第125回患者塾は産業医科大学(北九州市八幡西区)の学園祭「医生祭」のイベントの一つとして11月3日に開かれた。テーマは「大学病院のかかり方」。前半は産業医大の医師がリウマチについて最新の治療や上手なかかり方を紹介した。
小野村さん 産業医大病院副院長の田中さんは、早期に治療すれば階段も下りられなかった人が走れるようになる例もあるというリウマチの薬を開発した医師の一人です。現在のリウマチの治療はどう進歩していますか。
田中さん 関節リウマチは国内で70万~100万人の患者さんがいます。関節が腫れたり、痛くなる病気ですが、きちんと治療をしないとどんどん変形して最終的には動けなくなります。長い間良い治療がありませんでしたが、最近リウマチがなぜ起こるのかの過程が分かり、治療薬がこの10年間で開発されてきました。その治療をすれば痛みも腫れもなくなり、関節が壊れることを防げるようになってきました。
<46歳の女性> 関節痛がひどくなって来たので近所の内科を受診しました。血液検査をしたら、リウマチに関連した数値が高くなっているので専門医を受診するよう言われました。大学病院と開業している専門医のどちらを受診するか、何を基準にして判断すればいいですか。
田中さん かつてはまず近くの病院にかかり、そこで手に負えなかったら大学病院に来てくださいと言ってました。ところが今年になってリウマチの診断や治療がさらに変わりました。治療は早ければ早いほど良いことが分かったのです。最初に大学病院で専門的な治療を行い、ある程度コントロールできるようになったら近くの病院に行ってもらうと逆の流れが推奨されるようになってきました。きちんと治療すれば関節の破壊は早期に防げるし、制圧できます。専門的な治療を最初にと考えると、まず大学病院に来てくださいという答えになると思います。
小野村さん 一般の開業医にはまだ十分にその情報が伝わっていないと思いますが、開業医に注意点として伝えたいことは。
田中さん 患者さんが朝に手が1時間以上こわばる症状があったり、医師が診て関節が1個でも腫れていたりすれば、どうぞ紹介してください。リウマチは発症してすぐに関節が壊れ始めます。関節が壊れる前に早く治療を始めてください。
<45歳の女性> 母子2人暮らしです。娘の大学の入学金が工面できず、ハローワークで紹介されたパチンコ屋で働き始めました。収入は増えましたが、職場のたばこの煙がすごくて目がチカチカしてせきも出るようになりました。こんな相談も産業医大の医師は聞いてくれますか。
森さん パチンコ屋という特別な職場なので、働く場所を探す時にそういう職場であるということを理解したうえで職場を選ぶということ以外にはないと思います。せっかく見つかった仕事ですので、辞めた場合に次はどうするというのは大きな問題です。働くことと健康をどうてんびんにかけるのか苦しむと思いますが、産業医大には実際に企業で産業医として務めた経験を持つ医師も多いので、時間さえ許せば相談に乗ります。
田中良哉さん=産業医科大学病院副院長・医学部第1内科学教授
森晃爾さん=産業医科大学副学長・産業医実務研修センター所長
松田晋哉さん=産業医科大学教授(公衆衛生学)
楠原浩一さん=産業医科大学医学部小児科学教授
谷口初美さん=産業医科大学医学部微生物学教室教授
津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(水巻町)
伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)
仲野祐輔さん=八屋第一診療所院長(豊前市、外科)
小野村健太郎さん=おのむら医院院長(芦屋町、内科・小児科)
大学病院と言えば、財前助教授でしょう。そう、小説「白い巨塔」の主人公だ。ここに描かれている人間模様は、なかなかえげつなく、興味深いものだった。そして改めて調べてみて4度もテレビ放送されていることに驚いた(個人的には田宮二郎がベスト)。それだけ日本人の琴線に触れる内容だったのだろう。ただ出世争いや不祥事もみ消しなどはどんな組織でもあるのに、大学病院に対するある種のイメージを生み出した罪作りな側面もある。それだけ我が社の大先輩、山崎豊子さんの取材力、筆力がすごいということか。【御手洗恭二】
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〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2009年12月1日 地方版