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インテリジェンスEYE
※この連載は隔週の更新です。

2009/11/24 

【 「スパコン予算廃止」をほくそ笑む周辺国 】

ジャーナリスト 藤村幹雄  

  政府の行政刷新会議による「事業仕分け」で、科学技術経費が続々縮小されていることを、米中露や韓国など周辺諸国は「歓迎」している。日本の誇る科学技術力が今後低下し、競争力が弱まる可能性が強いからだ。

 ある韓国の外交官は「日本が何でこのような自殺行為をするのかよく分からない」とコメントした。ロシアの外交官も「世界の流れと逆行している」と話した。ロシアでは、プーチン政権下で科学技術予算は最も高い伸びを示し、昨年来の金融危機後も削られていないという。

 事業仕分けでは、次世代スーパーコンピューターやGXロケットエンジン開発などの科学技術振興予算がほぼ廃止に等しい判断を下された。民主党・蓮舫議員は、「(スパコンは)なぜ世界1でなければならないのか、なぜ2位ではいけないのか」と切り込み、「予算計上見送りに近い縮減」と判定された。

 スパコンは先端工業製品の設計や評価に不可欠で、金融工学や天文学、気候温暖化対策にも使用される高速計算機。わずか276億円のスパコン予算を切ることで、日本の科学技術水準が遅れ、国力・産業力を損なうことになりかねない。各国の技術陣が最もしのぎを削る研究開発分野の一つだ。

 GXロケットも、世界の新型宇宙ロケットエンジンの中核になると期待されている。いずれも「健康づくりを進めるボランティア活動」などと同一視することはできない。

 さすがに民主党幹部からは、「科学技術と生活保護の話は同じ土俵で議論できない」(枝野幸男元政調会長)などとスパコン予算縮減見直し論が出ているが、民主党政権には国力向上、経済成長の国家戦略が希薄であることが鮮明になった。

 米国は2007年、国際競争力の強化を目指す米国競争力法を超党派で制定。ナノテクノロジーやスパコン、代替エネルギーなどの基礎研究プログラム予算を倍増することを決めた。研究・開発費の税額控除の恒久化も議会で審議されている。

 事業仕分けでは、地域科学技術振興・産学官連携事業も「廃止」とされたほか、次世代エネルギー源となる国際熱核融合実験炉(ITER)の関連予算も見直し対象とされている。

 07年の米国競争力法は、理数系教育拡充のため、小中学生の算数・数学の成績向上に向けた教材充実やテスト実施を盛り込んでいるが、民主党政権は、支持団体の日本教職員組合が主張する学力テスト反対に呼応し、36億円の予算廃止も計画している。世界の常識は民主党の非常識なのだ。

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