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社保庁300人処遇大揺れ、「二重処分」反発も

11月25日14時59分配信 読売新聞

 解体される社会保険庁に代わって来年1月に発足する「日本年金機構」。同庁からは約1万人の職員の移行が決まっているが、懲戒処分歴があることを理由に採用対象から外れている職員約300人の処遇を巡って政府内が揺れている。このまま分限免職になれば訴訟に発展する可能性もあり、目下の焦点は、厚生労働省の臨時職員に採用するといった「救済策」の是非。長妻厚労相はどう決断するのか。

 「『頑張れば挽回(ばんかい)できる』という上司の言葉を信じてきたのに」。首都圏の社会保険事務所に勤める男性職員(40)は2004年5月、国会議員の年金納付記録を職場の端末でのぞき見し、懲戒処分の中では最も軽い戒告になった。興味本位からの行為だったが、「職まで奪われるとは」。住宅ローンと、離婚した元妻と長女に送る生活費の負担が肩にのしかかる。

 北関東の社保事務所の男性職員(45)が記録をのぞき見したのは、地元の国会議員周辺者から「議員の記録を確認してほしい」と頼まれたため。結果は伝えなかったが、やはり戒告に。「たった一度の処分で、機構に応募すらできないというのは納得できない」

 厚労省によると、分限免職の可能性がある約300人のうち、のぞき見を理由にした処分者が約7割を占める。一方で、年金とは無関係の交通事故などを理由に処分された職員もいる。

 自公政権は昨年7月、懲戒処分歴のある職員は機構に採用しないことを決定。長妻厚労相も踏襲する考えを表明した。しかし、民主党の支持団体である連合の要請もあり、政府内では、厚労省の非常勤職員として採用する救済策が浮上。24日には平野官房長官が厚労省を訪れて救済を求めたが、長妻厚労相は、対象を一部に限る意向を示し、決着はついていない。

 ある社保庁幹部は「年金問題を追及してきた大臣としては、処分歴のある職員の救済に抵抗があるのだろう」と語り、厚労省幹部は「職員には気の毒だが、社保庁一新という政治判断がある以上、仕方がない」と複雑な表情で話す。

 ただ、日本弁護士連合会は昨年12月、懲戒処分歴を理由に一律不採用・分限免職とするのは「二重の不利益処分で、違法の疑いが濃厚」との意見を表明した。年金問題に詳しい野村修也・中央大法科大学院教授(商法)は「人心一新は国民が望んでおり、機構に採用しないという判断はやむを得ない。政府は分限免職を回避するため、機構以外の就職口を探す努力を続けるべきだ」と指摘している。

 ◆分限免職=公務員の解雇の形態。懲戒処分による免職と違い、組織改編時や勤務実績の不良などの際に適用される。

最終更新:11月25日15時18分

読売新聞

 

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