[TGS09]小島監督インタビュー : 段ボールはMGSのアイコンです
掲載日時:2009.09.26 11:00
自分でも信じられないのですが、今回のTGS2009で、メタルギア神話の生みの親、小島秀雄監督とのインタビューが実現しました! 先日の米Kotakuパーティにふらりと遊びにきてくれた際に、こちらの申し出を快諾してくださったんですねー。
しかも今回は、Kotaku初の日米合同企画。なので、米Kotakuのスティーブン・トティーロ記者、Kotaku Japanのボク(ニール太平)、そしてゲストインタビュワーとして「オレ的ゲーム速報@刃」管理人のJin115さんを交えてスネーク・イン! してきましたよ。
創造主と過ごした、めくるめく時間の詳細は以下にて。
トティーロ記者(以下、T) : 昨日『ピースウォーカー(以下PW)』をプレイさせてもらったんですが、とても関心しました。これは『MGS4』の開発チームが制作に関わっているので、実質ナンバリングタイトルと同等のことでしたけど、なぜPSPでの発売にしたのでしょうか?
小島秀夫監督(以下、K) : 将来的にはプラットフォームではなく、クラウドコンピューティングで、どこでもゲームが遊べる時代が来ると思います。そのときに『メタルギアソリッド』を持ち運べたらどう面白いのか、今からみなさんと検証しましょうというのが、今回の『PW』です。
T : 以前にもPSPで『MGS』シリーズは発売されましたが、『PW』はどのように違いますか?
K : 実際、ゲームデザインやストーリー、すべてに関わったPSP作品は今回初めて。なので、自分で検証するつもりで『PW』を開発したところですね。
T : 今回はすばらしい新要素がたくさんあり、特に協力プレイの「スネーク・フォーメーション」に関心しました。協力プレイの要素のアイディアはどこから来ているのでしょうか?
K : オンラインゲームは最初は対戦が主でした。AI(人工知能)ではなく、生きた人間同士で戦う面白さがあったんです。ですが、最近はどちらかというと、協力して戦うというスタイルのゲームが多いですよね。つまり、一歩ステップが上がった感じというか。とはいえ、一緒に戦うといっても、友情のためというよりは、その場で一緒にプレイすることで、自分が得をするというようなシステムが多い。だから、そこからさらに一歩踏み込んでみました。お互いに貸し借りがあるからこそ、人間関係が広がるようなゲームシステムを目指して作っているんです。
T : 『PW』は4人でプレイできるのに、なぜ段ボール箱には2人までしか入れないのでしょうか?
K : 本当は4人にしたかったんですけど、やっぱりPSPなのでメモリの制限とかがありまして...。実際に段ボールも4人で入れるというのはなかなかないですよね。
まぁ、次世代マシンでやれば4人とか10人とか入れます。そうなったら、もうダンボールじゃなくてもいいですよね。段ボールというのは『メタルギア』のアイコンです。だから、コープスの象徴にもしたかったので、2人でかぶれるようにしました。
T : ちなみに小島監督はダンボール箱に隠れたことはありますか?
K : 僕は昔かぶってましたよ。 (一同爆笑) 小説家・阿部公房さんの作品で『箱男』というのがあるんです。箱の中で生活する男の記録なんですが、箱の内側から外を見ると、見方が変わってくるという内容なんですね。それを体験したいがために、ダンボールかぶってました。だけど、なんか、あまりわからなかったですね...
T : 『PW』はメタルギアサーガのなかでミッシングチャプターとも言われていますがどのような重要性を持っているのでしょう?
K : それはあんまり言えないんですが...『MGS3』でネイキッドがビッグボスになりましたよね。でも、もらったのは名前だけで、彼はビッグボスにはなれていない。最終的にはソリッド・スネークの敵になるんですけれども、そこに落ち着くまでの彼の心情や環境とかを今回かなり明らかにするということです。
T : これはストーリーを完結させるものですか? それともまだゲームになるかもしれない別ストーリーのアイディアをお持ちですか?
K : 死ぬまでたぶん完結しないとは思いますし、僕が死んでも若い子が新しいストーリーを紡いでくれるとおもいます。そんなに複雑な話じゃないと思うので、古典といっしょです。師匠がいて、弟子がいて。その事件が発端となってまた師匠との戦いというか。
T : 海外のゲームはどのくらい『PW』のゲームデザインに影響をあたえましたか?
K : 影響されているというか海外のゲームにしか魅力を感じない。ゲームショウも今年の御三家、『モダンウォーフェア2』と『アンチャーテッド2』と『アサシンクリード2』だけをやってたらいいかなと。日本のゲームはもちろんすばらしいのもあるとは思いますけど、僕は(世界観やゲーム性を含め)あまり興味がないし。でも、『ラブプラス』はちょっとやりたいですね。
T : 過去の作品ではプレイヤーの感情を揺さぶるような場面がいくつもありましたが、『PW』もプレーヤーの感情に訴えかけるような要素はあるのでしょうか?
K : そういうシーンは当然『PW』にも入っていますよ。ゲームならではの感動として。フィルムにしたほうがもっと泣けるとは思うんですけど、ゲームなんでインタラクティブな手法ですね。そういうのも今回随所に入れております。
T : Kotaku読者の多くが小島監督が『メタルギア』以外のゲームに取り組むのか興味があるようですが?
