iPS細胞(人工多能性幹細胞)に栄養を供給する細胞を同じヒトの皮膚細胞から作り出し、その組み合わせでiPS細胞を培養することに京都大の山中伸弥教授のチームが成功した。将来期待される細胞移植では、従来の培養方法より危険性が少なくなるという。2日付の米科学誌プロスワン電子版に掲載された。
iPS細胞の培養には栄養を送る「フィーダー細胞」が必要で、通常はマウスの細胞を使う。しかし、動物由来の細胞は、移植の際に想定外の免疫反応などが起こる危険性が指摘されていた。iPS細胞はヒト自らの細胞から作ることができるため、フィーダー細胞に自分の細胞を使うというアイデアが生まれた。
高橋和利講師らは、大人3人と新生児1人の皮膚細胞でiPS細胞4株を作製。さらにこの4人の皮膚細胞に処理をして増殖を止めてフィーダー細胞を作った。それぞれのフィーダー細胞と一緒に、同じ細胞を由来とするiPS細胞を培養したところ、4株いずれもiPS細胞は正常に培養できたという。一方、この4人を含む14人の細胞からフィーダー細胞を作って、それぞれ別人のiPS細胞の培養を試みたが、うち3人の細胞では培養できなかったという。
高橋講師は「自らの細胞からフィーダー細胞を作ることはiPS細胞ならではの利点。今後は、培養できた人とできなかった人がいる理由を探りたい」と話している。(木村俊介)