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仕分け第1ラウンド 「科学技術立国」議論なし

11月18日7時56分配信 産経新聞

仕分け第1ラウンド 「科学技術立国」議論なし
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(写真:産経新聞)
 ■スパコン、ロケット開発…最先端技術、次々削減

 行政刷新会議による事業仕分けの第1ラウンドでは、次世代スーパーコンピューターやロケット開発などの最先端科学技術を「無駄」と認定するケースが続いた。仕分け作業はほぼ財政論に終始し、科学技術立国として、種をまき育てるという議論に踏み込むことはほとんどなかった。

  [表でチェック]事業仕分けの主な対象

 17日の事業仕分けでは、文部科学省所管で官民共同で開発が進められてきた中型ロケット「GX」(概算要求額58億円)が俎上に載せられた。

 「ロケット開発自体、ビジネスになる見通しが立っていないのに税金を使うのはどうか」

 統括役である民主党の枝野幸男元政調会長がこう切り出すと、「米国、欧州、中国が成功したら日本のロケットは海外に売れなくなる」と、ビジネスとして将来性がないとする意見が相次ぎ、GXロケット計画は「廃止」、液化天然ガス(LNG)を使った新型エンジン開発も来年度予算計上が見送られた。

 LNGエンジンは長期間の運用が可能で、軌道間輸送機や惑星探査機に適する。世界でも日本が最先端を走り、「中国の宇宙開発をにらみ、優位性を確保することが日本の技術安全保障になる」(防衛省筋)との擁護論もある。しかし、仕分け作業でこうした観点の議論はなかった。

 13日のスパコンに関する仕分け作業でも「世界一を目指す理由は何か。2位では駄目か」(蓮舫参院議員)との発言が優位となり、開発事業費を「事実上の凍結」。開発主体の理化学研究所理事長でノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治氏を「(スパコンなしで)科学技術創造立国はありえない」と憤慨させた。

 文部科学省の担当者は「中止すれば日本は最先端コンピューターをつくる技術を失い、1、2年の遅れが致命傷になる。国際競争は一度下りたら復帰することは困難だ」と危機感をあらわにする。スパコン開発は科学研究やジェットエンジン開発などで必須のコンピューター・シミュレーションの発達に影響するため、米国は不況下でも開発予算を増額、中国も最高性能の国産スパコン開発を国家戦略に位置付けているという。

 科学技術予算の削減について、鳩山由紀夫首相は17日夕、「科学技術は将来にかかわる知的財産で、すぐに結果が出るものではない。予算が本当に役立っているのかとの思いもある。両方を考えなければならない」と述べた。

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最終更新:11月18日11時38分

産経新聞

 

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