先日、音を熱に変えて冷却する不思議なシステムを取材した。その時、昔、科学の本で読んだ「マックスウェルの悪魔」という魔物を思い出した▼この小さな魔物は、廃棄するガスから熱い粒子と冷たい粒子をより分け、永久機関がいつまでも動き続けるための循環熱エネルギーを創(つく)り出していた▼魔物を思い出したのは、冷却システムにも熱のより分け現象があったからだ。音を伝える気体は、細い管の中では壁方向に熱の放出・吸収を繰り返す。それに管と平行の音波の動きが加わって、熱がより分けられて運ばれる。その様は、魔物たちが並んで熱入りバケツをリレーで運んでいるイメージだ。【玉置勝巳】
毎日新聞 2009年11月27日 地方版