10月末、兵庫県の両親から「家を買う!」と題したメールが届いた。私が驚いているうちに、京都府内に見つけた畑付きの古い農家を購入し、30年住んだマンションから引っ越しを始めた。メールには「いずれはと考えていた田舎暮らし」とあった。あまり聞いたことはなかったが、2人が以前から温めていた思いだったようだ。
母はのんびりしていそうで以前から行動的だったが、父は私たちには「なんでもとことんやってみろ」と繰り返すくせに、理屈ばかり言って動かないタイプだと感じていた。好奇心は旺盛だが環境の変化が苦手らしく、心配していた通り、退職後は家で引きこもり気味だった。
60歳を過ぎて新しい環境に自ら飛び込んだ父。実は似た性格の私は、その決断にちょっと勇気付けられながら、正月に帰るのを楽しみにしている。【稲田佳代】
毎日新聞 2009年12月2日 地方版