政府の行政刷新会議による「事業仕分け」で、県は県内への影響が大きいとみられる18事業についての調査結果をまとめた。仕分けで5事業が「廃止」とされるなど、国費が大幅に削減される可能性があり、17事業で具体的な影響に言及し、1事業で「影響不明」と判断した。県は仕分け終了後、他の事業への影響も調べた上で、改めて国に再考を働きかける考えだ。
調査は、17日までに行われた仕分け結果について、結論通りになった場合の影響を想定して行った。
仕分けで「半額削減」と判断された医師確保対策費と周産期医療対策費については、「(医療機関の)運営に対する影響が強く懸念される」とした。
県内で医療問題は喫緊の課題で、今年度は4億8400万円(うち国費1億6300万円)の予算を組んでいる。医師確保対策費として、職場環境の厳しい救急医や産科医の離職防止のための手当支給。周産期対策費として、岩手医大内にある総合周産期母子医療センターの運営費補助に充てている。運営に影響が出た場合、「医師数や救急医療などで都市との格差が拡大する可能性が高い」と訴える。
一方で、「抜本的見直しを行う」とされた地方交付税交付金(今年度約2110億円)は、具体的な見直し方法が示されていないため、影響は「不明」とした。ただ、県予算調整課の鈴木俊昭主任主査は「年内に方向性が固まらないと県の予算編成に影響が出てくる」と懸念する。
県総合政策部の中村一郎首席政策監は「全国知事会を通して、地方に影響が大きいと思われる事業への配慮を訴えていきたい」と話した。【岸本桂司】
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((1)今年度の県事業費(2)うち国費(3)想定される影響)
【廃止】
・健康増進対策費(厚労省)
(1)日本食生活協会への補助事業のため、県事業への影響なし(3)食生活改善推進員の活動の低下につながらないか懸念される
・若年者地域連携事業(同)
(1)約3500万円(2)全額(3)若年者に対する就業支援体制が大幅に弱体化する
・知的クラスター創成事業、都市エリア産学官連携促進事業、産学官民連携による地域イノベーションクラスター創成事業(文科省)
(1)約1億8000万円(2)全額(3)今後のプロジェクト展開に大きな影響がある
・農道整備事業(農水省)
(1)約17億円(2)約9億3500万円(3)市町村の財政負担がかさみ、進ちょくに急ブレーキ
・里山エリア再生交付金(同)
(1)約16億6600万円(2)約9億4000万円(3)林道整備ができず、里山周辺での利用間伐や造林の取り組みが減速する
【予算計上見送り】
・安全・安心i-city推進事業(総務省)
(1)新規事業のため、今年度の県予算なし(3)ブロードバンド未整備地域の整備が困難になる
【半額削減】
・地上デジタル放送への移行のための環境整備・支援(総務省)
(1)放送事業者、市町村への補助事業のため、県への影響なし(3)中継局整備が遅れ、11年の地デジ完全移行が困難になる
・医師確保対策費、周産期医療対策費(厚労省)
(1)約4億8400万円(2)約1億6300万円(3)高度救命救急センターなどの運営に対する影響が強く懸念される
・技能向上対策費補助金(同)
(1)約4700万円(2)約2400万円(3)技能検定の実施が削減される可能性がある
【20%削減】
・かんがい排水事業(農水省)
(1)約46億9300万円(2)約33億3900万円(3)農業水利施設の更新補修などの遅れが懸念される
【10~20%削減】
・水道施設整備事業(厚労省)
(1)約14億8500万円(2)全額(3)県内の水道普及率は全国でも低位で、国庫補助は必要
【10%削減】
・緊急消防援助隊設備整備費補助金(総務省)
(1)約2200万円(2)全額(3)少なからず影響がある
・港湾整備事業(国交省)
(1)約36億1000万円(2)約23億3900万円(3)久慈港湾口防波堤等の整備の遅れが懸念される
【予算削減・見直し】
・携帯電話等エリア整備事業(総務省)
(1)約21億5400万円(2)約17億8600万円(3)携帯電話のエリア拡大が遅れる
・地方交付税交付金(総務省)
(1)約2110億9600万円(2)全額(3)影響は不明
・延長保育事業(厚労省)
(1)市町村への直接交付のため、県予算なし(3)地方自治体に新たな負担が生じないよう制度設計を行う必要あり
・道路整備事業(直轄・補助事業含む、国交省)
(1)約516億円(2)約355億円(3)継続事業の再評価に時間を要した場合、事業の遅れが懸念される
毎日新聞 2009年11月27日 地方版