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裁判員法廷@ひょうご

尼崎の強盗傷害 被告に懲役9年判決

2009年11月19日

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判決後、記者会見で感想などを話す裁判員経験者の児嶋精一さん=神戸市中央区

 県内2例目の裁判員裁判となった強盗傷害事件の判決が18日、神戸地裁であった。東尾龍一裁判長は無職和田強被告(60)に対し、「計画的な犯行だが、最初から刺すことまでは考えていなかった」と述べ、懲役9年(求刑懲役12年)を言い渡した。東尾裁判長は裁判員と話し合った言葉として、被告に「刑務所では健康に気をつけ、出所後は善良な市民として生きてほしい、というのが私たちの願いです」と語りかけた。(根岸拓朗、山崎聡、小野大輔)

 午前9時40分に始まったこの日の公判では、まず、被告に包丁で刺されて重傷を負ったとされた尼崎市内のスーパーの男性店長(41)が意見陳述。「非常に怖い目に遭い、けがで指を曲げることもできなくなりました。重罰を望みます」と述べた。

 この後、検察官が「包丁や催涙スプレーを準備した計画的犯行で、被告が心の底から反省しているとは思えない」と主張し、懲役12年を求刑した。これに対し、弁護人は最終弁論で「包丁は脅すためのもので、初めから刺す意図はなかった。前妻らへの借金を抱え、持病で仕事ができなかったことが動機だ」などと述べ、寛大な判決を求めた。

 公判は午前中で結審し、裁判官3人と裁判員6人は評議へ。午後4時40分に始まった判決公判で、東尾裁判長は被告が6月29日夜に同スーパーに金を奪う目的で侵入し、抵抗した店長の左胸などを刺して重傷を負わせたとする起訴内容を認定。懲役9年とする主文と量刑理由を述べた。

 閉廷後、店長は朝日新聞などの取材に対して「裁判員は被害者側の気持ちに立って熱心に耳を傾けてくれたが、求刑通りにならなかったのは残念です」と語った。

 裁判員を務めた児嶋精一さん(67)ら経験者6人と補充裁判員の経験者1人が記者会見。児嶋さんは「組織である検察と、個人である弁護人には説得力に差がある。差を埋める努力が必要だ」「3人の裁判官が裁判員6人の力を引き出してくれた」と公判や評議を振り返った。

 また、裁判員経験者の女性は「判決には納得していますが、心の準備をする時間が欲しかった」。40代の男性は「自分の判断が良いのかという思いが常にあったが、判決後の被告の顔を見て救われた気になった」と語った。

     ◇

 県内3例目の裁判員裁判は今月30日〜12月3日、神戸地裁(佐野哲生裁判長)で開かれる。5月に60代の無職の女が猪名川町の自宅で介護していた義姉の頭を陶器製の置物で殴って殺害したとして、殺人罪で起訴された事件。

     ◇

 広上克洋・神戸地検公判部長の話 検察官の主張・立証に裁判員の理解が得られたと考えている。今後ともわかりやすく、迅速、的確な主張・立証に努めたい。

 弁護人の酒井浩弁護士と高木甫(はじめ)弁護士の話 被告の持病や借金といった背景を裁判員に考慮してもらった。妥当な判決。弁護人として控訴の予定はない。

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