事前の健診をほとんど受けない妊婦による出産が、道内で08年に少なくとも70件あったことが産科医らのグループによる道内初の調査で分かった。新生児集中治療室(NICU)入院も26%に上り、健診を受けないままの出産は危険性が高いことが裏付けられた。
北海道周産期談話会のプロジェクトチームが今年4月、道内115の全分娩(ぶんべん)施設を対象に08年の実例についてアンケートをとった。51施設(44・3%)から回答を得て、11月の道の研修会で公表した。
健診を全く受けないか、妊娠初期に1、2回しか受けない妊婦による出産は70件。全分娩数に占める割合から推計すると、道内の全体では145件程度と推計される。
新生児の状態は、低出生体重が19・7%で、07年の全国の新生児の平均8・2%と比べ倍以上。早産が15・7%で、全国平均の5・8%の3倍弱に上った。子宮内感染や低血糖など新生児異常が16%あり、NICU入院は26%。いずれも通常の5~10%を大きく上回る。
母親についてみると、未婚者が54%に達し、出産回数が4回以上が12・7%と、道全体(07年)の0・8%を大幅に上回ることが特徴。胎位異常など母体異常の割合も24%で高い。
医療機関が把握している未受診の理由(複数回答)は「経済的理由」(50・0%)が最も多い。「産むかどうか迷った」(26・8%)や、「妊娠の経験があり、健診を受けなくても大丈夫」と自己判断したなど、「意図的」なケースも16・1%となった。医療費の未払いは26%で、医療機関には財政的な負担も生じている。
北大病院産科の山田俊・診療准教授は「『未受診はふまじめ』とは片づけられない。母子ともにハイリスクであり、医療と行政が、学校・地域社会と連携しリスクの啓発や経済的な助成制度の充実などに取り組むことが大事」と話している。
未受診の妊婦による出産は全国で相次ぎ、病院が対応できないなどの問題も起きている。札幌市でも07年に自宅で出産した未熟児が病院をたらい回しにされた後、死亡したケースがあり、市が対策に乗り出している。【堀井恵里子】
毎日新聞 2009年12月1日 地方版