10年度税制改正で、所得税などの控除をめぐる協議が大詰めに入った。政府税制調査会はこれまでに扶養控除の廃止を固めたほか、16~22歳の子どもが対象の「特定扶養控除」縮小の検討にも着手。鳩山政権が掲げる「控除から手当へ」の流れに沿って政府税調は、来年度以降も控除の抜本見直しを進める方針だ。一方、廃止・縮小で負担増になる世帯が多いため、政府・与党内からの反発も予想される。【赤間清広】
所得税は原則として、総収入に応じて課税される。「控除」は扶養家族の状況などに応じ、一定額を総収入から差し引き、課税対象額を少なくする仕組み。しかし、控除枠すべてを減税に活用できるのは一定以上の収入がある人だけで、民主党は「低所得者に不利な現行の所得控除は改善すべきだ」と主張してきた。
その先駆けと位置づけたのが「子ども手当」の導入に伴う控除改革だが、早くも課題に直面している。
民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)は、「扶養控除」(15歳以下と23~69歳の扶養家族が対象)と「配偶者控除」を廃止し、子ども手当などの財源を確保する方針を明記している。しかし、「主婦層狙い撃ち」との批判が強い配偶者控除は早々に次年度以降への先送りを決めた。扶養控除についても、子ども手当の対象にならない成年分(23~69歳)の控除までなくなってしまう問題が浮上。4日の全体会合では「手当を受けない人にしわよせがいく。政権の人間性が疑われる」と成年分の廃止見送りを求める声が相次ぎ、結論は来週に持ち越しとなった。
政権公約の目玉の一つである「高校授業料無償化」の財源捻出(ねんしゅつ)のため、文部科学省が4日、提案した特定扶養控除の縮小には早速、財務省が賛意を示した。しかし、政権公約で「存続させる」とも明記しているだけに、与党内で反対の声が出る可能性もある。
また、国民健康保険や保育所の保育料など、課税額を参考に負担額を選定している制度は多い。控除廃止・縮小は負担増に直結するだけに、国民への説明能力も政府税調には求められる。
毎日新聞 2009年12月5日 東京朝刊