K : Kotaku読者だけじゃなくて、僕も一番興味があるんですけれども。『PW』をやっている間は次にかかれないので、これが終わったらそれにとりかかることができればいいと思っていますけど...まだわかりません。Kotakuで毎日のように「小島はメタルギア作らんでえぇから」と言ってくれたらやりやすくなります。あとうちの社長に手紙書くとか。署名して、「小島さんは『メタルギア』作らなくていいです」、「『メタルギア』じゃなくても、小島さんのなら買います」と。
T : わかりました、そうすることにします(笑)。それと、もし可能ならKotakuでゲスト記事とか書いてもらえますか?
K : じゃあ、時間があれば。
Jin115氏(以下、J) : 数あるメディアの中でなぜ今回はKotakuを?
K : Kotakuさんは毎回スッパ抜きをするんで、「うぜぇ~な~」と思っていたんですよ。思いながらもやっぱ情報源はKotakuさんなんですよ、僕は。で、Kotaku Japanというのができてから、毎日のように見だしまして。ゲームに直接かかわりない記事なんかも全部自分にバッチリくるんで、毎日Kotakuを見るようになりました。今では一時間に一回くらいみてますね。大体そこで仕入れた情報を会議でしゃべったりしているので(笑)。つまり休戦状態ということですよ。今は大きな雑誌社さんのところにいくともうすごい量でもうわからない。で、Kotakuさんとかのブログにいくと旬の情報がわかりやすく載っているので、最初のとっかかりにするといった感じですね。
J : 『MGS4』のことですが、以前の『MGS』作品のように特別版を出すつもりはないんですか?
K : 『4』は作ってほしいという意見が多いのですが、やってると『PW』や『ライジング』が作れなくなるんで、苦渋の決断でつくらないということです。スタッフとかは同じなのであれをやると1年ほかのが遅れるんですよ。今までは作品の合間にスタッフが『サブシスタンス』なんかを作ってる間に、僕らが(新作の)仕込みをして、終わったら合流という生産システムでした。
J : E3のときに『ライジング』の発表をマイクロソフトとやって、ネット上でもかなり荒れたようですけど?
K : あれは悲しかったですね、仕事をやめようかと思ったくらい。まあ、あれは発表の順番が違っちゃっただけなんですけど。
J : 正直ハードの信者のような方々はどう思いますか?
K : 自分はソフトを作っているので、そのとき一番力が発揮できそうなハードで勝負したいと思っています。いままで『MGS』に関しては、ソニーさんと一緒にやってきたのですが、E3のときはたまたま事情があって発表が逆転してしまいました。でもプラットフォームは競争があるからよくなるんだと思います。ライバルがいるから勝とうとしてがんばるわけですよね。ただ、携帯機などとマルチにしてもゲーム性も違っちゃうので僕はそういうことはやりませんね。
T、J : 今日はお忙しい中、取材にご協力いただいて、本当にありがとうございました!
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今回のインタビューはステージでの発表の直後だったので、小島監督もお疲れのところのインタビューで機嫌を損ねてしまうんじゃないかと心配しました。でも、インタビューが始まってみると、知的でユーモアに富んだ返答の数々に心奪われましたね。やはり自分の信念をしかっりともってゲーム作りに取り組んでいる印象なんです。帰り際にはT-シャツのお土産をいただいたりと、大変お世話になりました。あのお土産はもう家宝にしておきます。
今回インタビューに応じてくれた小島監督、ならびに同席されたキャラクターデザインの新川洋司氏、小島プロの今泉氏、小島プロ広報の山本さん、そして小島プロダクションの皆さんに厚く御礼申し上げます。貴重なお時間をどうもありがとうございました。
Hideo Kojima Talks Metal Gear Solid: Peace Walker And How You Can Help Him[us.kotaku]
小島監督にインタビューしました。[オレ的ゲーム速報@刃]
(聞き手:Stephen Totilo、jin115)
(文&通訳:ニール太平)
(撮影:KEI-CO)
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質問があるんですがいいでしょうか?
なぜ個人ブログである「オレ的ゲーム速報」さんをインタビューに誘ったのですか?
批判しているわけじゃなく私は「オレ的ゲーム速報」も「はちま起稿」もほぼ毎日見るほど好きです.
ただ彼らはあくまで個人ブログであり,あなた方のような企業として情報サイトを運営されているプロの方とは違います.
これは純粋に好奇心からの質問なのですがお答えいただけますでしょうか?
us.kotakuの記事ではjinの事がまったく無視されててワロタ
質問ありがとうございます!
jinさんを誘ったのは、同じ(というとjinさんに失礼かもしれませんが…)ゲームブログメディアの先輩として、単純にリスペクトしていたからです。そこは個人とか企業とかあまり関係ないんじゃないでしょうか?
だから、「はちま起稿」さんとも機会があれば、ぜひお会いして、コラボできたらいいな。なにしろ、まだまだKotaku JAPANは弱小メディアですから。いろいろ勉強させてもらいたいと思っています。
whosewhoさんも、ぜひともKotaku JAPANをよろしくお願いしますね!