Serkan Anilir氏

Q1. 宇宙空間のような極限環境下でのコミュニケーションは、どのようなスタイルになると思いますか?また、そうしたコミュニケーションを支える技術やサービス、ビジネスにとっての課題には、どんなことが挙げられると思いますか?

携帯電話は、実質的にアポロ計画からの技術移転です。アポロ計画は、地球と月の通信を確立しました。1973年、アポロの通信システムの設計者でもあるモトローラ社のマーチン・クーパーが最初の機械をテストして、携帯電話で電話をかけた最初の人となりました。それは宇宙用に開発されたものでしたが、私たちの日常的な道具になりました。

宇宙通信技術の重要な課題は、「時間遅延」です。地球と月の往復遅延は3秒未満で、音声と動画での会話が普通にできます。しかし、地球と火星の往復遅延は、光の速度により、再接近したときの約6分半から、外合の位置にあるときの44分まで変動します。NASAは、会合周期ごとに火星と地球の間を結ぶ直線上に太陽が入る外合の位置にある前後で、約2週間、直接通信が妨害されることを発見しました。宇宙探査では、地球の助けが必要な命にかかわる問題が発生する可能性がありますから、これもきわめて重要なデータです。

しかし、忘れてはならないのは、植民地化は「本国 home」とのリアルタイム通信の便益なしに進められたということです。

外号の位置にある間の困難を、L1ラグランジュ点の衛星を含めて通信衛星の一群を使って避けるという解決方法があるかもしれません。あるいは、最新のモバイル技術への影響を変えることのできる新技術もありえます。

Q2. セルカンさんが研究しているインフラに依存しないで暮らせる空間技術「INFRA-FREE LIFE」とモバイルはどのように関わるでしょうか?

インフラフリー(IF)研究は、2つの異なるパースペクティブ、すなわち、技術的なパースペクティブと社会的なパースペクティブでモバイルコミュニケーションの世界に取り組んでいます。携帯電話やワイヤレス技術などを「モバイル」と呼びますが、それらはまだネットワークシステムに基礎を置いています。ネットワークシステムがこれらの技術の基盤的な重要要素になっています。つまり、それらはインフラに依存しています。インフラフリーではありません。

インフラは目に見えませんが、これが突然崩壊するとシステムが破綻するもとになります。例えば、旧山古志村の地震では、通信塔が倒壊してモバイルシステムが停止しました。IF研究の視点で見れば、モバイルインフラネットワークの分散化、つまり、それぞれの家自体が「ケータイ」になることが、脆弱性を低減して柔軟性を高めるかもしれません。インフラを展開する手間と費用をなくすこともできます。

社会的な面では、IF研究は、未来のコミュニティを研究しています。新しい技術は、私たちの周りにあるハードウェアと同様、「ソフトウェア」も新しい形にしつつあります。モバイルコミュニケーションは、世界をグローバル・ヴィレッジとして再構成します。著名人が家族や友人に取って代わります。親類や隣人たちの生活よりもスーパーモデルたちの生活をよく知っているというのはよくあることです。仕事や収入様式の変化、人口統計学的な市場に分裂する家族の成員、メディアの特殊化、これらすべてが、私たちが同じ家の中の違う惑星に住めるようにしています。「mixi」のようなオンライン世界の人気は、リアルライフが期待に応えられていないことの現れなのです。

IF研究は、技術主導のコミュニティではなく、技術が支えるコミュニティを目指しています。IFコミュニティは、自己生産の技術に依拠しています。コミュニティの各成員は、システムが機能するために、果たすべき特定の義務を負います。コミュニティの再建につながるかもしれません。そこではもはや、家はユビキタスセキュリティシステムや在宅勤務、通信販売や個人のものになったメディアの城ではなく、オープンソースであり、人間のコミュニケーションのための道具なのです。

Q3. モバイルを含むネットワークコミュニケーションでは、集合知やオープンソース的なコラボレーションが活況を呈しています。こうした動きが今後の宇宙開発にどんな影響を及ぼすと思いますか?

最新の宇宙探査システムは、データを中央に集中させることに長けていますが、複数のチームが共同研究を行いたい場合には貧弱です。コミュニケーションネットワークが旧式のシステムをモバイルテクノロジーと取り替えたように、NASAのような主要な宇宙機関も最新のネットワークコミュニケーションとその可能性に影響を受けており、人工衛星についても同じことをする計画を立てています。

未来の宇宙探査は、火星のような目標の周りに開発されているセンサー網システムを予想しています。それは、環境計測装置を搭載した小型衛星たちがネットワーク化して有機的な観測システムを成しています。衛星はそれぞれ自分の機能を積んでいますが、もちろん、システム内にあるほかの装置の受け持つ範囲内に必要を察知すれば、自発的にそこに到達して受信範囲を提供できます。それらは、地球にいる宇宙飛行管制官やネットワークシステム上のほかの衛星からの指示を受けます。

