもご自愛を。

毎日新聞 2009年12月6日 0時02分

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