†ｍｏ'ｍ_cable〜Ascension-room(平杜カノン)

何の前触れもルームメートに知らされる事もなく、いきなり“家賃滞納”という理由で住居の鍵を管理会社に交換され、私たちは路頭で夜を明かした…。

私に…
家賃を滞納した履歴は無かった筈なのに……。

そうなる事を前々から知っていたのは彼女だけで、
むしろそれを私にちゃんと彼女が話してくれていたならば、出来る事が私にもあった。

大方の諸々の支払いというものは月末に行われるので、私は手元にあった臨時収入で保険やその他の生活諸経費の先月分から今月分を清算し、
家賃＋光熱費分も綺麗に彼女には支払ったばかりだった……。


だけど……


　★☆★

いきなり崖の上から石が落ちて来て…、
ぶつかるまであと二分……。

お金を払えば石を避けてやる……。

　★☆★


…そんな昨日〜今日を送る事になってしまった。

彼女が
私の渡した家賃を家賃ではない事に使用した為に、
結果的に“家賃滞納”という形になり、オマケに保証人不要〜初期費用のかからない不動産管理会社と契約をしたので〆日にはとても厳しいから、
約定日翌日には私たちはあっさり住居権利を剥奪されてしまうシステムの中にいた…。

だから私は仕事は絶対に
“休まず遅刻せず不快な思いを相手にさせず…”を守り通して来た筈だった。


…前回〜前々回も彼女が同じ騒動を起こしたので、私が金策に走り回り…そんな事はとっくに分かりきった話だっただけに、
私の怒りもピークに…！


鍵が開かなければ中の荷物を持ち出す事も出来ないので、
7月5日までに遅延金25,000円を含む家賃分を全額支払わなければ、荷物も商売道具も全て廃棄処分となってしまうのだ…。


恥も外聞もかなぐり捨てて、相談出来る人には全て相談したけれど、

“それは貴女が蒔いた種だから…。”
と、皆一様に怒りと落胆を露にし、もうダメかと諦めながら、
全てをかなぐり捨てて二人のあるSNSのフレンドに最後の相談をした。


一人は男性で最近意気投合したばかりの人だったけれど、確かにそれは剰りに非常識な要求だったから先方を怒らせ
交流は絶えてしまった…。

動転していたから…という理由では済まされない事をしたと思いながら、
それでも私に怒りを露にするエネルギーを使ってくれて“ありがとう…”と…
感謝の気持ちと最後のお詫びのメールを送信した。


ギリギリのところで私を助けてくれたのは、
まだ電話だけでしか話をした事の無い同世代のフレンドの女性だった…。

彼女(Ａさん…仮名)とは実は某SNSでのかなり物騒な騒ぎの時、何度か助けて貰ったまま……、
ロクなお詫びもお礼も出来ていなかったのに……。

…そんな彼女が私に何も言わずに貸してくれた●万円のお陰で、私たちはようやく滞納遅延金を除く家賃の元金を清算出来、
鍵を取り戻す事が出来た。


色んな同業者にも相談したけれど、
《それは貴女の生き方が間違ってるから。》
…という教訓となり返ってくるばかりだった。

確かにそうだった…とも思う。

…が……、それだけではない何かがある事は、その人たちにはなかなか理解しては貰えなくて悔しかった。


“非常識な生き方ではなく普通になりなさい”
と言われれば、逆に私は今の仕事から身を退かなければならないだろう。

自分に多分に悔い改めるべきものがあるとは思いながら、
それでも普通の人が普通に考える“家族”が私の家庭に形成されて来なかった不毛だけは、口にしなかった。


虐待、近親相関、その他アダルトチルドレンに至る経緯すらも、同業者の歌手の彼女(Ｕさん)からすれば
“貴女の蒔いた種だ”と言われるだろうから……。

だけど………


事件や事故は“非常識な要因の積み重ね”であり、
それが100％自分の過失ではない場合もあるように感じている。

…そんな時、何も言わずに私を助けてくれた人に対して、
私は一生の借りが出来た……ぐらいの重みと痛みを持って、その人を大切にしたいと思う。


それが歌手のＵさんからすれば、
“結局貴女は助けられてしまったた事で、負のカルマを又積んでしまった”
…ど同等だとしたら、二の句を告げない代わりに私はそれを受け入れ……

私を今回助けてくれたＡさんのカルマを一緒におぶって生きて行く“在り方”を、
選択したいと感じた。


ルームメートに届いたＡさんのメールは非常に厳しいもので、
それを私には言わずルームメートにだけ告げたＡさんの温情と愛情に対し…

私は今出来る事を形に表してなるべく早期に実行しようと思う。


ごめんなさい…Ｔさん。


ごめんなさい
そしてありがとう、Ａさん。