社説
2009年11月23日

ネットカフェ規制/本人確認の義務化を急げ

 インターネットカフェなどの防犯対策を検討する警視庁の有識者懇談会(座長・前田雅英首都大学東京法科大学院教授)が、利用客の本人確認や利用記録の作成、保存などを義務付ける法的規制が必要とする報告書をまとめた。

確認なしで犯罪が2倍に

 現在、ネットカフェは全国で約3000軒あるといわれる。その多くは個室を備えている。密室で人目を気にせず、しかも匿名でネット利用できることで、若者を中心に人気を集めている。料金が手ごろなことから、宿泊場所代わりとなることも多い。

 こうした店舗の特性から、ネット詐欺や不正アクセスなどの犯罪、そして少年非行の温床にもなっていることは、以前から指摘されていた。それは東京をはじめとした都会に限ったことではない。

 外出先で、手軽に利用できるネットカフェを安全な場所にすることは、ネット社会の健全な発展に欠かせないことだ。政府は、法規制の実現に早急に取り組むべきである。

 今年1月から8月の東京都内にある娯楽施設1店舗当たりの犯罪発生件数は、ゲームセンター0・91件、カラオケボックス0・36件だった。これに対し、ネットカフェは1・21件を記録した。中でも、入店時に運転免許証などで本人確認をしていない店の犯罪件数は、実施している店の2・1倍に達した。

 警察庁によると、今年上半期だけで、サイバー犯罪で検挙された件数は3870件で、昨年同期よりも77%も増加している。不正アクセスなどが本人確認を行っていないネットカフェで実行された場合、容疑者特定に至らないケースが目立つ。匿名性、閉鎖性そして利用記録の欠如が捜査の壁になるとともに、それが犯罪を誘発しているのは明らかだ。

 東京都内のネットカフェなどは8月末現在で561店ある。しかし、本人確認をしているのは4割弱だった。利用記録を保存している店舗に至っては15・3%にすぎない。事業者団体に加盟する店舗では、会員制を導入しているところが多いが、非加盟店舗を中心に「会員登録なし」を売り文句にして、客を呼び込んでいるのが実情だ。

 こうした状況を見れば、本人確認や記録保存の徹底を業界の自主的な取り組みに期待することは難しく、法律で義務付ける以外にはないだろう。もちろん、違反者への罰則も必要だ。

 また現在、東京都をはじめ多くの自治体で、ネットカフェを利用する未成年者には、ポルノや出会い系などの違法・有害サイトを遮断するフィルタリング付きパソコンの提供を義務付けている。しかし、ほとんどの条例が努力義務にとどめているため、これを実行している店舗は少ないという問題もある。半数以上の店舗が本人確認さえ実施していないのだから、未成年者対策が不十分になるのは当然だろう。

フィルタリングの強化も

 法律によるネットカフェ規制強化では、未成年者へのフィルタリング付きパソコンの提供を罰則付きで義務付けることも忘れてはならない。


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