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ブンデスリーガを6年間取材した者として、ここまで浦和レッズのフォルカー・フィンケ監督が苦戦するとは予想できなかった。約70億円の収益を持つクラブに、ドイツでもトップクラスの戦術家が来たのだから、優勝争いに絡まないわけがないと思っていた。フィンケ監督本人は「これまでの経験から、チーム作りには最低でも2年間かかる」と言っていたが、それでも虎視眈々と優勝を狙う不気味な位置にい続けるのではないかと。
だが、フタを開けてみれば、開幕当初は改革の息吹を感じさせてくれたチームも、W杯予選の中断期間を終えて代表組が再合流したあたりを境に、迷走し始める。一時は2位にまで順位を上げたが、残り1試合を残し、現在浦和は6位に甘んじている。
監督と選手の衝突はサッカー界ではよくあること。
監督と一部の選手のコミュニケーションがうまく行かなかったことは、迷走のひとつの理由だろう。フィンケは監督として、「ディーバはいらない」という哲学を持っている。ディーバとは直訳すれば歌姫だが、サッカーの世界では「わがままで、言うことを聞かない選手」のことだ。もちろん『能力』と『扱いずらさ』を天秤にかけて、前者が上回るならばチームの戦力として構想に入るが、今回は後者が強くなりすぎたと監督は感じたのだろう。今季の浦和での闘莉王は、日本代表とは別人のように不安定なプレーを見せた。闘莉王からすれば、連戦の疲労が抜けなかったのかもしれないが……。闘莉王の今季までの契約は延長されない見込みだ。
ただ、監督と選手の衝突があるのは、サッカー界ではよくあることだろう。両者の性格が合わなくても、ピッチでは結果が出るというケースはいくらでもある。今季の迷走には、他の理由もあるのではないか――。
チーム運営における人件費の割合は何%が適正か?
そんなことを考えているとき、バルセロナの元副会長フェラン・ソリアーノ氏が執筆した『ゴールは偶然の産物ではない』(アチーブメント出版)という本に出会った。ソリアーノ氏は、サッカー経営の常識として次のことを書いた。
「一般的に、効率的に運営されている事業の場合、人件費は収益のおよそ50%ほどと言われている。サッカー界では、人件費は収益のおよそ50~65%が妥当とされている」
もちろん安い人件費で優勝するのが一番いいが、プロの世界はそんなに甘くない。選手の質を高めるために、投資は必要だ。
では、Jリーグにおいて、収益と人件費の関係はどうなっているか? Jリーグが発表している2008年度の経営情報開示資料を見ると、おもしろいことがわかった。
J1において浦和と横浜Fマリノスだけが、収益における人件費の割合が30%台だったのである。
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筆者プロフィール
木崎伸也
1975年1月3日、東京都出身。2002年W杯後にオランダへ移住し、03年からドイツ在住。現地のフットボール熱をNumberほか雑誌・新聞で伝えてきた。09年2月1日に日本に本帰国。著書に「2010年南アフリカW杯が危ない!」(角川SSC新書)、共著に「敗因と」(光文社)がある。
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