今日、テレビ、電話、コンピュータのデータや画像は、衛星を通じて世界中に送られます。衛星はモバイル技術の重要要素です。モバイルのみならず、私たちは、宇宙技術を日常生活のあらゆる場で用いています。家庭で、病院で、ショッピングモールで、スタジアムで、美術館で、農場で、消防署で。それらはすべて、宇宙技術移転のプログラムを通じて実現されています。宇宙探査は、モバイル通信技術の助けなくしては不可能です。月着陸、宇宙ステーション、ほかの惑星へのミッション、地球の研究さえもが、データの処理、送信、記憶、分配、そしてデータ製品によって容易になっています。

個人的に私が信じているのは、宇宙探査が私たちの日常生活に新しい技術を引き合わせ続けるということです。モバイル技術と宇宙技術は、お互いに一方が示すニーズに基づいて進んできました。同じ共通の挑戦を経験することなくしては、このように発展しなかったでしょう。モバイル技術と宇宙技術は、ともに成長し、ともに発展するでしょう。

Q4. 携帯電話やPDAなどモバイルメディアの普及浸透する社会を構想しようとする作業は、これに関連する企業や知識人の間で様々に試行錯誤されてきました。あなたは、モバイルメディアが普及した近未来は、どんな社会になると考えていますか?なるべく具体的にお聞かせください。

市場に出回った最初のモバイル技術を思い出せば、たった10年ではっきりした違いが見られます。1つのメディアに異なる機能がたくさん統合され、モバイル技術はより軽量でとてもコンパクトになりました。未来の社会では、もっと統合されたコンパクトなものを求めるのだろうと思います。そこでは、モバイル技術は私たちの衣服に取り付けられるかもしれません。さらに経つと、それは私たちの身体にまで取り付けられ、誰にも止められない進化の過程を引き起こすことも考えられます。それは、人間と機械と技術の融合です。知識とスキルは私たちの脳に組み込まれ、果てしなく膨大な容量やスピードや、私たち自身が創り出した知識共有能力に結びつけられるでしょう。モバイル技術の新しい段階です。

この新しい世界で、人類は新しい段階に差し掛かるのかもしれません。私たちの知性は、ますます非生物学的になり、今日の何兆倍も強力になるのです。人間と機械の間や現実のリアリティとバーチャルリアリティの間に明確な違いはなくなると思います。私たちは、異なる複数の身体を持てるようになり、自由自在にさまざまなペルソナを持てるようになるでしょう。実際面では、人間の老いと病が覆され、汚染が止められ、世界の飢餓と貧困が解決されるでしょう。

自分たちの暮らしにモバイル技術を融合させることに対して、私たちは制限を設けるでしょう。長期的に見て、適切なところで止めなければ、電子の一群にすぎなくなった人格が、茫洋たるウェブ空間を流れ、私たちはどこで間違ったのかと問うといった状況にもなりかねません。

Q5. あなたの暮らす国・地域で、モバイルメディアはどのように活用されていますか?あなたが日頃感じている、何か特徴的だと思われることや、社会が直面している問題などがあったら教えてください。また、あなた自身がモバイルメディアをどのように活用されていますか?

私は、8年以上、東京で暮らしています。人々は技術の人質になっているように感じます。友人たちと渋谷のハチ公前で会う約束をするとき感じるのは、この空間は人と人が会って交わるスポットとしてデザインされているのにもかかわらず、各人がケータイを使って自分のしたいことを好きにやる空間になったのだということです。しかしながら、リアルな情報は、私たちの目の前にあります。つまり、空間が情報なのです。観察したり、誰かに会ったりする経験、そして互いに学び合う経験は、貴重な情報源です。技術を使っては完全に得られるものではありません。

駅のベンチに人が横たわっていても、立ち止まって大丈夫かと声をかける人は誰もいない。友だちとメールをやり取りする方を優先して続けるのです。私たちは、バーチャルな世界に移動しつつあります。そこでは、私たちの「温かい人間の心」が社会ネットワークのある種のウィルスになっていて、取り除かれなければならない。これは社会にとって危険なゲームです。

もうひとつは、個人情報です。友だちに電話をかけるとき、大抵の人がたまに「今どこ?」と尋ねます。私にはとても興味深いことです。なぜなら、初め電話はある特定の場所に置くよう設計されたからです。例えば、リビングのテーブルの上です。そこで、全員が電話をかけることができました。電話をするときは、相手は電話に出ているわけですから、相手がどこにいるかは知っていました。モバイル技術が進歩した今、私たちは、個人情報は大量に入手できるものと思い込んでいますが、電話の相手がどこにいるのかさえわからないのです。そういうわけで、携帯電話を落としたり失くしたりすると、私たちは、自分の重要な情報を全部失い、それらを回収しようと奮闘します。知ってのとおり、モビリティは、便利でないこともあります。私たちは、情報技術における重要な点を見落としているのかもしれません。また、モバイル技術の将来の展開について、再考する必要があるのかもしれません。

インタビュー:海外オピニオンリーダー

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