杉戸町在住の作家、北村薫さんに7年前、インタビューをしたことがある。当時、パソコンの台頭でワープロは衰退しつつあった。それでも根強い支持層があることをリポートした記事に登場してもらったのだ。北村さんは知る人ぞ知る「ワープロ派」だった。
パソコンについては「立ち上がりは遅いし、分かりにくい」と突き放し、「ワープロがなければ作家になっていなかった」とまで語っていた。今年、直木賞を受けてフラッシュを浴びる北村さんの姿を見るたび「その後」が気になっていたが、期せずしてご本人から聞けた。15日にあった名誉町民授与式後の公開懇談。「執筆はパソコン、手書きどちら?」と問われた北村さんは「パソコンは性に合わない。(某社の)ワープロで書いています」と明言したのだ。
時代に流されない。作家の信念を見る思いがした。【平野幸治】
毎日新聞 2009年11月27日 地方版