裏　厨　房

その1６

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【】

【焼鳥】

今日は、オヤジはもとより、老若男女だれもが大好きな焼鳥のお話を。

まずは問題。

焼鳥はなぜ串に刺さっているのでしょう。

答え

串に刺さっていなかったら、焼鳥ではないからです――。

禅問答のようなことを言ってみましたが、これはある意味真実です。

だって、串に刺していなかったら、それは「鳥肉の炭火焼」。

炭で焼いていなかったら、ただの「鳥肉焼」。

でも、ちょっと気の利いた飲食店ならかっこつけて、「鶏肉の炙り焼き」とでもするのかな。「炙り」の定義なんてしっかり決まっている訳ではないので、なんでも「炙り」とすることができますし。

話は変わりますが、オイラは焼鳥を刺す作業をするたびに、「抜いて食べられるために刺すなんて、なんて無意味な行動だ」と本気で考えていました。

だって、ねえ。

一生懸命刺したって、歯で「ガッ！」と挟まれて、「ググッ！」と引っこ抜かれる運命にあるんです。じゃあ、始めから刺していなくても良いのでは、、、な～んて思ってしまっていたわけで。

だいたい引っこ抜かれるために刺すなんて、正に無意味の権化、無我の境地とはこのことだ。色即是空、空即是色、全てが夢まぼろしだからこそ、無意味に意味を見出して串に刺すことができるのかも知れません。

まあ、そんなことを言ったら、鯛焼きは何で鯛の形やねん、人形焼やってそうやんけ、ウナギの蒲焼を刻んでひつまぶしたあ、気が利いているけど、思わずひまつぶしと読んでしまった、まあ恥ずかしいってなものですけどね、ハイ。

とは言っても、お客さんに求められるものなら、（ある意味）なんでも販売しなければ、生き残れないのが群雄割拠の飲食店。求められるものなら、焼鳥だって焼けぼっくいだって売りますってなものですよ。

兎も角、ひと昔前の焼鳥では、店のオヤジがせっせと串に刺すのがあたりまえのことでした。しかし、居酒屋店舗の大型化とチェーン化が進んだ今では、一本一本お店で刺していたらとても追い付きません。結果、串に刺している商品を仕入れるようになっています。

刺しているのはタイや中国など、人件費の安い国。もちろん、あちらの人にとっては高級品なので、滅多に食べられるものではありません。つまり、オイラたちの食べている焼鳥は、タレと一緒に羨望と嫉妬に塗れているというわけです。

さて、この焼鳥、お店で刺しているものと、輸入したものでは、ぜんぜん味が違います。

もちろん、肉質の違いも挙げられますが、決定的に異なるのは、「冷凍をしたかしないか」だったりします。

鶏肉は味が繊細なので、一度冷凍すると、ものすごく味が落ちてしまうんですね。逆を言えば、スーパーで「生」と記載されている鶏肉を購入して、自分で串に刺してやけば、ブロイラーでも、少なくとも輸入物の焼鳥を出しているチェーン店よりも美味しいものが食べられます。

そして、近年、鳥インフルエンザの蔓延により、更に味に差がでるようになりました。

つい１０年ほど前までは、生の焼鳥（矛盾した言葉だけど許して）を輸入し、お店で解凍してから焼いていたのですが、先の事件により生の焼鳥の輸入は全面禁止となり、現在ではスチームで「火入れ」してから冷凍された焼鳥が輸入されるようになっています。

何しろ火が入っているので、解凍して軽く焼き目を付ければ販売ＯＫ（極論で言えば、焼かなくてもそのまま食べられる）ですが、それはもうビックリするほど、旨みなんてこれっぽっちもありません。

まあ、興味があるなら、串に刺した焼鳥を蒸してから焼いてみれば判るかと。脂が落ちてスカスカになっているので、病人食を食べている気分になってしまいます。

言い換えれば、ダイエッターの方には向いているのかもしれませんが、既に腹の据わったメタボのオイラなんぞは、なんだか悲しい気分になってしまったりするわけで。

いや、グルメぶっているわけじゃないよ。

だってさあ。自分で刺せば１串２０円ほどで、そこそこの焼鳥が出来るのに、なんでこんな金を払わないかんねん、ああ、自分で作った方が良かったなあって気分になってしまうわけなんです。

そうか。

やっぱり、焼鳥はせっせと刺しているオヤジの店が一番だ――。

まあね。

慥かに、それなりの味は期待できることでしょう。

但し、ここでマメ知識。

場末の個人店の場合、かなりの確率で串を使い回しています。

ちなみに、ご存知の通り、串はコーティングなんぞされていないので、水分を吸ってしまうのは言うまでもありません。そして、その水分には、当然のことながら、どっかのオヤジの唾液なんぞも混ざっている訳でして……。

串を使い回すことなどないけど、羨望と嫉妬にまみれたチェーン店の不味い焼鳥を食べるか。

オヤジの唾液にまみれた串を使い回しているけど、美味くて地球に優しい個人店に行くか

ま、日本人は神経質になり過ぎよ。気にする必要はないんじゃない？

（って、今更言うな！）

アメブロに、焼鳥のsubstanceをアップしました。

そちらもご覧ください。

http://ameblo.jp/ippatiippati/entry-10114358403.html

居酒屋のメニューと経営　焼き鳥＆鶏料理 [本]

こんな本を読むなら、オイラをアドバイザーにしておくれ！

串　（平串）

実は、串って意外と高いんです。

（この平串は、１本６円）

2008.07.09

【】

【生食】

＜以下、ネット記事より＞

埼玉の焼き肉店など８割「生食用」使わず
7月7日16時33分配信産経新聞

　レバ刺しやユッケなど肉の生食は根強い人気があるが、生食肉の料理を提供している埼玉県内の焼き肉店や居酒屋計１３７店舗のうち８３％にあたる１１４店舗が、「生食用」の表示がない食肉を材料に使っていたことが同県の６月の調査で分かった。

