米ロ大統領、核軍縮条約「START1」失効後も核軍縮を続けると共同声明
アメリカと旧ソビエト連邦が18年前に取り決めた歴史的な核軍縮条約「START1」がまもなく失効する。米ロ両国の大統領は、核軍縮の新時代の条約を締結するとの共同声明を出したが、その陰では核を超える新技術の開発にまい進している。
1991年、アメリカとロシアの間で調印された条約が4日、期限切れを迎える。
その条約とは、米ロの間で、それぞれの核兵器とその運搬手段であるミサイルや爆撃機などを削減するというもの。
9月、オバマ大統領は「この地球上から核兵器がなくなるまで、われわれは歩みを決して止めないだろう」と述べていた。
「核なき世界」実現の意思を示すオバマ大統領。
そして、日本時間4日午後、米ロの両大統領はSTART1失効後も核軍縮を続けると共同声明を発表した。
しかし、その裏では、大国の間での神経戦が繰り広げられていた。
実は11月15日、ロシアのメドベージェフ大統領は、期限切れとなるSTART1の後継条約について「解決すべき技術的、政治的問題が残っている」と述べていた。
メドベージェフ大統領は、後継条約の必要性は認めながらも、「解決すべき問題がある」と注文をつけた。
この問題について、軍事評論家・岡部 いさく氏は「例えば、ロシアの移動式弾道ミサイルの工場に派遣されているアメリカの査察官などの存在ですよね」と話した。
条約の期限切れでは、ロシアの移動発射型の大陸間弾道ミサイルの工場に常駐していたアメリカの査察官が今回、撤収する。
一方、アメリカは移動発射型弾道ミサイルを現在製造していないため、アメリカにはロシアの査察官がいない。
ロシア側は後継の条約で、こうした一方的な監視体制の解消を狙っているという。
軍事評論家・岡部氏は「実は、アメリカはロシアがまだ対応しきれていない非核型の長距離ミサイルの開発を進めているんです。これが実用化されると、ロシアの戦略核はアメリカに対する抑止の効果を失うかもしれません」と話した。
岡部氏が明かす、アメリカが開発中の非核型弾道ミサイル「CSM」。
最大の特徴は弾頭「HGV」。
中身は特殊合金製の金属塊だが、落下時の速度はマッハ23にも達する。
時速2万4,300kmを超えるとされ、金属の塊、HGVはその落下エネルギーだけで地上や地下の目標物を破壊するという。
この兵器は、核兵器用を対象とした戦略兵器削減条約の対象外となっている。
そしてロシアは現在、対抗できるものを持ち合わせていないという。
START1の期限切れと、アメリカの新たなミサイルの構想は、これからの米ロ関係に影を落とす可能性もある。
(12/05 00:59)