国際結婚した夫婦の破綻(はたん)に伴い、一方の親が子を連れ去るトラブルが相次いでいることを受け、外務省は国際結婚を巡る紛争解決のルールを定めた「ハーグ条約」締結の可否などを検討する「子の親権問題担当室」を設置した。「日本がハーグ条約を結んでいないためトラブルが多発している」との欧米からの批判にも配慮し、他国よりも話し合いの準備が整ったフランスとの間で、子の親権問題に関する実務者レベルの協議会を発足させた。【工藤哲】
外務省によると、担当室は1日付で設置され、国際法課や北米1課、西欧課などの職員9人で構成。これまではトラブルの相手方が居住する国の担当課が相談の窓口になっていたが、今後は担当室に一本化する。
ハーグ条約は、先進8カ国の中では日本とロシアが未締結。日本では「締結を勧告している国連の立場を尊重すべきだ」などとして賛成する意見がある一方「子の福祉の観点が欠落している」との慎重論もある。担当室は表面化しているトラブル例を検証しながら締結の可否を検討。国際結婚では子を巡るトラブルが起きる可能性があることも積極的に広報していくという。
岡田克也外相は1日の記者会見で「今ある問題の対処と(ハーグ)条約加入の適否も含め、ここで議論していくことになる。日本としての対応を早急に検討したい」と語った。
一方、1日に外務省で行われたフランスとの初協議では、フランス側から35件の紛争事例が示され、具体的な対応策について要望が出されたという。
協議会は、近く米国との間でも設置される。
日本弁護士連合会家事法制委員会委員を務め、ハーグ条約に詳しい大谷美紀子弁護士は「日本に連れ戻された子と、日本から連れ去られた子の双方について、担当室が総合的に問題を把握・検討するとすれば有益だ。ただし法的な対応や検討も必要になるため、法務省や裁判所、弁護士との協議も進めることが望ましい」と話している。
毎日新聞 2009年12月3日 東京夕刊