　「生食用」の肉は鮮度を基準にしていると思われがちだが、厚労省の通知では（１）食肉処理場でほかの内臓と処理を分ける（２）作業員の手指を消毒する－など特別に管理した食肉を「生食用」と表示できる。県は「生肉を提供する店は増えているが、鮮魚を扱う感覚で、当日、処理された新鮮な肉なら大丈夫と思ったようだ」とみている。

　東京都健康安全研究センターの甲斐明美参事は「病原性大腸菌Ｏ１５７やＢＳＥ（牛海綿状脳症）が社会問題化した時と比べ、生肉を食べるのに抵抗感が薄れているのではないか。いくら新鮮でも『生食用』の表示がない肉は感染リスクがあるという認識を店側も持つべきだ」と警告する。

（抜粋）

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080707-00000091-san-soci

今日はこのネタにしてみました。

さて。

なんでこんなことが起きるのか。

記事に

『　「生食用」の肉は鮮度を基準にしていると思われがちだが、厚労省の通知では（１）食肉処理場でほかの内臓と処理を分ける（２）作業員の手指を消毒する－など特別に管理した食肉を「生食用」と表示できる。』

と記載されています。

実は、ここが問題なんですね。

「食肉処理場でほかの内臓と処理を分ける」と書いてある通り、牛肉は食肉処理場で解体されて精肉店に卸されています。ならば、処理場で「他の内臓と処理を分けて」処理すれば、生肉として食べることに問題はでないんじゃないのかい――？　

実は、ここには処理場と精肉店の力関係が絡んでヤヤコシいことになっています。牛肉の生食は鮮度が命。処理場でモタモタ処理されると生食できなくなってしまうので、精肉店としては、一刻も早く解体して引き渡して欲しいのですが、処理場の人にとっては、そんなことは知ったこっちゃありません。だから、ノンビリ解体して、生食できなくなってしまうこともあるわけで。

そこで、精肉店の人は、「手伝うから、○○の部位をくれ！」と申し出て、無償で解体を手伝うわけですな。代わりに働いて貰えるんですから、処理場の人は、そりゃあ、もう大歓迎。断る理由は無いわけで。更に、ウヒヒなことがあれば、そりゃ、もう特定な業者に任せるってものですよ。

兎も角、そうして手に入れた新鮮な肉を精肉店は持ち帰って販売する訳ですが、部外者が手伝ってしまっていたりするので、厳密な管理をされているとはとても言えた状態ではなく、結果生肉の表示ができなくなってしまいます。

精肉店は、なぜそこまでして生食用の肉――厳密な意味では生食用ではないけど――を手に入れたいのか。それは、単純に需要と供給のバランスの問題だったりします。生食用の肉は慢性的に品不足なので、欲しがる人がたくさんいるので高く売れるってこと。そして、希少部位を持っている肉屋は、他の肉も一緒に取引して貰えます。生食用の肉を手に入れるためには、そんな手間や多少の出費（大人なんだから判るね？　）は、厭わないってことなんです。

でも、いくら鮮度の良い肉を持ち帰っても、生食用ではない肉を生食用として販売したら問題になるのでは？

はい。

保健所にバレたら、精肉店は営業停止になります。

そこで、以下のような腹芸が繰り広げられる訳でして。

飲食店店主（以下、飲食店）「この肉、生で食べられる？」

精肉店「保健所の指導で、食べていいと言ってはいけないことになっている」

飲食店「じゃあ、アンタ（店主）なら食べる？」

精肉店「俺なら食べるよ」

飲食店「じゃあ、それをくれ」

精肉店「くれぐれも、自己責任で」

ってなわけ。

まあ、懇意の精肉店の場合、こんなマドロッコシイことをしなくても、黙って持ってきてくれるし、飲食店の店主も聞かないのがマナー。こうして、生食用ではない肉が、どんどん出回ってしまったりしている訳なんです。

つまり、モラルのない精肉店が、どんどんと粗悪（？）な生肉を販売し、そして、まっとうに商売している精肉店は生食用の肉が手に入らないので販売することができないために、結果、他の注文もが減ってしまって、だんだんと力を落としてしまっている状況。そのうち、ちゃんとした肉は食べられなくなってしまうかもしれません。

ならば保健所が介入して、まっとうな精肉店から、ちゃんとした生食用の肉を販売させれば良さそうなものですが、そうはなかなかそうもいきません。

保健所は管轄地域で食中毒が発生すると責任問題に発展します。だからこそ、できれば許可を出したくない訳なんですな。判りやすく交通事故に例えると、「無事故」を目指して指導教育をするよりも、「車の免許を誰にも取らせなければ無事故である」って考えだったりするわけなんですね、ハイ。

まあ、なんと言いましょうか。万が一にも事故を起おさないように、「ダメだダメだ」と規制してしまうと、むしろ粗悪なものが出回ってしまったりするんです。だったら、ちゃんと指導をして、規制を緩めることも必要だと思うんだよなあ。っていうより、今の状況は飲食業に従事しているオイラから見ても、ちょっとヘンだと思うんだよねえ。まあ、いろいろな利権が絡んでいるので、難しいとは思うし、保健所も弱腰だから改善されることもないだろうけどね。

この記事の　ｓａｂｓｔａｎｃｅ　をアップしました。

そちらも読んでみてください。

http://ameblo.jp/ippatiippati/entry-10114013041.html

狂牛病とプリオン　ＢＳＥ感染の恐怖／フィリップ・ヤム／著