15年ほど前、自分の時間が持てる本社の部署に移り、京都の大学で通信教育を受けた。新聞が扱う分野は広く、記事はまとめることで精いっぱい。基礎から自分で考え、組み立ててみたかったのだ。
仕事の後は毎日レポート書き。ほとんど本の丸写しだった。博物館学指導の故網干善教・関西大名誉教授には「自分で考えたことを書け。複写では合格にはできない。といって私の本の通りだから、ばつにもできない」と言われた。
合格すると試験。朝、会場に向かう電車の中で必死にメモを暗記する仲間に出会う。知らない顔ばかりだが、「皆頑張れよ」という連帯感がこみ上げる。温かい思い出は今も心の支えだ。(栗栖)
毎日新聞 2009年12月1日 地方版